「日本は一番サービスと親和性の高い国」--NY発のソーシャルコマース「Fancy」 - (page 2)

進行中の資金調達、Google+とのコラボレーション

 現在Fancyは新たな資金調達ラウンドの真っ最中とみられる。資金調達の目的は、カスタマーサービスと配送の改善。当然日本での展開も念頭にあり、Eコマースの代表格であるAmazon、ヤフー、スタートトゥディといった企業に負けないサービスを提供したいという強い思いがある。今回のラウンドの筆頭投資主は、数千万ドル規模とみられる調達額のうち2640万ドルを投資したAmerican Express(アメックス)だ。これで、Fancyはアメックスの買い物好きな利用者にもリーチできることになる。

 また、つい先日、米国でGoogle+とのコラボレーションを発表した。今後Fancyでは、Google+のアカウントによるユーザー登録が可能になる。将来的にはGoogle Walletを使った決済への対応も見込まれる。Googleが提供する各種サービスを活用することで、Fancyユーザーは安全かつ簡単にサービスを利用でき、「買う」という行為に集中できるようになる。

 Google WalletがEコマースと結ぶパートナーシップが実現すればそれは初めてのケースとなる。2012年8月には、AppleがFancyの買収を検討しているといったニュースが米国の各種メディアで騒がれた。その2カ月後、アメックスを含む投資家たちから2640万ドルを調達することでその噂をかき消した。矢田氏はこう話す。

「競合、つまり将来的に買収主となるような企業――たとえばGoogle、Amazon、eBay――から出資を受けたことはない。すでにコマース事業をやっている人たちの影響を受けることなく、Fancyというサービスを構築したいからだ。これまでにない、まったく新しい買い物の仕方を提供したい」

目指すはモバイルソーシャルコマース

 Fancyがターゲットにするのはモバイルユーザーだと言い切る矢田氏。さまざまな商品を安い価格で提供する大型オンラインモールに比べて、Fancyが提供するのはクールなもの、ほかでは見つからないものとの出会いが価値だ。

 「Fancyのモバイル利用はすごく高い。まだ50%には達していないが、モバイルによる購入も大きく伸びている。当然アプリには力を入れており、結果としてiOSとAndroidともにApp of the Year 2012を受賞している」(矢田氏)

 Fancyが提供するのはまさにソーシャルモバイルコマース。実店舗に友達と買い物をしに行くのと同じ体験、そこで交わされるやり取り、そのソーシャルな体験をオンラインに持ち込むことだ。モノをFancyしてそれを友達に共有したり、グループギフト機能を使えば、複数の友人でお金を出しあってギフトを贈ることもできる。

「Fancyが提供するのはあくまで楽しいショッピングであって、自己表現の場ではない。だから極論、レシピや食べたデザートの写真は必要ない。我々がこだわるのは、『買う』ということだけ。あいまいな言い方をせず、ユーザーに対しても最初からFancyは買い物をする場所だとハッキリ伝えている」(矢田氏)

 今回、日本市場でのサービス展開の詳細については言及しなかったが、今回の資金調達が終われば本格的に着手する予定だという。取材中も、米国ニューヨークにいるCEOからSkypeでメッセージがくるなど、まるで机を並べて座っているかのように時差を感じさせず仕事をする。CEOのJoe(Josephの略称)と矢田氏にはいくつかの共通点があるという。

 「僕らは2人ともバスケットボールがすごく好き。それにお互いすごく競争心が激しい。仕事は持続力が勝負という価値観も一緒だ」(矢田氏)

 Fancyがコマースサイトになって、まだほんの1年。サイトやアプリには検索機能がついているものの、それはほとんど使われていない。検索は、明確に欲しいモノがあって初めて使われるものだからだ。ユーザーがFancyを訪れる理由は、「何となくクールなものに出会うため」。お店に足を踏み入れてみたら、右も左も見渡す限りクールなアイテムで埋め尽くされている。それがFancyが目指す新しいショッピングの形なのだ。

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