この連載も最終回です。最後に、管理者が目標管理・人事評価を部下育成に結びつける着眼点を伝えます。
評価結果とその理由を部下に直接伝える方法が評価のフィードバック面接です。面接実施が本来のフィードバックであり、「組合員が評価に納得できるよう、評価点と評価根拠を伝えるべき」と積極的に採用している企業もあります。
一方「うちの管理者の指導力では、フィードバックは無理だ」「一次評価者が評価調整前に評価点を伝えるのは、誤解を招く。フィードバックはやるべきではない」とさまざまな事情で面接を採用しない企業もあります。
評価点を伝達するタイミングやフィードバック面接の採否などの各社の事情はさておき、どの企業でも、どの管理者でも、必要となる評価のフィードバックがあります。「育成」を目的にした評価のフィードバックです。
育成を目的にした評価のフィードバックにより、管理者が働きぶりを評価している部下は、次の成長に向けて能力アップの課題を見出すことができます。また、評価が低いと感じ、落ち込んでいる部下には、スキルアップの道筋を明確に示すことで、やる気を引き出すことができるでしょう。「評価が低いことで恨まれないか」と面接をためらう管理者でも、育成を主目的にしたフィードバックであれば、次期に向けて復活の機会を与えることが可能です。
育成を目的にしたフィードバックの進め方をご紹介しましょう。今期の目標達成度や働きぶりを振り返り「重点能力課題」「能力開発方法」「上司の支援」「動機づけの言葉」をフィードバックします。
(1)重点能力課題
部下は、たいていの場合は自身の強みや弱みに気づいています。ところが、何を優先的に取り組めばいいのか、順位付けができません。やるべきことはたくさんあるものの、さらなる成長に向けて何から手をつけていいのか、部下自身が客観視するのは難しいものです。そこで、管理者が広い視野から優先すべき能力課題を示す必要があります。
(2)能力開発方法
部下は、鍛えるべき能力に気づけても、その能力を身に付ける方法が分かるとは限りません。管理者は自身の経験や自社の教育体系から、部下に役立つセミナーや書籍等を紹介して、能力開発の方法を教えてあげましょう。
(3)上司の支援
部下が自力で鍛えていくことが理想ですが、発展途上にある部下には管理者の指導・支援が欠かせません。週1回、あるいは月1回のアドバイスなど上司による支援を部下と約束しましょう。
(4)動機づけの言葉
締めくくりの常套句です。励まし、動機づけをしてあげましょう。以上が育成フィードバックといわれるものです。人事評価のフィードバックにかかわらずに実施できます。育成フィードバックのコメントの例を図にまとめていますので、参考にしてください。
これまで目標管理・人事評価制度について理解を深めていただくとともに、実践の場で活用できるツールをたくさん紹介してきました。世の中には数多くのフレームワークやビジネスツールがありますが、意外にもツールを実際に活用する人はあまり多くない印象があります。ツールは使ってこそ意味がありますので、ぜひ試してみてください。きっと、忙しくてマネジメント活動に充てる時間が少ない中で、「要領よく」進められるでしょう。
金津健治
産業能率大学総合研究所
主席研究員
1954年生まれ。慶應大法学部卒。金融機関、コンサルティングファーム勤務を経て、87年学校法人産業能率大学入職。メーカーからサービス業まで、幅広い業種で、目標管理制度・人事評価制度の導入や定着化のコンサルティング、研修分野で活動。管理職研修や被評価者研修などの実績も多数。著書に「七つの能力-管理職前に身に付ける技法42」(日本経団連出版)、「目標管理の手引き」(日本経済新聞出版社)、「管理職のための七つの道具術」(プレジデント社)など。
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