こうした経営陣の変更は、同社の原材料および製造事業だけでなく、創造的なサプライチェーンからも可能な限り摩擦を取り除こうとするCook氏の決意をはっきりと示している。
同氏はTyrangiel氏に対し、「政治的な駆け引きがあってはならない。私は政治を軽蔑している。会社に政治が入り込む余地はない。私のこれからの人生にそんなものの相手をしている時間的余裕はない。官僚主義もあってはならない。われわれは、政治も計略も存在せず、迅速かつ機敏に動くことのできる現状のAppleを必要としている」と述べた。
政治は「人から活力を奪ってしまう。活力を守るためなら、私はどんなことでもする」と同氏は結論付けた。
Cook氏はCEOに就任してからの16カ月間で、Appleの舵取りを見事にこなしてきた。しかし、Appleは激化する競争の中で、以前よりも迅速に革新を行うことができるのだろうか、あるいは「iPhone」や「iPad」のような劇的な革新を再現することができるのだろうか、と疑問を呈する者もいる。Cook氏は、分裂や政治的な駆け引きによってAppleの使命が妨げられるのを防ぐことができると考えており、Tyrangiel氏に次のように説明した。
テーブルの席に着いているすべての人は、かなり前からそこにいる。そして、彼らはさまざまなサイクルを経験してきた。したがって、彼らは成熟しているが、それと同時に大胆さも持ち合わせている。彼らは今でも背水の陣を敷く覚悟ができている。これは素晴らしいことである。なぜなら、ほかにそのような会社はもはや存在しないからだ。私が言いたいのは、Appleが2012年に成し遂げたのと同じことをできる会社はほかに1つもない、ということだ。考えてみてほしい。われわれはiPhoneの大部分を1日のうちに変えた。小さな変更をいくつか加えただけではなかった。iPadでは、全ラインアップを1日で変えた。われわれはコンシューマーエレクトロニクスの歴史上、最も成功した製品であるiPadを1日ですべて変更し、「iPad mini」と第4世代iPadを発表した。こんなことをしている企業がほかにあるだろうか。当社の売上高の80%は、60日前には存在さえしなかった製品によってもたらされている。こんな企業がほかにあるだろうか。
世界一の製品を作って人々の生活を豊かなものとし、なおかつ利益を最大化するという「より高邁な理想」に対するCook氏の忠誠は、ほかの会社やそのCEOが設定する目標と本質的に異なるわけではない。しかしこの数年間、Appleはほかのどの会社よりもうまくそれを実行できることを証明してきた。そしてCook氏はそうした努力に十分見合う報酬を受け取っている。ここ5年間の同氏の平均年俸額は9500万ドルと見られている。
Appleの従業員はかつて、Jobs氏は時に鼻持ちならないこともあるが、最高の仕事ができるように従業員を鼓舞してくれる、と語っていた。Cook氏は、これまでより調和と協力を奨励する職場環境がやがて、Jobs氏の手法と同様の結果をもたらすことを期待している。
Bloomberg Businessweekの「Tim Cook's Freshman Year: The Apple CEO Speaks(Tim Cook氏の1年目:AppleのCEOが語る)」記事全文に目を通してほしい。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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