企業がスピードをつけて成長するため、避けて通れない資金調達。起業家はどのような考えで資金を調達し、また一方でエンジェル(個人投資家)やベンチャーキャピタル(VC)はどのような考えで投資をするのか。
12月11日から12日に開催された経営者向け招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2012 Fall Kyoto(IVS)」のセッション「リアル・ベンチャーファイナンス」では気鋭の起業家や投資家が資金調達の本音を語った。
セッションに登壇したのは、起業家側がクラウドワークス代表取締役社長件CEOの吉田浩一郎氏、コミュニティファクトリー代表取締役社長の松本龍祐氏、スマートエデュケーション代表取締役の池谷大吾氏。投資家側がディー・エヌ・エー(DeNA)顧問であり、エンジェルとしても活躍する川田尚吾氏、YJキャピタル取締役COOで、就任以前はエンジェルとして活躍してきた小澤隆生氏。モデレーターは経営共創基盤パートナー/マネージングディレクターの塩野誠氏が務めた。
クラウドワークスは創業期に小澤氏をはじめとした数人のエンジェルから資金を調達している。小澤氏は、同社への投資を決めた理由について「しつこく来たから」と冗談まじりに回答する。実際のところ、吉田氏が非常に熱意を持っており、なおかつ労働環境を変えるサービスという点を評価して投資を決めたという。吉田氏自身も、エンジェル投資家へのアプローチについて「最終的にはしつこさや熱意。BtoBの営業はやってきたので、『最悪受託で(資本を)返す』と語った」(吉田氏)と振り返る。
吉田氏は最初の投資にVCを選ばず、エンジェルを選んだ。その理由については「もともと自己資本と社員からの資本があったので、お金の必要はなかった。ただ上場やその後の起業を通じて自分の苦手なものや限界点について理解していた。(VCのファンドと異なり)期限のないエンジェルのほうが同じ目線で事業をできると思った」と語る。
そんな吉田氏だが、同時期に川田氏にも打診したところ、投資を断られたのだという。川田氏はこれに「話を聞いてから海外出張があり、戻ったところもう終わっていた」と冗談を入れつつ、「ああいう領域(クラウドソーシング)には深い洞察がないので、役に立てないと思った。基本的には『金だけ入れる』というのではなく、お手伝いがしたい」(川田氏)と、その理由と自らの投資のスタンスを語った。
吉田氏は元ドリコム執行役員営業部長として上場を経験した人物だ。川田氏は、同氏のようなシリアルアントレプレナーへの投資自体は基本的に積極的であるという。「起業の成功の裏には、その10倍の失敗がある。どうすると死ぬのか、そこからどう立て直すか知っているシリアルアントレプレナーの方は手堅い」(川田氏)。小澤氏もそれに同意し、さらに「1回目(の起業)でも、社内で新規事業を立ち上げたような方がいい」と語る。起業するとあらゆる業務に直面するので、大企業の一機能として優秀だった人間よりは、何かしらの立ち上げ経験を持っている人間のほうが、成功確率は高いのだという。
シーエーモバイルの役員らが設立したスマートエデュケーションは、2011年6月の設立。同社は2012年2月にインフィニティベンチャーズLLPのファンドから1億円の出資を受けている。
スマートエデュケーションの池谷氏によると、同社は設立当初大人向けの英会話サービスを中心に開発しており、池谷氏のみが未就学児向けの知育アプリ開発していたという。そんな中でインフィニティベンチャーズの共同代表パートナーであり、前職の上司でもあった小野裕史氏にプロダクトを見せたところ、「知育アプリに集中すべき、それであればお金も出すもする」という提案を受たため、知育アプリに集中するに至ったという。「おやこでスマほん」をはじめとした同社の知育アプリは、現在Google PlayやApp Storeの教育カテゴリで上位にランクインしている。
ミクシィのソーシャルゲーム開発者向け投資プログラム「mixiファンド」の第1号案件として、2011年1月に1億8000万円を調達したコミュニティファクトリー。松本氏は、ミクシィからの投資を選んだ理由について「いろんなVCを回った訳でなく、当時一番ソーシャルな会社だったから」と語る。その後の調達ではさまざまなVCを回ったという松本氏だが、塩野氏からどういう観点でVCを選んだかを尋ねられると、投資担当者の相性も重要だとした。「お金には色がないが、担当者にピンとくるかどうかは重要」(松本氏)
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