Dellの株式非公開化は、PCエコシステムの基盤が崩壊していなければ起こらなかっただろう。「Windows 8」の売り上げは、Microsoftの人々がユーザーに信じさせようとしている話とは違って停滞している。株式非公開化という対応によってDellは、よりリスクの高い戦略を試みる余裕ができる。例えば、(Microsoftの20億ドルの融資があるにしても)ほかのOSを採用することもできる。
ただし、こうした対応がPCエコシステムの状況を変えられるとは思えない。その落ち込みは誰もが感じ取っており、タブレットPCでは、その流れを食い止めるには十分ではないだろう。
Michael Dell氏は、筆者らの世代では最も成功した起業家の1人だ。同氏は自宅のガレージから数十億ドル規模の企業を立ち上げ、その過程で億万長者になった。Dell氏は、自分の名前を付けた会社と自分とが一体であるという思いを強く持っている。しかし2004年にCEOを辞職した後の指導的立場への復帰は順調ではなく、それはSteve Jobs氏のApple復帰とは比べものにならない。
Michael Dell氏はCEOを退く準備をしているのではないかと推測する人々もいるが、筆者には証拠があるようには思えない。自分が創設した企業に影響力を行使するという人生で最大の機会を手にした時に、どうして辞任などするだろうか。
同社の株式非公開化は、Dell氏の功績を決定付けることになる。同氏もそのことを分かっている。株式非公開化の取引が成功すれば、Dell氏は現代の優れたCEOの1人として知られるようになるだろう。状況を変えることができなければ、歴史書の脚注に書かれる程度の存在になるだろう。
かつてIPOは、自らの帝国を土台から築き上げるという起業家の大仕事の中で、頂点に位置付けられる時だった。しかし今、企業はIPOと、それに伴って生じる規制がらみの悪夢のような経験を回避する方法を探っている。
Mark Zuckerberg氏はFacebookのIPOを望んでいなかったが、基本的に選択肢はなかったというのは良く知られた話だ。誰がZuckerberg氏を責められるだろうか。四半期ごとの財務報告書の提出やジェットコースターのように上下する株式市場、そして敵対的買収といったことは、少しも心楽しいものではない。
株式非公開化というDellの対応は、公開企業であることがどれほど面倒になり得るかを浮き彫りにしている。そして最近のSECの規制の変更によって、以前よりも長期間、株式非公開のままでいるのが簡単になったことを考えれば、IPOに踏み切る理由はあるのだろうか。
はっきりさせておきたいのは、ほとんどの企業は今後も株式を公開するということだ。初期の投資家はそれを期待するからだ。しかしそうした考え方が、今後10年間で変わったとしても驚くことではない。今の傾向が続くなら、IPOに関するあらゆる規則を書き換えることが必要になるかもしれない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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