学生が分析した「ヤフトピに足りないもの」

 ヤフーの運営する国内最大級のニュースメディア「Yahoo!ニュース」。ネットユーザーなら恐らく誰もが利用したことのあるニュース媒体だろう。そのYahoo!ニュースの中でも特に大きな影響力を持つのが、Yahoo! JAPANのトップページで注目ニュース8本を13文字の見出しとともに紹介する「Yahoo!トピックス」だ。

 ヤフーは今夏、このYahoo!トピックス(ヤフトピ)において初のインターンシップを実施した。ジャーナリストを目指す学生にヤフトピの姿勢を理解してもらうとともに、ヤフーとしてもジャーナリズムを専行する学生ならではの視点や知見を得たいという狙いがあるという。

 インターンシップに参加したのは、早稲田大学大学院 政治学研究科のジャーナリズムコースに在籍する3名の学生たち。8月27日~9月7日の約2週間にわたり、実際に本番反映されるトピックスを作成したり、自身の興味・専門分野に関するトピックスの分析などを行った。

 そして、最終日となる9月7日に成果発表会を開催。トピックスの分析結果をもとに、それぞれが考えるヤフトピの課題や、それに対する改善案などを提案した。

ヤフトピに必要なのは「議論の場」

 まず、1人目の藤井さんが発表したのが「震災関連のトピックス傾向分析」。“被災地への注意関心が薄れてしまっているのではないか”という仮説のもと、ヤフトピに取り上げられた東日本大震災に関連する記事のページビュー(PV)や記事内容などを比較し、どのような情報が読まれる傾向にあるのかを分析した。

  • 藤井さん

 その結果、読者は基本的に自身が住んでいる地域や、実際に自身の生活に影響のあるニュース以外にはあまり関心がないこと、現在は感動系の記事よりも復興計画の記事などが、比較的読まれる傾向にあることなどがわかったという。

 また、ヤフトピが取り上げる被災地の記事は、6割近くが「福島」に関連した記事であることや、その中でもほとんどが「原発」に関連した記事であることがわかったという。この結果について、藤井さんは「取り上げるトピックに偏りがあり、福島=原発というマイナスイメージがつけられてしまっている。ここは見直すべき問題点」と指摘する。

 さらに、被災地にはPCや携帯電話を持っていない高齢者も多く、本当に必要としている人に情報が届いていない可能性があるとし、それぞれのターゲットに対して適切な情報を発信していくことが重要だと語る。

  • 分析の対象

  • 「原発」に関連した記事が過半数

  • 読まれる記事の傾向

 今後の取り組みとしては、ヤフトピ編集部が社説を書いて載せてはどうかと提案。ヤフトピ編集者の意見を掲載することで、よりユーザー同士の議論が深まると説明し、編集者の意見を発表する場が今後、ウェブメディアにも必要なのではないかと訴えた。

ヤフトピは企業PRに加担してる?

 2人目の原田さんが発表したのが「PR効果を生む可能性のある記事を取り扱うことについて」というテーマの分析結果。PR効果が生まれる可能性のある記事をヤフトピに取り上げることで、その商品などの注目度が上がり購買行動につながるなど、結果的に企業のPRに加担してしまっているのではないか、という仮説について検証するものだ。

  • 原田さん

 ここでは比較的、商品名や企業名が多く現れるエンタメとコンピュータトピックスに焦点を当てて、PVやリアルタイム検索の推移、ECサイトにおける人気ランキングの変化などを分析。その結果、ヤフトピの記事を閲覧したことが直接的な購買行動につながるという目立った影響は見られなかったという。ただし、ヤフトピに取り上げられたことで影響のあった記事も一部あり、その点では結果的にPRに加担している場合もあったとしている。

 一方で課題点として挙げられたのが、いかに情報の信頼性を担保するかということ。ヤフトピでは過去に「離活」がブームになっているという新聞社の記事を取り上げたが、それをきっかけに多くのメディアが追従して離活を紹介するなど大きな波及効果があった。しかし、実際に調査してみると、離婚コンサルタントがマーケティング会社に依頼して、あたかも離活が流行っているかのように、マスコミに仕掛けたものだったという。

 これらの結果から、原田さんは「企業や発表者に意図があったのか」「報道する側にどういう思いがあったのか」「どうユーザーに伝わったのか」の3点にギャップがない場合は企業の宣伝に加担していないとの見解を示す。一方で、客観的な裏付けがない状態で宣伝意図の含まれた記事をヤフトピにピックアップし、世間や他メディアに影響を与えてしまう場合は、PRに加担しているといえると結論づけた。

  • エンタメとコンピュータトピックスを分析

  • 記事内における編集者名の記載を提案

  • 編集者名を記載することによる効果

 これらを踏まえて提案するのが、自身が選んだ記事に責任を持つために、記事内に裏付けデータとピックアップした編集者名を記載するというもの。記事を解析され癒着につながるという懸念もあるが、記事の信頼性を保証できることや固定ファンがつく可能性があるなど、長期的に考えた場合のメリットも大きいと説明した。

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