利用者の増加とともに、広告の世界にも欠かせないツールとなったソーシャルメディア。キャンペーン、ウェブサイト、イベントと各方面で活用されるソーシャルメディアを広告業界はどう捉え、活用しているのか。社内に横断的組織「ソーシャルメディアラボ」を立ち上げ、情報共有に取り組む電通のiPR局ソーシャルリスニング部チーフ・プランナーの西山守氏と、コミュニケーション・デザイン・センター次世代コミュニケーション開発部プロデューサーの森直樹氏にお話を伺った。
西山:2年程前、電通ソーシャルメディアラボという社内横断型のチームを立ち上げました。ちょうど「ソーシャルメディアが重要だ」といろいろなところで言われ始めた時期でした。もちろん社内での取り組みはそれ以前から進んでいたのですが、現場ベースのいろいろなところで、数多くの事案が生じているという形でした。その時に情報共有して、必要なものは部署横断で開発していこうと、立ち上げたのがソーシャルメディアラボです。
2012年の4月に組織改編があり、ソーシャルメディアを担当する部署が集約され、役割分担も明確になってきました。それ以降、ソーシャルメディアラボ自体はそれほど表立った活動はしていないのですが、随時、情報共有をしたり、社内で重複や抜け漏れがないようにしています。
私が所属するiPR局は、4月の改編で新たに立ち上がった部署です。これまでの戦略PRに加えて、ソーシャルメディアのクリエイティブ、コミュニティ・マネジメント、ソーシャルリスニング(ソーシャルメディアの口コミ分析)などに取り組んでいます。
森:私はコミュニケーション・デザイン・センターの次世代コミュニケーション開発部で、クライアントに提案する仕事と開発業務の半々程度で担当しています。元々デジタルやモバイル、ソーシャルメディアといったIT領域に早くから注目していて、そういったものを使った提案をクライアントにしたり、ソリューション寄りの研究開発をしたりしています。
西山:ソーシャルメディアに関しては色々な部署が担当業務と併せて作業をするケースが多く、集約されたと言っても、色々な部署にまたがっています。そのため、ソーシャルメディアに関して営業がどこに問い合わせれば良いか分からなくなった時に、担当者を仲介したり、チーム編成のサポートをしたりもしています。弊社においては、ソーシャルメディアだけをやっていればいい、といったことはなく、コミュニケーション戦略全体の中でソーシャルメディアの使い方を考えていく必要がありますから。
森:そのくらい今やソーシャルメディアはあらゆる領域に関わってきています。
森:2012年7月に発表した「Social_Box(ソーシャルボックス)」などです。これは、ソーシャルメディアを通してイベントや店頭プロモーションを拡散させることを目的に開発されたプロモーションサービスで、リアルとソーシャルの連携が目的です。実際にエイベックスや台湾で開催された地方自治体の観光プロモーションなどに採用されました。
森:通常のイベントですと、イベントの来場者数に対してソーシャルメディアでチェックインしたり、写真投稿したりとアクションを起こしてくれる人は約1割です。それに対し台湾で開催した地方自治体の観光イベントでは、約5割の人がアクションを起こし、参加総数の倍くらいの「いいね」がつきました。
ソーシャルメディアでは、写真投稿が最もいいねされやすいので、会場内にその地方自治体らしいフレームを用意したプリクラブースを設けました。そのプリクラを来場者個人のFacebookに投稿してもらうことで、地方自治体が意図するコンテンツが拡散されていく形になりました。
これに代表されるように、Social_Boxではクライアントが拡散させたいインサイトにもとづいてソリューションを用意しています。イベントだったら来場者、キャンペーンだったら参加者が、シェアしたいと思うコンテンツを提供し、拡散力を高めます。
ただ単に、いいねがつくだけではなくて、その前後を用意することで、本当に伝えたいことを拡散させていく。そういったクリエイティブを作るプロフェッショナル集団を、電通は持っています。
森:拡散させたい時は、複数のソーシャルメディアを使うのが効果的ですが、全体の文脈を考えて組み込ませることが大事です。
例えば、エナジードリンク「レッドブル」が実施した「成層圏からのフリーフォール・プロジェクト『Red Bull Stratos』」は、クールな動画を用意することで、シェアが拡がっていきました。これは企業側がシェアして欲しいと強調しなくても、「かっこいい動画であればシェアしたい」というレッドブルユーザーの特性を理解していたからです。Facebookはあくまで脇役、シェアするツールであって、主役はレッドブルのブランドメッセージであり、コンテンツ。そういう取り組み方が大事だと思います。
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