NTTドコモがスタートアップ支援の強化を進めている。2月にはNTTグループのベンチャーキャピタル事業会社であるNTTインベストメント・パートナーズ(NIP)の全株式をNTTから譲り受け、新たにドコモ・イノベーションベンチャーズを設立すると発表。100億円規模のベンチャーキャピタルファンド「ドコモ・イノベーション投資事業組合」を設立した。
あわせてインキュベーションプログラム「ドコモ・イノベーションビレッジ」も参加者を募集している。
通信事業者としてはKDDIもインキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo」を通じてスタートアップの支援を続けている。今回ドコモがNTTグループの投資事業をとりまとめ、どのように投資事業を展開するに至ったのか。ドコモ・イノベーションベンチャーズ 取締役副社長でNTTドコモ 研究開発推進部 R&D戦略投資担当部長の秋元信行氏と、NTTドコモ フロンティアサービス部 アライアンス推進担当主査の久津見武氏に聞いた。
秋元氏:まず1つはスマートフォンの利用が広がり、よりスピード感が求められるようになってきたことです。我々は「ずうたいのでかい会社」なので、スタートアップのような発想やスピードでモノを作るのが難しいのです。
また、我々は「総合サービス企業を目指す」と公言していますが、自分たちだけではやれることに限界があります。外部の力がないといけないので、スタートアップと何ができるかを模索しています。
さらに、これは大上段に構えた言い方になってしまいますが、日本のスタートアップを取り巻く環境、エコシステムはシリコンバレーと比較して、成熟しているとは言い難い状況です。だからといって、エンジェルやマイクロベンチャーキャピタルもそれほど多くなく、同じエコシステムを持ち込むことは難しいのです。
とは言え、日本にもエコシステムがないと、企業は育っていきません。インキュベーションやそのあとの投資をすることで、エコシステムを少しでも大きくする。エコシステムが大きくなれば今まで起業に挑戦しなかった人も挑戦するようになるでしょう。もちろん慈善事業ではないので、そういったことが回り回ってドコモにも価値になることを期待しています。
秋元氏:対外的には、窓口が(NIPとドコモの)2つだと訳が分からなくなる可能性もあると考え、NTTグループに関する協業もアイデア出しもドコモがワンストップで引き受け、ベストとなるところにつなげるということになりました。ドコモ・ドットコムに関しても投資機能については新会社に統合する予定です。
また、イノベーションビレッジでのインキュベーションからファンドまで、“一気通貫”のプログラムを提供します。われわれだからできる、テレコムやモバイルのノウハウも提供できると思いますし、ドコモの持つAPIを提供するということもやっていきます。必要であれば技術者が手取り足取りレクチャーできると思います。
秋元氏:投資についてはスタートアップだけでなく、その先のステージを視野に入れています。1つはっきりしているのは、(株のシェアで)マジョリティを取りに行くような投資を考えている訳ではないということです。子会社育成を目指しているわけではありませんし、成長機会を奪う可能性に成りかねないことをするつもりはありません。
投資対象については、シードからレイターまで。ファイナンシャルなステージでこだわることはありません。ファンドは管理手数料などを引いても70~80億円。単純に10年で割ると、1社あたり1億円でも80社ほどです。個人的には1年間で15社くらいに出資していきたいと思っています。
事業領域としてはヘルスケアやMtoM、BtoB、クラウド、データマイニングとかなり広く考えています。ただし、「総合サービス企業」とうたっている以上、我々が思いつく範囲だけでは困ると考えています。
新しいファンドでは、日本の会社を投資対象に考えていますが、新会社に移管して運用するNIPのファンドは、従来通りに(海外企業を含めて)投資をやっていきます。
1番はストラテジックリターンです。今日の1円、明日の2円を稼ぐようなサービスから、将来的にはドコモの新規事業になるようなものまで、戦略的なリターンがあれば、ファイナンシャルな面も当然ついてくると思います。CVCでもファイナンシャルリターンだけを求めるところはありますが、我々は違います。また、ドコモがイグジット先になり得るということも1つの魅力に思って欲しいです。
久津見氏:件数は公開していませんが、多様です。ステージとしてもアイデアベースの起業家から、すでにVCから投資を受けているスタートアップもいます。
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