ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)のLinkedIn(リンクトイン)は、オンライン履歴書といえるもので、米国では就職活動のツールとして不可欠な存在だ。2011年に日本語版がデビューしたが、日本でも、外資系への転職には、不可欠になりつつあるという。
企業の採用担当者が適正のある候補者を探せると同時に、求職者が希望する企業の採用担当者と直にコンタクトを取ることも可能である。
ソーシャルメディアが脚光を浴びるようになってから、情報共有機能などのソーシャル性が加えられ、世界最大のプロフェッショナル(知的専門職向け)SNSに成長した。利用者は全世界200カ国以上1億6000万人に及び、そのうち60%以上が米国外の在住である。米国に次いで利用者が多いのは、インドの1500万人だ。大学生や新卒者の利用者は、2000万人以上にのぼり、もっとも伸び率の高い利用者層だという。
利用者の75%以上が大卒で、38%が大学院卒というプロフェッショナルらのネットワーキングの場であり、利用者の細かな学歴、職歴が掲載されている点が、他のSNSと大きく異なる。
日本では、ある出版社が同社から出版した「著者の紹介状あるいは社員の紹介があること」を採用条件にしたとして物議を醸していたが、米国では求人の8割以上が公募されず、人脈を通じて口コミで埋められるといわれる。つまり、その“社内や業界の口コミの輪”に入っていなければ求人情報が得られないということだ。
そのため、業界団体や交流会に参加して人脈を作ることが必須となる。夫の転勤で転職の多い在米日本人女性は、職探しのため引っ越すとすぐに、新天地で交流会に加入しては委員などを務めていた。こうして、他の会員など、会を通じて知り合った人から採用の情報を内々で得て、応募するわけだ。彼女は、職はすべてこうして口コミで見つけてきた。このように、積極的にコネ(人脈)を作って職探しをするのも、“実力”のうちなのである。
LinkedInは、こうした就活に役立つ人脈作りをオンラインで可能にしたといえる。日本であれば、就活の一環として行うOB・OG訪問を行ったりするが、OB・OGとの人脈をLinkedInで築けるということだ。
たとえば、LinkedInで、すでに何百人というネットワークを築いている人が失業し、「失業しました」とLinkedInでコメントを掲載したところ、1日も経たないうちに、ネットワーク内の3人からメールで求人情報が届き、1週間で再就職したというような話が、米国ではいくらでもある。ネットワークは、失業してから、転職の必要が出てからではなく、職場に在籍中に日ごろから築いておくべきであることは言うまでもない。
また、日々、人材を探している企業採用担当者やヘッドハンターは、とくに不景気で、就職難の時代には、求人サイトなどに求人募集を出すと、資格を満たさない求職者を含め、膨大な応募が寄せられることになる。それよりも、日ごろから築いたネットワークを通じ、適格者を紹介してもらう方が効率がいい。社員の口コミで採用した方が成功率が高いという調査結果もある。
さらに、LinkedInのアンケート調査でも、企業は就活中の人よりも、そうでない人を求めるという結果が出ているように、転職を希望している人には、何らかの理由で現状に不満のある人が多いわけで、現状に不満のない優秀な人材は転職市場には顕在化しない傾向がある。そうした人材を探し出すためにも、ヘッドハンターらは日ごろからLinkedInでネットワーク活動に勤しんでいるのだ。
LinkedInには、”Jobs(求人)”機能もあり、求人情報が掲載されている。ここでの求人に対しては、LinkedInから、そのまま履歴書をアップロードして応募することができる。
Jobsは他のオンライン求人サイトと同じようなものだが、LinkedInを使えば、たとえば、職に応募した後、LinkedInでつながっている応募先のコンタクトに、「今回、○○の職に応募しました。よろしくお願いします」と連絡を入れるといった利用方法がある。普通に履歴書を送付するだけよりも、「社内の○○さんの知り合い」「○○さんの推薦」である方が就職に有利なのは、言うまでもない。
こうして、就活のために、日ごろから人脈作りに励む必要があるわけだが、LinkedInには、業界交流会のオンライン版ともいえる「LinkedInグループ」という機能がある。グループメンバーには、自分のネットワーク外の人でも直接メッセージを送ることができる。また、メンバーらの質問に答えることによって、自らの知識や専門性やリーダーシップを披露し、自己PRにつなげることもできる。
グループ機能は、企業の営業・マーケティング活動にも利用でき、特にB2B企業にとって有効な機能である。ターゲットマーケティングが可能で、グループを通じて、セミナーやその他イベントを告知したり、やはりグループで知識や専門性を発揮し、売り込むにつなげられる。
さらにLinkedInには、企業が自社の概要などを掲載できる企業ページもあり、200万社以上が企業ページを掲載している。
筆者の新刊「ビジネスに対応 英語でソーシャルメディア」(ジャパンタイムズ)では、LinkedInの英語でのプロフィールの書き方、職場で使えるSNS向け英語表現などを紹介している。
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