「ITを武器に成長戦略を」大前研一氏が講演

永井美智子(CNET Japan編集部)2003年06月18日 21時12分

 日本アバイアが開催するイベント「Avaya World Japan 2003」の2日目となった6月18日は、経営コンサルタントの大前研一氏が基調講演を行った。大前氏はITによって様々な事業機会が生まれていることを指摘し、日本企業は既成概念を捨てて成長戦略を描くべきと語った。

CRMやSCMが景気停滞を生んでいる

 大前氏はまず、ITがもたらした経済への影響について説明した。大前氏によると、CRMやSCMによって生産から納入までの期間が早まったことが経済の流れを大きく変えたという。

 「今までは政府が金利を下げて市場に資金が流れると、企業は景気の良くなったときに備えて製品の在庫を蓄えていた。しかしCRMやSCMによって必要なときにすぐ製品が作れるようになり、企業は最も柔軟性の高いお金という形で資産を保有するようになった。現在政府の金融策が効果を持たず、景気が悪い理由はここにある」と指摘した。

 IT化による最も大きな変化として大前氏が挙げるのは、中国やインドなどコストの安い地域への業務移管だ。「日本企業のコストの70%は間接費だ。これをコンピュータ化しコストの低い地域に移管するサービスは事業機会が無限にある」(大前氏)。日本企業の業務移管先として、大前氏が現在注目するのは中国の大連だという。大連は日本企業の誘致に積極的なうえ、学生の3分の1は第二外国語で日本語を学んでおり、日本語の使える人材が多いのがその理由だ。また人件費も「福利厚生も含めて1人あたり月額2万5000円から3万円程度」(大前氏)といい、実際に大前氏が代表取締役を務めるジェネラル・サービシーズ(GSI)も大連で日本企業の間接業務のアウトソースを請け負っているという。

日本企業はGeneral Electricのやり方を学べ

大前研一氏

 現在ITを活用して成功している企業として、大前氏はDell、Cisco Systemsなどを挙げる。その特徴はオンラインをうまく利用し、核となる製品に集中していることだという。日本の大企業は多角化が進んでいるため、参考にするのは難しいと思われるが、大前氏は「単純な商品に集中して一度やってみればいい」とアドバイスを送る。

 特にGeneral Electric(GE)は日本企業にとって学ぶべきものが多いという。例として、大前氏は全ての事業の頭に"e"をつけ、電子化を考えるという方法を紹介した。「設計をe-design、販売をe-sell、サービスをe-serviceにするなど、GEは古い産業を新しいやり方で行うことで、人材を毎年15%も減らしながらも生産性を4〜6倍に向上させている。この点でGEの右に出るものはいない」。さらに「SumsungはGEを徹底的に真似することで現在のように成長した。日本企業はGEの真似などできないというが、迷ったらGEの軌跡を勉強するべき」(大前氏)と語った。

VoIPサービスをNTTコミュニケーションズと共同開発

 大前氏が今後巨大市場になる可能性が高いと期待するのは、公衆無線LANサービスやEラーニング、VoIPなどだ。大前氏は、VoIPが携帯電話と同様に世の中を変えていくと指摘し、現在NTTコミュニケーションズと共同でVoIPサービスを開発していることを明らかにした。これは住所録をプラットフォームにしたサービスで、IP電話とブラウザやメールを連携させる仕組みだという。Outlookやサイボウズなどの住所録とデータを連動させるほか、電話やFAXの履歴をブラウザから見られたり、電話会議の内容をサーバ上で保管できるなど、様々な機能を盛り込んだものになる見込みだと明かした。

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