2013年の展望

2013年に注目すべきサービスはこれだ--ベンチャーキャピタル編

岩本有平 (編集部) 平野武士2012年12月31日 10時00分
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 2012年も数多くの起業家がさまざまなサービスに挑戦した。では2013年は一体どんな年になるのだろうか。

 昨日掲載した記事に引き続き、国内インキュベーター、キャピタリストにアンケートを実施して得た回答から、2012年のIT業界の振り返り、そして2013年のトレンド予測をしてみたい。後編となる今回は、創業期からミドル、レイターステージの投資を手掛けるベンチャーキャピタル(VC)9社の回答を紹介する(紹介は五十音順)。

 なお質問は次の2つ。「質問1」は「2012年の企業支援、投資環境を振り返ってポイントとなる『キーワード』と、その理由」。「質問2」は「2013年を占う上で重要なサービスを(1)国内(2)海外で1つずつ」とした。

伊藤忠テクノロジーベンチャーズ パートナー 小川剛氏

質問1:キーワードは「Series A Crunchの兆し」です。米国のY Combinatorなどに代表されるシード段階でのベンチャー企業に少額投資していく手法が日本でもブームとなり、国内のベンチャー企業活性化につながりました。一方でベンチャー企業がシード段階の投資を経て、次のステップであるSeries Aと呼ばれる億円単位での本格的なエクイティ投資に辿り着くのは米国でも日本でも容易ではなくなってきているのを感じています。

質問2:2013年は、インターネットやモバイルとリアルビジネスを融合させた「O2O」が本格化すると思います。日本独自の商慣行にも合わせて、スマホやタブレット等とも連動した来店誘導、決済・ポイント、簡易POSなどが普及拡大期に入り、来店誘導とポイントでは、確実に来店確認できる「スマポ」、決済では米「Square」のようなスマホによるカード決済などが注目です。加えて、タブレット型POS、NFC利用のウォレット型決済・ポイントアプリ、サービスが出てくると予想します。

 海外では「インターネットと製造業の融合」がキーワードになると思います。クリス・アンダーソン氏の著書「MAKERS」は、技術の進化で製造が容易になり個人でも実現可能な「新しい製造業」が生まれるという内容でした。中でも米国で先行している「インターネットと製造業の融合」に注目しています。「電子工作キット製造販売×電子工学ネットラーニング」でオープンソースモデルの米「Adafruit Industries」のような会社が、物作りに強い日本からも出てきて欲しいと願います。

インフィニティ・ベンチャーズLLP 共同代表パートナー 小林雅氏

質問1:キーワードは「スマートフォンへの本格シフト」です。iPhone 5などの登場によってスマートフォンの普及がさらに加速した1年でした。これは投資環境においても大きな変化をもたらしました。グリーに買収されたポケラボやIPOを果たしたコロプラといった会社は、いち早くスマートフォンのビジネスを軌道に乗せ、急成長しています。

 投資先ではスマートエデュケーションがスマートフォンやタブレットに知育アプリを展開して大きく飛躍しました。またファッションECを手がけるミューズコーは、売上の半分がスマートフォンからとなっています。

 スマートフォン上のビジネスは戦い方がさまざまであり、各社しのぎを削っています。今後さらに発展していくことは間違いありません。

質問2:投資先のほうが実体験のあるコメントになるため、2社とも投資先を紹介します。まず国内はスマートエデュケーションです。

 2012年から本格的に製品・サービスをリリースしましたが、複数のサービスがヒットし急成長しました。12月12日に開催したInfinity Ventures Summit(IVS)のLaunch Padでも優勝を果たし、2013年においてもさらに成長することが期待されます。

 ここ数年、ソーシャルゲーム市場が急成長し、巨大なビジネスとなりました。今後はゲーム以外のビジネスでもスマートフォンやタブレット分野において大きなビジネスが生まれると考えています。知育の分野はスマートフォンやタブレットとの親和性も高く、グローバルに通用するコンテンツです。日本からグローバルに大きく成長する分野はゲームだけではないということを示すことができるのではないかと期待しています。

 海外というとシリコンバレーの会社を挙げることが多いとは思いますが、日本だけでなく中国に投資しておりますので中国のネット企業を取り上げます。Daguu Technologyです。

 Daguuは、ブルーカラーを対象にした求職情報を提供するモバイルサービスです。日本においてはモバイルで求職情報を探すことが一般的になっていますが、それをヒントに中国で立ち上げたサービスです。月間のユニークユーザー数は1000万人を超え、急成長しているサービスです。

 中国の沿岸部は工場が多く、Apple製品を製造しているFoxconnなどは毎月多くの求人を行なっています。そのニーズに答えているのがDaguuのサービスです。

 スマートフォンやタブレットといった新しいデバイスが成長するとそれを製造する中国の製造業が成長し、さらにそれを支える中国ローカルのモバイルサービスが成長するといった流れはとても面白いと感じています。中国はオンラインゲームなどゲーム市場も大きなビジネスになっていますが、実際にリアルなニーズを解決するモバイルサービスも登場しています。

NTTインベストメント・パートナーズ 主査 米倉広毅氏

質問1:米国VCのMarc Andreessen氏が言う「software is eating the world」ではないでしょうか。多くのソフトウェア企業が、コマースや金融、コミュニケーションやコンテンツ配信等さまざまな分野で、新たなユーザー体験やコミュニティの形成をもたらすとともに、既存業態を浸食しユーティリティーのコモディティ化を進めています。起業家にとっても、クラウドや開発実行環境、スマートフォンや流通プラットフォーム等の整備が進み、市場特性への対応といった課題はあるものの、グローバルでの事業展開の垣根が格段に下がりつつあります。

 弊社も、ソフトウェア時代に新たな価値を創造する方々に、NTTグループ資産を積極的に活用頂きたいと考えています。

質問2:国内は「Cyta.jp」、海外は「Twilio」です。

 ニコ動やSquareをはじめ、GithubやStripe、Oktaなどソフトウェア企業としてプラットフォームを形成する、またその形成に寄与する企業やAnalytics提供企業に注目しています。

 その中で、通話やSMSの機能を開発者向けにAPI提供するクラウドコミュニケーションプラットフォーム開発社のTwilioや、質の高い個人指導の先生が見つかるウェブサービスを提供し、これまで人に教える機会の少なかった個人の知識や労働力を分散的かつオンデマンドに活用、かつ先生にお金が回る有料課金の仕組みを導入できている知識の流通プラットフォームとしてCyta.jpなどに着目しています。

グリーベンチャーズ パートナー 堤達生氏

質問1:2010~2011年に生まれてきたインキュベーション、シードアクセラレータプログラム系の卒業生にとっての「チャレンジ」の時期だったのではないかと思います。やはり構造的にシリーズAの投資家が少ない中で、シードマネーを手に入れても次のAラウンドで調達できるスタートアップは、かなり限定的だったのではないでしょうか。

 一部のスタートアップは1億円以上の規模の調達を完了していますが、多くのスタートアップは資金調達ができない、または想定より少ない金額しか調達できなかったというのが現実ではないでしょうか。

 投資家の目も相変わらずイグジットが限定的な市場のため、バリエーションによりシビアになっており、結果として起業家サイドも思うような資金調達ができなかったということだと思います。この傾向は来年も続くと思いますので、起業家には、シードマネーを入れた段階で、シリーズAに向けてのマイルストーンをきちんと決めて活動していくことをお勧めします。

質問2:国内はやはりO2O領域だと思います。2012年からも見られた傾向ですが、まだまだIT化されていない領域でオペレーションの非効率性や情報の非対称性によるクライアントもカスタマーも多くの“負”を抱えています。これを解消するようなサービスは大きく伸びる可能性があります。

 私はこれを「サービスEC」と呼んでいますが、楽天やアマゾンに代表されるような“モノ”のECだけではなく、サービス業のEC化に着目しています。サービス業がオンラインで比較検討され、予約までが完了するという流れです。弊社がすでに投資しているスターフェスティバルやRettyなどもこの文脈での投資になります。業界的な切り口では、医療サービスの領域は大変注目しています。「サービスEC×医療」が1つの狙っていきたい投資分野ですね。

海外については、弊社が投資対象にする東南アジアでの話しをさせて頂くと、日本と違って、まだまだ“モノ”のECが伸びる余地が非常に大きいです。特にインフラ(通信、ロジスティックス、決済)が徐々に整備されていく中で、人々の消費活動のネット化はますます進みます。

 先進国でEC化されたものは、東南アジアでも同様にになると思います。日本や米国で流行したECのモデルには一通り着目して投資したいと思います。

サンブリッジ グローバルベンチャーズ 代表取締役社長 平石郁生氏

質問1:キーワードは「グローバル」です。6月にロンドンで開催されたイベント「LeWeb」に参加して実感したことですが、現地で会ったスタートアップが手掛けているビジネスモデルで、日本で「見聞きしたことのないもの」は1つもありませんでした。つまり、欧米人であろうが日本人であろうが、同じオポチュニティを見るということです。

 この事実が意味することは、日本語という「暗号」のような言語で数千万人に向けてサービスを提供するか? 「英語」というグローバルな言語で「10億人」を超える人に対してサービスを提供するか? という競争だということです。App StoreやGoogle Playという「プラットフォーム」が整備されたことを考えると、特に、BtoCビジネスの場合、この差は決定的です。僕たちの世代がネットビジネスを始めた1990年代とは異なり、国内市場だけを見ていては、成功は覚束ないでしょう。

 因みに、僕が現地で会ったスタートアップは英米人以外も含めて例外なく、英語でサービスを提供していました。

質問2:国内は「Language Cloud」。2012年はソーシャルメディアの普及に伴い、アプリで起業するケースが多数見られました。しかしマネタイズの難しさに加えて、開発が容易であるがゆえに物凄い数のアプリが登場することから、さながら「椅子取りゲーム」の構造になっています。パレートの法則のように、僕自身もダウンロードしたアプリのうち利用するものは約2割にとどまります。

 そんな中で、あるセクターのバリューチェーンを書き換えてプラットフォームとなれるスタートアップが着実に地歩を固めつつあります。Language Cloudもその1つで、語学学習のためのプラットフォームを構築しつつあります。

 海外では「Babelverse」に注目しています。たまたま、彼らも「言語」に関するプラットフォームですが、クラウドソーシングでほとんどすべての言語間を同時通訳する素晴らしいサービスです。因みに、米国の議会中継でも使われています。

 先日、来日中のファウンダー2人に会った際、開発中の新サービスのデモを見せてもらいましたが、「これは炸裂するな!」と思いました。

 以上を踏まえ「グローバル」に並ぶキーワードとして、「プラットフォーム」も挙げたいと思います。

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