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「日本は一番サービスと親和性の高い国」--NY発のソーシャルコマース「Fancy」

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 「Fancy」の本格的な日本上陸について耳にしたのは、つい最近のことだ。スタイリッシュな写真が集まるキュレーションメディアであり、またサイトに掲載された商品の95%が購入できるECサイトでもある。

 Fancyは2010年12月、米国ニューヨークでローンチした。サービスは順調に成長し、ユーザー数は300万人に到達。そのユーザーインターフェースからもPinterestとよく比較されるFancyだが、Fancy日本代表の矢田公作氏は「我々が目指すのはソーシャルモバイルコマースだ」と語る。これまでニューヨークにしか拠点を持たなかったFancyが、なぜ次の地に日本を選んだのか。


Fancy日本代表の矢田公作氏

日本のボスは元プロバスケットボール選手

 矢田氏から手渡されたFancyの名刺には、「THE BOSS OF JAPAN」とあった。爽やかな笑顔と低い声、その風貌はスポーツ選手を思わせる。それもそのはず、彼は元プロバスケットボール選手だ。スタートアップ業界に突如姿を現した彼は、一体どのようにして今回のポジションに就いたのか。

  • クールなモノの写真が並ぶ「Fancy」

 日系3世である矢田氏は、ハーバード大学を卒業後、就職先として投資銀行などに会うために日本に一時帰国。その時たまたま友人にバスケットボールの練習に誘われ、思いがけずプロリーグにスカウトされた。プロのバスケ選手になる機会は今しかないと思いワンシーズンだけ挑戦したが、2009年にはビジネスの世界に戻って、友人と共に会社を立ち上げた。そしてテクノロジーとコマースを軸にサービス展開をするうちに見つけたのがFancyだった。

 「FancyのCOO、Michael Silvermanは大学の1年先輩。その関係もありFancyのCEO、Joseph Einhornともすぐに意気投合した。もともとコマースに興味があり、あんな風にクールに商品を紹介しているサイトは他にないと思って連絡をとった。ちょうどFancyでコマースが始まった頃に投資する話を始めて、日本上陸について本格的に話を始めたのは2012年の9月頃」(矢田氏)

 その後、実際にFancyに投資することになるが、投資する前からビジネス戦略や配送、オペレーションに至るまで継続的に議論を交わしていたという。その中で、矢田氏は日本でサービスを展開するべきだと言い続けた。その甲斐もあって、米国以外で本腰を入れてローンチするなら日本だろうという判断が下されたのだ。ではなぜ日本だったのか。

 「価格よりも、デザインや品質、細部へのこだわりを重視する。またモバイルの浸透率など、あらゆる側面で、日本はFancyにとって一番親和性が高い国だと考えた。現段階では、日本のユーザーがFancyのインターナショナルビジネスに占める割合はほんの一部だが、相性がいいだろうと見込んでいる」

日本市場参入における課題

 だが、海外のサービスが日本市場に参入する際、サイトをただ日本語化するだけのローカライズで成功することは難しい。ローカライズに際して、矢田氏は大きく3つの課題を認識しているという。まずは決済方法。Fancyの本家ではクレジットカードとPayPalによる支払いを提供しているが、日本では独自の支払い方法も導入したいという。決済だけでなく、たとえばキャリアやゲーム会社など、日本国内で強い企業とパートナーシップを結ぶ可能性は十分にあり、すでにそういった話も進めているという。

 課題として次にあるのは、「何を買おうとしているのか」がすぐに分かるようにすることだ。「Fancy上の写真はすべてユーザーが投稿しているため、パッと写真を見た時に、その写真の中の何が購入できるのかが一目で分からないことがある。たとえば、英語で書かれた詳細情報を丁寧に日本語化し、言葉の壁を取っ払うことも重要だ」(矢田氏)

 日本人が苦手とする言語の壁を取り払うことで、海外のクールなアイテムを日本で購入するだけでなく、日本のクールなものを海外に向けて発信することも可能になるかもしれない。たとえばデザイナーがその新作をFancyに投稿してそのまま販売したり、日本ならではの職人技が光るような商品を発信することもできるだろう。実際、広島でハンドメイドの木製製品を作っているSweet Dの木製トランプが、Fancyで紹介されたことから海外からの注文が殺到したという事例がある。

 「日本のすばらしいモノを海外に向けて紹介する場所にもなりたいと思っている。日本人の職人やデザイナーなど、まだ発掘されていない、でもこれから熱くなるビジネスやデザイナーを助けたい。たとえばそれをKanye Westのような海外の著名人が気に入ってくれれば、京都の個人デザイナーが一気に世界で注目される可能性だってあると考えている」(矢田氏)

 そして3つ目の課題が日本国内における認知度だ。日本ではその存在を知る人は一部に限られるFancyだが、海外、特に米国では、著名人のあいだでも人気を集めており、今では著名人からFancy Boxを作りたいと問い合わせがくるほどだという。

 Fancy Boxとは、著名人らキュレーターが選んだアイテムが毎月箱詰めになって届く定期購入サービスだ。2012年9月にリリースされ、すでに俳優のAshton Kutcherや、歌手のP!nkなどが参加して人気を集めている。唯一日本から参加しているのはラッパーやジュエリーデザイナーなど多彩な才能で知られるVERBALで、「Verbal Fancy Box Subscription」はすで7400人以上にFancy(Facebookのいいね!に相当)されている。上手くインフルエンサーを取り込み、彼らをファンにすることでメインストリームにもリーチする。日本でもこういった施策を実地していきたいと話す。

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