上司の評価に納得できない部下もいます。一方の上司の立場の管理者には、部下の自己評価が甘く見えることがあります。こうした評価のギャップを生じさせないために、注目すべきは期首に設定する目標です。
目標があいまいであれば、目標の解釈に幅が広がり、自ずと部下と上司の目標の解釈にギャップが生じてしまい、評価への納得度にも影響するのです。「目標のあいまいさが評価のあいまいさにつながる」と言っても過言ではありません。そこで今回は、目標を明確に設定するスキルを紹介します。
目標の表し方についてポイントを知るだけで、目標を明確に設定できるようになります。目標を明確化する3つのポイントを示します。図を参照しながら本文を読んでください。
まず目標を目標項目(何を)、達成基準(どのくらい)に分けます。「目標項目(何を)」が目標の方向性を示し、「達成基準(どのくらい)」が目標レベルを示します。例えば営業担当者なら目標項目に「新規開拓強化」を掲げ、達成基準に「4件以上受注する」と表すのです。
引き続き図表1を参照してください。次に、おさえておきたいのは、達成基準のタイプです。「4件以上受注する」という達成基準は数値で表しています。これを「数値基準」と呼びます。このような数値化が難しい目標の場合には、「スケジュール基準(期限までにやるべきこと)」か「状態基準(期限までにめざす状態)」で表しましょう。
例えば、目標項目が「業務の標準化」なら、「年度内に業務マニュアルを作成する」というように、スケジュール基準の「いつまでに○○をする」と表します。これで目指す成果はハッキリします。
もう1つの「状態基準」は「社内問い合わせ対応力向上」を目標項目に掲げた例で紹介します。その達成基準を「社内からの問い合わせにその場で回答できるようになる」と目指す望ましい状態を表すのです。状態基準の多くは「自己啓発目標」や「部下指導育成目標」で表されます。
「仕事と目標の違いは何か」と問われたら、皆さんはどう答えるでしょうか。仕事を目標に転換することで、目標をスッキリとすることも可能です。
図表2と事例を基に考えてみましょう。
住民税の処理業務は、仕事そのものです。現在、「上司の指導があれば、住民税の処理ができる」レベルとします(これが現状レベルに該当)。その場合、達成基準(目標レベル)を「一人で処理ができる」、あるいは「会社の住民税の問い合わせにすべて一人で答えられる」と示すのです。このレベルを目指すことを目標項目である「住民税処理能力の向上」として示します。このように、目標は、目指す成果があり、レベルアップを図るものなのです。
今回は以上です。図表のシートは表計算ソフトなどを使ってぜひ活用してみてください。きっと、目標が明確になり、人事評価の際にも部下とのズレが少なくなると思います。
金津健治
産業能率大学総合研究所
主席研究員
1954年生まれ。慶應大法学部卒。金融機関、コンサルティングファーム勤務を経て、87年学校法人産業能率大学入職。メーカーからサービス業まで、幅広い業種で、目標管理制度・人事評価制度の導入や定着化のコンサルティング、研修分野で活動。管理職研修や被評価者研修などの実績も多数。著書に「七つの能力-管理職前に身に付ける技法42」(日本経団連出版)、「目標管理の手引き」(日本経済新聞出版社)、「管理職のための七つの道具術」(プレジデント社)など。
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