6つめは、「イグジットかライフワークかを2~3年ごとに考えていないこと」だとした。イグジットをするのであれば、企業を拡大するために誰かにゆだねることも含めて考える必要がある。一方でライフワークであれば株価や上場を意識する必要はない。こういった判断を数年単位で見直すべきだという。
そして7つめは「会社は生まれ変わらないといけない」ということ。「DeNAの南場さんも、『最初はオークションをやる』と言っていた。PCのオークションからモバイルのオークションに行き、Mobageが始まった。10年で3回(事業が)変わるフレキシビリティは重要。初志貫徹も重要だが、世代、時代、年代で事業は変わる」(大前氏)。
さらに大前氏はAppleのSteve Jobs氏を引き合いに出し、「ルーターからPCやNewtonまで作った。最後に(iPhoneで)当たるまで企業のディフィニション(定義)を変え続けた。これがJobsが成仏(じょぶずがじょうぶつ)できた理由」とダジャレを織り交ぜつつ、「初志貫徹」ということと「物事が変わっている」ということの両軸で事業を考えるべきだとした。
また、パナソニック(旧:松下電器産業、松下電器製作所、松下電気器具製作所)の松下幸之助氏やYKKの吉田忠雄氏、本田技研工業(ホンダ)の本田宗一郎氏といった日本が貧しかった時代に世界に挑戦した経営者について学ぶ、異業種や異国から学ぶといったことの重要について語った。
講演後の質疑応答では、gumi代表取締役の国光宏尚氏が「IT分野で日本が世界の企業に勝つには」と質問を投げた。
これに対して大前氏は、人材こそが重要だと語る。
たとえばこれまで日本が強かった製造業においては、ホンダが車を海外で売ればその車自体の優秀さが自らを宣伝してくれた。つまりハードで「すごいもの」を作れば売れた時代だったという。一方で、IT分野ではこういった状況は起こりにくい。コミュニケーションサービスの「LINE」などは中東で人気を博しているが、これについて「LINEがサウジアラビアで成功したのは、『語るもの』がマークや絵文字(スタンプ)だったから。言語やコミュニケーションに入り込まないといけない産業だ」と分析する。
ではLINEの成功例のように、IT企業が『世界の障壁』を越えるにはどうすればいいのか? 大前氏は海外で活躍できる人材を採用し、価値観を共有して育てていくことが重要だとした。「現地採用でうまくいくことは考えられない。一緒に育つ必要がある。国際化をにらんだ人材の多様化には10年かかるが、そのタイムスパンと自分たちの計画が合わない(のが課題)。それをにらんで早期に国内でいろいろな国の人と仕事をしたり、社員にしたりしなければいけない」(大前氏)
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