朝日インタラクティブは2月1日、自社にて運営するウェブメディアCNET Japanの編集部と執筆陣、そしてスマートフォンアプリの企画開発担当者によるクローズドなイベント「CNET Japanビジネスアプリセンターパワーアップミーティング」を開催した。
イベントに参加したアプリ開発会社は、ディー・エヌ・エー(DeNA)、インクリメントP、ドルフィン・ブラウザの3社。
無料通話・メッセージサービス「comm」を提供するDeNA comm戦略室 室長の山敷守氏、地図サービス「MapFan for iPhone」「MapFan+」を提供するインクリメントP 商品部 第三商品部 第一グループの宮沢貴之氏、スマートフォン向けブラウザ「ドルフィンブラウザ」を提供するドルフィン・ブラウザ 代表取締役社長の須賀正明氏、アプリレビューの一括申請サービス「Applis」を提供するバリューコマース 事業開発部門 事業開発推進部の芳賀一生氏が参加した。
各社が約10分のデモと質疑応答を終えた後、CNET Japan編集長の別井貴志が進行を務める形で、今後のアプリの企画や、アプリビジネスの行方について語られた。
そもそも開発側は、どのようにスマートフォンアプリの魅力を伝えているのか。ドルフィン・ブラウザの須賀氏は、「(動作が)早いと紹介しても、『へー』言われるだけで伝えるのは難しい」と語る。そこで、枯れた「ブラウザ」というテクノロジーだけを伝えるのではなく、多くのユーザーに利用されているサービスでもできていないことを探し、それを自社製品で提供することは重要だとした。
たとえば米国のEvernoteのフォーラムでは、「PC同様にスマートフォンでもウェブをクリップしたい」という要望があったが、Evernote単体では現時点で対応していない。
そこでドルフィンブラウザの最新版では、ウェブのページをそのまま、もしくはスクリーンショットでEvernoteに保存できる機能を実装した。「これはユーザーに支持してもらっている。こういったことが差別化につながる。ブラウザだけ見ていてもだめだ」(須賀氏)。さらに、「同じことをするのにクリック1つ、タップ1つ少ない、指の移動距離が1cm短い、こういうところは数字で伝えられないが、まねできない部分が大きい」(須賀氏)とした。
CMなどを通じて、高音質通話をアピールしてきたcomm。山敷氏は、「入り口は高音質無料とキャッチーなものにしている」とプロモーションの施策を説明する。一方で、中長期的にはサービスの「実名制」こそが競合との差別化ポイントになると期待する。「(将来的に)実名制だからこそできる機能で『commってなんか使いやすい』と思ってもらえると嬉しい」(山敷氏)
インクリメントPの宮沢氏は、地図アプリについて「今までは通信するのが当たり前、圏外ならアクセスできないとあきらめていた」と振り返る。
また、同社はもともとカーナビを手掛けるパイオニアの子会社として、地図、サービスともに自社で作ってきた実績がある。そんな背景から「車だと地図が出ないのはストレス。また大震災があって、『(ネットワークに)つながらない』となって、それが絡まった(結果、製品の魅力となった)」(宮沢氏)
ではライター陣は、どういったアプリをメディアに取り上げるのか。もちろん媒体として一度紹介したアプリを取り上げにくいといった媒体ごとの制約はある。だが何より重要なのは「一目見て何ができるか分かりやすいこと」(テクニカルライターの佐野正弘氏)だという。
ある媒体でアプリを紹介して欲しいという話になった際、タクシーを呼べる、新聞を読めるといった機能の分かりやすいアプリほど反応が良かったといった話もあるという。「なんでもできるアプリでなく、誰もが使える単機能なもののほうがいいのかも知れない」(別井)
芳賀氏はまた、アプリが単純かどうかに加えて、「ロジカルなものより感情的なもの。価格よりも感情にささるようなものは大きい。衣食住プラスアルファの楽しいもの、承認欲求を満たすものが流行している」と語る。「社内でもパズドラ(ガンホーのパズル&ドラゴンズ)で『今どんな状況だ』と話し合っている」(芳賀氏)。加えて、スマートフォンでは午後11時から午前2時にかけて電子書籍が購入されるという話を紹介した。
魅力あるアプリを作ることが重要な一方で、ファンを作ってアプリを周知することも重要だ。開発側はどういった施策をとっているのか。
これに対して開発側は「口コミ」が何より重要だという回答で一致した。リワード広告を使ってアプリストアでのランキングを上げたり、テレビCMを流して認知度を高めるなど、周知にはさまざまな方法がある。しかし一過性のプロモーションでは人気が続かない。山敷氏は「重要なのは、ユーザーが家族や周囲に口コミで伝えたくなるアプリであること」と語る。
インクリメントPは、東日本大震災直後にMapFan for iPhoneのアプリを無償化した。宮沢氏によると、この無償化がTwitterで広まって以降、アップデート情報などもTwitterで広げてくれるユーザーが増えたという。ドルフィン・ブラウザの須賀氏も、広告をほとんど打っていないが、口コミやユーザーからユーザーへどう広がるかといったことを重視していると語った。
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