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電子書籍ビジネスの真相

Kindleが抱える3つの不安 - (page 2)

林 智彦(朝日新聞社デジタル本部)2012年10月11日 11時00分
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不安その1 日本向けに販売されるのはどの機種?

 第一の不安は「どの機種が日本向けに販売されるのか」という点。Kindleの現時点でのラインアップは前ページ表1のとおり。このうち、どれが日本市場向けに提供されるのかが気になる。

 想定されるシナリオは2つある。1つはこれまでにKindleのサービスが展開された、英・仏・独・伊と同様に、米国市場で提供されているのと同じ機種が販売される、という可能性。もう1つは、日本語という(欧米諸国に比べれば)特殊な言語を扱う必要上、販売する機種を絞ってくる、という可能性だ。

 全機種を投入するならばいいが、絞ってくる場合は「どれに絞るのか」が課題となる。書籍の市場というのは各国の文化を反映して国によってそれぞれに特色を持つが、日本の場合、他国との違いが特に際立っている。コミックの存在だ。

 日本で刊行される出版物(書籍+雑誌)のうち、販売額で21.6%、部数では35.8%がコミックである(「2012年出版指標年報」)。 そのコミックを快適に読む端末としては、電子ペーパーのKindle端末はどれもやや力不足に思える。電子ペーパーはこの数年間少しずつ進化してきたが、それでも画像からなるページを、テンポよくめくって読むコミックの読書に適しているとまでは言えない。この点は液晶ディスプレイのKindle Fireに分がある。

 課題はディスプレイだけではない。Kindleの他の電子書籍サービスと比べた特徴として、「エンド・トゥー・エンド・サービス」志向であることが挙げられる。

 これは自らのサービスを、個々の機能の組み合わせではなく、できる限り1つにまとめて提供しようとするポリシーを指す。たとえば、電子書籍を買うときに、IDはAという事業者、課金はBという事業者、ビューワはCという事業者、コンテンツはDという事業者から提供を受けなければ買えないとしたら、それは利用者にとって煩雑に過ぎるだろう。

 PCの時代には、このようなコンテンツや利用の仕方が一般的だったが、PCと比べて入力や操作に制限のあるモバイルデバイスにおいては、複雑な入力や設定が必要なサービスは利用者に支持されない。そのためモバイルサービスおよび端末の提供事業者(プラットフォーマー)は、登録や認証、設定などをなるべく簡単にするため、これらをまとめて、一貫した形で(エンド・トゥー・エンドで)提供するようになる。

 エンド・トゥー・エンド・サービスは、これまで個々の機能を提供していた事業者から見ればプラットフォーマーが外部のプレイヤーを排除したクローズドなシステムを作ろうとしているように見えるし、コンテンツやサービスのサプライチェーンの上流や下流に土足で踏み入ろうとしているように見える。だが、プラットフォーマーによる統一的なサービス体験の提供が、利用者の利益にもなっていることも否定できない。

 ともあれ、AmazonのKindleは「書籍のiPod」を目指したと言われる通り、AppleのiOSエコシステムと同様、この意味で極めてクローズドなシステムになっている。

 その一つの表れが外部ストレージだ。「Kindle」シリーズは初代を除いて、外部ストレージに対応していない。一方、KoboのKobo TouchやSony ReaderはmicroSDスロットが用意されており、DRM(著作権管理)の施されていないファイルを自由に出し入れしたりすることもできる。

 Kindleはユーザー体験をAmazonの厳密なコントロールのもとに置くため、外部の事業者のコンテンツやサービスが、基本的に介在できない仕組みになっているのだ。

 FictionWiseなど、Kindleのドキュメントメール送信機能を使ってKindleエコシステムの外からKindle端末を利用するサービスもあるが、ごく一部である。

外部メモリカードが使えないことが足かせに?

 ともあれ、Kindleは外部メモリカードが使えない。このことが、日本市場では大きな足かせとなる可能性がある。コミックのコンテンツファイルは、文字のものと比べるとデータ量が膨大だからだ。

 ソニーの資料によると、2GBの内部ストレージを備える「Reader(PRS-T2)」には、文字ものの書籍だと最大約1300冊保存できるが、コミックだと約33冊しか入らないという。

 電子ペーパー版Kindleの内蔵ストレージは、Readerと同じく2GBだ。ということは、記憶できる書籍も同程度だと推察できる。外部ストレージに対応しているReaderやKobo Touchなら、足りなければmicroSDカードを差せばいい。だが、Kindleではそうはいかない。「書棚を持ち歩ける」ことが売りである電子書籍端末で、30冊そこそこというのは十分な容量とは言えない。

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