KDDIと子会社のmedibaは10月29日、スマートフォンアドネットワークサービス「mediba ad」で、スマートフォン向けのターゲティング広告配信を12月上旬から開始すると発表した。ユーザーの年齢や性別などに基づく「統計パターン推奨型広告」と、広告閲覧状況に基づく「閲覧パターン推奨型広告」の2種類を展開する。同サービスの開始にあたり、KDDIはプライバシー保護について十分に配慮したことを強調している。
統計パターン推奨型広告では、ユーザーがau IDでログインした状態でネットに接続した場合に、KDDIのウェブサイトや、ポータル、バナー広告枠などに、ユーザーの属性や嗜好に沿った広告を配信する。これにより、広告主が訴求したい情報とユーザーの趣味嗜好とのミスマッチを解消できるとしている。
広告配信にあたり、KDDIは対象者の基本情報(「性別」「年代」「居住地」)や、auサービス(「うたパス」「ビデオパス」「auスマートパス」)の情報を収集するが、ユーザーは個別の項目ごとに情報提供の可否を設定することが可能。一括ですべての情報提供を拒否することもできる。
「顧客にとってみれば自身の情報を使われるのには不安感がともなう。これらの情報は、我々が顧客からお預かりしている情報なので、どの情報をどのように使っているのかを開示していく。また当然、(情報開示を)止めたいという顧客もいると思うので、そういう方々にはご自身で利用可否をコントロールできるように配慮している」(KDDI 新規ビジネス推進本部 ビジネス統括部 戦略マーケティンググループリーダー 課長の隅野景氏)
統計パターン推奨型広告は、12月上旬からiOSとAndroid向けのウェブブラウザ、またAndroidアプリ内で配信される。iOSアプリについては、プライバシーに配慮した上での情報取得の技術を開発中であるため、現時点では検討中としている。
閲覧パターン推奨型広告では、ユーザーの過去の広告閲覧状況などに基づいて趣味嗜好に合った広告を表示する。従来のスマートフォンアプリ向けのターゲティング広告では、広告配信のために端末識別子(IMEI)や電話番号IDといった端末固有のグローバルIDが収集されており、第3者などに提供されてしまう脅威があった。
そこで、KDDI研究所が開発した新たなプライバシー保護技術を採用。Android端末内のSDカードやiOS端末のカスタムペーストボード内に暗号化された共有フォルダを作成し、その中にUUID(いわゆるサードパーティCookieの役割)を書き込むことで、グローバルIDにアクセスすることなく広告を配信する。UUIDは消去することも可能だ。
すでにAndroidのウェブブラウザ向けには提供されており、AndroidアプリとiOSアプリ内での配信は12月上旬に開始する。iOSのウェブブラウザについては、iOSはサードパーティCookieをデフォルトで受け入れない仕様となっているため、広告商材を投入してもインプレッションを期待しづらいという理由から今後の動向をみて検討するとしている。
同社ではこのプライバシー保護技術を「日本初の技術」としており、他社への技術提供などについては「もし使いたいという事業者がいれば検討したい。KDDIが開発した技術ではあるが、これが普及することでモバイル広告の信頼が上がり、市場が大きくなるのであれば我々にもメリットがある」(隅野氏)としている。
ところで、KDDIは1月に「au one Market」アプリをバージョンアップした際に、Android端末の通知バーに広告を表示する機能を搭載してユーザーから非難を浴び、後日この機能を取り下げている。
隅野氏はこの件に触れ「通知バーなどについては反省している。やはり事業者側の考えだけでやっていると顧客との認識のズレは出てくると思っている。今回はその点を十分に配慮した。反省すべきところは反省し、ビジネスとしてやる際には、きちんと情報を開示した上で展開させていただきたい」と説明した。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果