グーグルは10月4日、動画共有サイト「YouTube」で提供している著作権管理システム「コンテンツ ID」の機能を強化したことを発表した。同日には都内で記者説明会が開かれ、ビデオ会議で参加したYouTube プロダクトマネージャーのDavid Rosenstein氏によって、同システムの利用状況や改善点などが説明された。
コンテンツ IDは、YouTubeが2007年より導入している著作権管理システム。コンテンツ権利者がYouTubeのバックエンド上に動画を登録し、同一の動画をユーザーが投稿できないように設定することで該当の動画をブロックできる。
現在、YouTubeには1分間に約72時間分の動画がアップロードされており、この5年間で大企業や個人のクリエイターなどを含めると3000以上のパートナーが50万以上の参照ファイルをコンテンツ IDのシステムにアップロードし、各自のコンテンツを管理している。YouTubeでは、コンテンツ IDを使って毎日約100年分の動画のスキャニングを行っているという。
Rosenstein氏は「YouTubeでは、著作権管理に対して非常に強いコミットメントをしてきた。具体的には、3000万ドル以上の投資をして開発の技術に関わってきた」と語る。
今回のアップデートでは、このコンテンツ IDに、(1)動画のマッチング機能の向上、(2)新たな異議申し立てプロセス、(3)無効な申し立てを発見するための改善、という3つの改良が加えられた。
コンテンツ IDシステムでは、投稿されたすべての動画の中から、パートナーのコンテンツを認識する「マッチング技術」を重要な機能と位置づけており、今回マッチングのアルゴリズムと参照ファイルのライブラリを改良したことで、より正確にマッチングできるようになった。
また、新たな異議申し立てのプロセスも公開された。これまで、ユーザーが権利者から著作権についての申し立てを受けた際、その申し立てが有効ではないことが明らかな場合は、申し立てが無効であると主張することができた。しかし、もし権利者がそのユーザーの反論を拒否した場合、そのユーザーには収益化など特定の申し立てに異議を唱えることができなかった。
そこで新プロセスでは、ユーザーが権利者に対して「申し立てが無効」と主張した場合に、たとえ権利者がユーザーの主張を否定しても、ユーザーは異議申し立てを申請できるようになった。具体的には、ユーザーの異議申し立てに対し、権利者は申し立てを取りやめるか、正式なDMCA(デジタルミレニアム著作権法)に基づいた通知を提出するかを選ばなければいけなくなる。
またコンテンツ権利者は、日々同システムに膨大な数の参照ファイルをアップロードしており、時にはミスが起きることもある。「フタを空けてみると、オーナーが必ずしも権利を所有していないということが多々ある。もしそのような、著作権が無効である状況になってしまった場合、オーナーにとってもYouTubeにとっても良いことではない」(Rosenstein氏)。
そのためYouTubeでは、無効な可能性がある申し立てを発見するアルゴリズムを改善。コンテンツ権利者の管理画面に無効な申し立てが表示されるようになる。これにより、本来コンテンツ権利者が所有していないコンテンツが誤って参照ファイルとしてアップロードされた時に、起こりうる異議申し立てを未然に防ぐことが可能になる。また、コンテンツ IDを誤って利用してしまうケースを最小限に抑えられるとしている。
Rosenstein氏は、「我々としては今回のような改良を加えることで、今後も著作権者の権利をきちんと守る形で、YouTubeにおける投稿の世界をさらに発展させていきたい。それがゆくゆくは著作権者の利益にもつながり、一般ユーザーにとってYouTubeは本当に面白い場所だと思ってもらえると信じている」と語り、引き続きコンテンツ権利者とユーザーが動画をアップロードしやすい環境を整えていくとした。
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