KDDIと聞くと通信、モバイルといった事業がまず思い浮かぶが、実はスタートアップの支援も積極的に行っている。その取り組みの中心となるのが、2011年8月より開始したインキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo(∞ラボ)」だ。
∞ラボでは、選抜したスタートアップ向けにオフィスやネットワーク環境を提供し、プログラム期間内でのサービス提供をサポートする。
KDDIという大企業がいかにしてインキュベーションプログラムを提供するに至ったのか?またその強みや課題はどういったものなのか。KDDI ∞ Labo ラボ長の塚田俊文氏に聞いた。
KDDIは現在、マルチデバイス、マルチネットワーク、マルチユースという「3M戦略」を進めていますが、∞ラボでもそのキーワードのもと、さまざまなシーンに対応したクラウドベースのサービスを募集しました。前回が写真系のサービスが多かったのに対して、今回は全体的にFacebookをベースに何かを共有しようというサービスが多くなりました。インキュベーターが増えてきたこともあって、応募件数は減るのかな、とも思ったのですが、100社ほどの応募で逆に増えてました。
新規性や市場性がない。もしくは規定に合ってない会社は当然落ちます。それとやはり“人”ですね。やる気とか元気とか。KDDIとしてのシナジーは想像しますが、どちらかというと私たちに欠けてるものを求めていたりします。ただ、今回は最終選考にも20社位まで残ってくるほど粒ぞろいでした。
たまたまの結果で、特に他意はありません。ただ、「良いものは良い」という意味で、結果的にそうなってるともいえるかもしれませんね。私たちはインキュベーターやベンチャーキャピタルの方々と競争しているわけではありません。この業界が盛り上がることを目的に活動してますから、投資目的というより、サービス指向をより推進、発展させる目的が強いので、結果的にそうなっているのかもしれません。
もともと「86年生まれの会」という若手起業家たちとの意見交換会を社内で企画していたんです。大学を出たばかりの元気のある若者が中心のコミュニティが活況で、さらに周囲を見回してみると海外でY Combinatorのようなインキュベーション関連事業ができつつある。それならば、自分達もやってみようと。田中社長(KDDI代表取締役社長 田中孝司氏)がスタンフォードに留学して、米国の機運に触れていたというのも大きいかもしれません。
我々が提供するのは3カ月間のプログラムです。まず3カ月間の工程表を作成してもらって、毎週水曜日に前の週にやっていたことを報告し、翌週何をやるかプレゼンしてもらう。それ以外に、各チームを担当しているメンター(メンターはKDDIの若手社員が担当する)とミーティングを最低週に1回やるのが基本的な内容です。中間報告会があって、最後に最優秀賞を決めたりもしてます。
ファシリティに関するサポートとしては、オフィスとWi-Fi環境を無料で提供しています。加えて端末の貸与や希望に応じて6カ月間のクラウド提供ですね。KDDIの社員に対してのモニタリングテストやアンケート協力などができるのも私たちならではの特長でしょう。またグリーの青柳さん(取締役 執行役員CFO 国際事業本部長の青柳直樹氏)、頓智ドットの井口さん(CMOの井口尊仁氏)、コロプラの千葉さん(取締役副社長の千葉功太郎氏)などに外部アドバイザーとして参画して頂いたりもしてますね。
「シードに(資金を)入れる」という考え方はなかったんです。もちろん私個人の判断で儲かりそうなビジネスだな、と思うことはあります。ですが、KDDIという組織で投資判断するとなると、時間がとにかくかかります。たとえば∞ラボの場合、募集を締め切って選考し、そこから1カ月弱でスタートアップが参加してくる。それまでの短期間で出資を決めることは、KDDIではまず不可能です。
だから出資のスキームは無理だと思ってたんです。それに∞ラボの主な目的は儲け、つまり投資してキャピタルゲインを追いかけるものではありません。それよりもスピード感を求めたのが実情です。
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