12月11〜12日に経営者向け招待制イベント「Infinity Ventures Summit(IVS)2012 Fall Kyoto」が開催されている。初日1つめのセッションとなる「世界に打ち勝つ会社・サービスの創り方」では、NHN Japan代表取締役社長の森川亮氏、ディー・エヌ・エー(DeNA)代表取締役社長の守安功氏、gumi代表取締役社長の國光宏尚氏がパネリストとして、KLab代表取締役社長の真田哲弥氏がモデレーターとして登壇。NHN Japanの「LINE」やDeNAの「comm」といったコミュニケーションサービスの現状、そしてソーシャルゲームでの世界展開などについて議論が交わされた。
すでにグローバルで8000万ユーザー以上に成長したLINE。以前から掲げてきた2012年内1億ユーザーの達成についても森川氏は「まだ可能性がある。ギリギリまで頑張っている」と語る。
そんなLINEは2012年夏にプラットフォーム化を掲げ、直近にはそのプラットフォームの一翼を担うゲームサービス「LINE GAME」の展開を開始。パズルゲーム「LINE POP」では、公開から1週間で1000万ダウンロードを達成。売り上げやユニークユーザーも好調に伸びているという。
法人向けの新アカウントサービス「LINE@」も開始した同社だが、森川氏はLINEで「ライフスタイルのプラットフォーム」を最終的に目指すという。
「これまではポータルの位置付けを狙っていたが、スマートフォンではコミュニティのハブが重要になる」(森川)。ハブとなるLINE自体にゲームやコンテンツを載せるのではなく、独立したアプリやサービスで提供してLINEがそのすべてをつないでいく。アプリだけでなく、オフラインで展開するサービスなどもつなぐというというのが、LINEの将来像だという。
「ゲームのマネタイズも見えてきた」と語る森川氏。LINE POPの売り上げについて具体的な数字は公表しなかったものの、「アクティブユーザーの数は圧倒的に多い。バランス調整で売り上げは上がると思うが、深く掘っていくのは2013年以降」(森川氏)とした。
台湾やタイで人気を誇り、他のアジア各国や南米などのスペイン語圏でも勢いを伸ばしているというLINE。マーケティングに関しては、当初は無理に伸ばすような施策をとらず、成長のスピードが出てきたタイミングで積極的に行っているという。
LINEのマネタイズの1つはスタンプの販売だ。真田氏がスタンプについて「日本の『カワイイ』文化、絵文字などモバイルの文脈の上に発展してきたように見える。海外でも受け入れられているのか」と森川氏に尋ねると、森川氏は「アジアはコミュニケーションの密度が高い。コミュニケーションの密度が高まると買ってくれる感じだ。スペイン語圏もそうだが、コミュニケーションが好きな国にはニーズがある」と回答した。
LINEのスタンプはグローバルで価格も共通化しており、地域によっては(物価と比較して)高いというケースもあるが、それでも受け入れられているのだという。
コミュニケーションサービスとして後発となるcomm。守安氏は、サービスの提供を検討したのが1年半以上前だったと明かした。「韓国でカカオトークが出てきたときに検討したが、これが韓国特有(の流行)か分からなかった。またMobageでゲームに注力して、リソースを割けなかった」(守安氏)
すでにコミュニケーションサービスにおいて、LINEやカカオトークなど、地域ごとの「勝者」とも呼ぶべきサービスが登場してきている。守安氏はcommが通話品質や実名制での差別化を図るとしたが、真田氏からグローバルでのシェアについて尋ねられると「現実的には日本でどう追い上げられるか。あとはアジア圏でLINEやWeChat、カカオトークなどの隙間を縫ってやっていく。どこかの国や地域で勝てればと思ってやっている」(守安氏)と語った。
状況の異なる森川氏と守安氏だが、いずれもコミュニティサービスのグローバルでの利用者はさらに増えると見込んでいるという。「TwitterやFacebookに関しても、米国だけで流行っているとき、『日本でこんなモノを使うか』という反応だった。ユニバーサルに流行するものは国民性を問わない」(守安氏)。「無料通話は確実にグローバルでニーズがある。メッセンジャーにしてもMSN Messengerが未だに使われている。スマートフォンでのニーズもある」(森川氏)
すでにゲームプラットフォームとしても機能しつつあるLINE、一方でサービスを開始したばかりのcomm。それぞれプラットフォームのオープン化などをどう考えているのだろうか。守安氏は将来的なMobageへの誘導やcomm内での独自ゲームの提供、DeNAの各種サービスとの連携などの可能性を示唆。だがまずは「ユーザーに使ってもらって広げるところ」(守安氏)とした。
LINEではすでに他社のゲームも提供されているが、「(自社製、サードパーティー製という点に)特にこだわっていない。Appleとの関係やグループの関係もあるので、まずは1つずつちゃんと出して実績を出す」(森川氏)という。それよりも、いかにLINEのプラットフォームを生かしたサービスを提供するかという点に注力しているのだという。
commは実名制をうたっており、LINEもニックネームを認めながらも、「クローズなコミュニケーションで、ニックネームもほぼ実名として使っているケースが多い」(森川氏)という。いずれにしても、これまでのソーシャルゲームプラットフォームのソーシャルグラフよりは、より実名、よりリアルな友人で組織される「リアルグラフ」を持っていると言える。このリアルグラフ上でのゲームというのは果たして流行するのだろうか。
森川氏はLINE POPを例に、リアルグラフでのゲームの可能性を語る。「LINE POPは毎週日曜日までで成績がリセットされる。そのため、リセットのタイミングでみんなが一斉に競いだしている。身近な人と競うのが楽しいということは証明された」(森川氏)
ここで國光氏が、「コアなゲームであるほど『ゲーム友達』しか遊ばない。LINE POPは売り上げも好調だが、落ちるのも早いのではないか」と質問を投げた。
これに対して森川氏は、「ゲームの歴史的にはいずれカジュアルなモノからコアなものになる」と語る。加えてまずパズルゲームを提供した理由について、「パズルゲームはルールの説明がいらないところ」(森川氏)と語った。
例えばオセロのようなカジュアルゲームでも戦略性の高いゲームであれば、努力してノウハウのある人が上手なのは明らかだ。だが、パズルであれば運の要素と努力でうまくなるという要素のバランスがいいので、初心者でもチャレンジしたくなるところがある。「習慣ができる、という意味では重要」(森川氏)
守安氏も同様に、リアルグラフを使うのであれば、ある程度の人数のユーザーが楽しむことができるゲームでないといけないとして、カジュアルゲームのニーズがあると説明。「ゲーム特化のMobageと、comm(でのゲームの提供)は棲み分け可能」(守安氏)とした。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス