ガンホー森下社長に聞く--脱パズドラで革新的なゲームを世に出したい - (page 2)

佐藤和也 (編集部)2013年02月08日 10時00分
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 真似するよりも真似されるようなものを作らないとダメだと思っています。真似されるということは、それだけ優れた定番型フォーマットであることの証明ですので、さして思うこともないです。そのようなタイトルが出るとは予想してましたので、あくまで個人的な感想としては、むしろありがたいことかなと。最終的に、「パズドラ」を上回る面白さがあるかどうかが大事だと思いますので。

「パズル&ドラゴンズ」
「パズル&ドラゴンズ」
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 我々としては「破壊と想像」といいますか、「パズドラ」は私たちが作りだしたフォーマットでもありますけど、それを壊して新しいものを作り出すことに目を向けたいです。

――世間的には、モバイル端末で遊ぶゲームは全てソーシャルゲームと見られていて、「パズドラ」もソーシャルゲームの進化系という見方も一部にあります。

 何をもってゲームか、そしてソーシャルゲームかという定義自体も難しいですけど、僕個人としては世間一般で言われているソーシャルゲームを作った覚えはないです。「スマホゲーム=ソーシャルゲーム」とは思ってないし、僕らが作っているゲームはスマートフォンゲーム、コンシューマーゲーム、PCオンラインゲームという考えで、大きなくくりで「ゲーム」というものを作ってます。

 ソーシャルゲームについては、課金のやりすぎがユーザーさんのゲーム離れに繋がる部分もありますので困惑する部分もあります。もう少しゲーム性で勝負していくという流れだといいかなと。それができる技術者やクリエイターさんはいるんだろうけど、面白いゲームを作るということに注力できない難しい環境もあるかと思います。

 ただ、過去の歴史を見ると淘汰されていくものだと思います。さらに先を見ると、これまでにはない面白いゲームが遅かれ早かれ出てくるでしょう。それを作り出したいと思っている一方で、他社さんからリリースされる可能性は十分にあります。だから「パズドラ」に固執するつもりはないし、「パズドラ」っぽいものが市場に散見される状況だからこそ、新しいゲームも生み出したいですね。

――以前に黒川塾に登壇した際、KPIやマネタイズ先行のゲーム作りには否定的な意見を出されていました。

 そもそもオンラインゲームというのは24時間365日行うサービスで、今のソーシャルゲームでは使われてないかもしれませんが、日々のコンカレントユーザー(CCU:同時接続者数)やARPU(ユーザー一人あたりの売り上げ)などは取っています。運営をする上ではデータから動向を分析するということは昔からやっていることで、ある意味普通のことですし、当然必要なことです。KPIとかマネタイズという言葉は使ってないですけど、日々の運営による分析が不要と言っているのではありません。

 ただ、ゲームを作るうえでマネタイズありきで当てはめるようにするのはナンセンスです。そこを意識してゲームを作ったって面白いものは生み出せないし、逆に成功したデータに寄せて作られたゲームって、結局は売れたゲームの2番煎じタイトルと一緒です。

 なので、企画の段階でKPIやマネタイズは考えないと。そこから形にしていく段階で、頭の片隅で2割ぐらい考えておけばいい。何よりも面白さを徹底して追求するほうが大事です。スマートフォンやPCオンラインゲームしかできないわけではなく、コンシューマーゲームも作って販売できます。コンシューマーで出したほうが面白いと思えばそちらに投じますし、企画ありきでプラットフォームを考えるので、企画を進行する上で「面白いからやろう」はあっても「儲かるからやろう」はしないです。

 「パズドラ」を作っているときに、別の部門からカードソーシャル系のゲーム企画が上がってきたんです。やりたいという熱意が担当者からあったし、当時の時流としてはこちらを取るべきなんでしょうけど、却下したんです。担当者から「売り上げが達成できません」と言われたんですけど「そんなんだったらいらねーよ」ぐらいの勢いで止めたんです。なんというか、やりたくないものはやりたくないですよ。

 ヒットするかどうかについては、ハッキリ言って運でしかないです。後付ではいくらでも言えますけど、作っているときはそんなこと考えてないですよ。「パズドラ」を作っているとき、僕や開発チームは面白いと思っていましたけど、ほかのチームに触らせてみても無反応だったり、面白いという反応はあまりなかったんですね。だから社内でも大ヒットすると思っていた人は少なかったです。

 ゲームタイトルがヒットすると、「なぜヒットしたのか?」という理屈と論理を分析して、法則にしたがって物を作ろうとするけど、それ自体がナンセンスとまではいいませんが、それができているならみんなヒットしているはずです。そういうことに労力を割くぐらいなら、もっと面白いことを考えたほうがいい。そのために自分の時間を作る必要があるんですよ。スポーツなり映画なりと、なんらかに刺激を受けて新しいことを考える。それがエンターテイメントを作ることだと思います。

――自らの判断でリリースを遅らせるという話題も出ていましたけども、企画や面白さを重視して開発することが理想的ではありつつも、利益が出ていて体力がある会社でないと、そのような考え方は難しい印象があります。

 利益が出ているから言えることという意見があるなら、全くその通りだと思います。経営基盤が磐石でないと、余裕のあるものづくりはできないです。僕の判断でリリースを2、3カ月を平気で遅らせて、納得がいくまでブラッシュアップをさせますけど、経営基盤が盤石だからこそ、開発者の心も含めて徹底的に追求できるんです。

 逆に経営に余裕のあるときこそ、面白いものづくりをやらないでいると、尻つぼみになってダメになります。我々もその時期があって苦い経験をしてきたからこそ、ものづくりの原点に立ち返って感性主導型の開発を行っています。非効率と指摘されるかもしれませんが、あまり効率性は求めていないです。

 ソフトウェア開発で「アジャイル」という言葉がありますけど、大嫌いですね。アジャイルかそうでないかという手法や作り方に固執してはいけないと思います。企画の中でビジュアルイメージができている場合や、仕様書をそれほど書かなくても任せられる場合は任せてしまえばいいのです。もちろんディレクターや開発陣の個性などの見極めは重要ですけど。

 「パズドラ」のプロトタイプで遊んでいるときに、ドロップを動かすことに対しての気持ちよさの追求に、山本(※パズドラのプロデューサーである山本大介氏)と2人で延々と議論をして心血を注ぎました。コンシューマーとそん色ないゲーム体験を出すために、開発スタッフが技術面でもかなり頑張った結果です。このあたりの心意気は工場の職人と変わらないですよ。絶対に面白いものを作るという信念で作りましたから。

 ヒットするかどうかは運だと思いますけど、こだわり抜いて作り続けないと、いい結果は出ないです。労力が報われず砕け散るような結果になることもあるし、ゲーム作りは博打的なところもあります。でも、無駄と思われるところにもこだわって、しっかりゲームを作って世に出したほうが、運が向いてくると思うんですよね。

 だから開発途中でもダメだと思ったらちゃんと止める勇気も必要だし、そういった判断を実行できる経営と開発環境がないとできない話です。磐石な経営基盤を整えることは、いいモノ創りにはどうしても必要だと考えます。PCオンラインゲームの下支えや、今ヒットしているタイトルがあるからこういうこともいえますが、余裕のあるうちに先を見据えて手を打たないといけません。

――ゲームの面白さを大事にする開発をうたう一方で、初期の「ラグナロクオンライン」の運営などを見ているユーザーからは、否定的な見方をされているところもあります。

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