2008年7月11日、これが「今の時代」の第1日目だ。iPhone 3Gが日本で発売されると同時にApp Storeが開設されスマホアプリ・ビジネスが始まった日である。そこから5年目を迎える今年2013年以降、このビジネスがどうなっていくのか占ってみたい。
まずは現状認識として、スマホと呼ばれる多機能携帯電話端末は日本の全てのキャリアで発売され、携帯電話端末の売上ランキングの上位は全てスマホである。2008年iPhone 3G発売当時は「売れる」「売れない」の論争がさまざまなところで行われ、それぞれの陣営で正に社運や人生を賭けた決断が時間と共に重ねられた結果が今なのだ。そのような論争など無意味なほどに、今は全てのIT業界や、それ以外の業界においてもスマホと関わらずに仕事を進めることは事実上、不可能に近いほどの存在となった。これからの携帯電話端末は事実上、全てがスマホである。
つまりマジョリティになったのだ。これが意味するところは「飽和するまで市場は拡大する」ことを意味する。これは広義のスマホアプリ・ビジネス全体に言えることだ。ネイティブ・アプリかHTMLか、iOSかAndroidかWindowsかなどは瑣末(さまつ)なことであり、それらは個々のビジネス環境によって決断すればよいことで、大前提として「スマホアプリ・ビジネスは拡大するという流れは当分の間、止まらない」ということだ。
ではスマホアプリは2013年以降、どういった方向に拡大していくのだろうか。直近のビジネスモデルであればフィーチャーフォン時代の成長曲線と投入された各種ビジネスが参考になるだろう。最初は端末だけで楽しむコンテンツから始まり、リアル店舗への誘導や会員獲得などに広がり、コンテンツだけではなくさまざまな用途で利用されるようになった。
スマホアプリは作り込み次第でフィーチャーフォンとは比較にならないほど高度な事が実現できるコンピュータ・ソフトウェアだ。コンテンツで楽しんで頂くエンターテイメントを提供するゲーム会社だけでなく、それ以外のほぼ全ての業種業界で顧客満足度を高めるツールとして最適なデバイスでもある。
ファストフード店、家電量販店、食料品、化粧品、通販、保険、銀行などの各社が集客やブランディング、商品販売のためのアプリを無料で配布している。これらは今後、スマホがマジョリティになればなるほど効果が増す可能性の高い分野であり、更なる業種、業界の参入拡大が予想される。毎日1回15秒間、さまざまなアプリを利用するユニークユーザーが10万人、50万人、100万人……1000万人超えとなった場合の経済効果は計り知れない。つまりアプリを売って稼ぐのではなく、アプリはモノやサービスを買っていただくための販促ツールだ。
スマホは手のひらに乗る高性能コンピュータだ。最近では外部機器との連携が可能になってきた点も見逃せない。アプリを利用して外部の機器と連携するものだ。ラジコンのような玩具、体重計などの健康機器、カーナビとの連携、その先には車そのものもスマホの周辺機器にしてしまうような構想も出始めている。アプリだけで完結するのではなく外部機器と連携するハードウェア事業も着実に拡大していくだろう。
「2012年は”儲け方”が確立した年だった--スマホアプリ・ビジネスの考察」で述べたようにビジネス手法が確立し、デバイス、プラットフォーム、キープレイヤーと必要な材料は全て出揃ったといえる。今年2013年以降は、これらを足掛かりとして、ビジネスが拡大していく元年となるだろう。それは即ち終わりの始まりでもある。飽和する限界点まで市場は成長する。従って何年か後に訪れる市場飽和状態で安定的な収益を継続できるビジネス体質の育成が必要である。
また長期スパンでの経営問題としては、次のイノベーションを見極める必要性が出てきたとも言える。次のイノベーションが電脳眼鏡なのか、網膜投影型ディスプレイなのか、脳直結インターフェースなのか、実は見慣れたテレビなのか──初春の夢に託すとしよう。
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