ヤフーは7月30日、宮城県石巻市に新事務所「ヤフー石巻復興ベース」を開設した。同社の復興支援事業の拠点となる事務所で、コワーキングスペースとしても利用できるように、ミーティングスペースやネット環境、Ustreamの配信機材などを用意する。
なぜヤフーは事務所の開設先に石巻を選んだのか。また今後、どのような形で被災地の復興を支援していくのか。同日の開所式に出席したヤフー代表取締役社長の宮坂学氏に聞いた。
――ヤフーはこれまでにも、復興に向けたさまざまな取り組みを実施しています。
3.11(2011年3月11日)当時からいろいろな取り組みを行なってきましたが、(宮坂氏が社長に就任する)新体制になるにあたってヤフーのミッションをもう一度みんなで再定義することにしました。そうなった時に、やはりヤフーは課題解決エンジンという存在だよねと。人々や社会や企業の課題を情報技術で解決する会社になろうと再定義しました。
基本的には皆さんの事業的な課題にサービスを提供して対価を得るというビジネスなのですが、社会的課題にも年に1~2つ集中して取り組もうと話をしていて、その中でやはり日本で最も大きな課題はこれだよねということで、復興に向けた取り組みを行ってきました。
――被災地に事務所を置くことになったきっかけは何でしょう。
ヤフーでは東京から「復興デパートメント」という事業で復興をお手伝いしていましたが、やはり東京にいるだけではわからないことが多すぎるということで、とにかく飛び込んでみようと考えていました。そんな時にいろいろとご縁がありまして、この場所(河北新報社のビル1階)を紹介いただきましたので、これはもうタイミングとしても素晴らしいということで、事務所を開設させていただくことになりました。
――数多くの被災地の中から石巻を選んだ理由は。
復興デパートメントというEC事業自体は東北6県全域で展開していますが、すべてに拠点を一気に置くというのは我々の体力的にもちょっと無理だろうということで、まずはどこかにフォーカスしていこうということになりました。
場所選びの際に産業規模の大きさとか被害の大きさを鑑みると、やはりヤフーとして、最初にフォーカスする場所は石巻ではないかと思いました。もしここで立ち上げた復興デパートメントがうまくいけば、それ自体は東北6県で展開してますから、必ずフィードバックできると思っています。
――石巻事務所を実際にご覧になってどう思いますか。
3カ月前に来た時はまだ工事中で、被災の爪痕が残るような状態だったのですが、2カ月ちょっとでこんなにピカピカに、雰囲気もほんとにセンスよくなっていて、関係各社には感謝したいです。
――コワーキングスペースとしても開放するそうですね。
どういう事務所にしようかという話になったのですが、やる以上はカッコいいのがいいよねと(笑)。それで雰囲気をオープンな感じにして、何かやりたいと思っている人が集うようなラボというか、語り場のような存在にしたかったのです。オフィスだとどうしても外の人を受け入れがたい感じになってしまうので、それをあえて欧州のカフェみたいな空間にしました。あとはローカルにこだわった作りにしたいので、家具とかもできるだけ地元のものを使うようにしています。
――石巻事務所では直近でどのようなことをしていく予定ですか。
まずは復興デパートメントがもっと上手くいくように、地元の人と協力しながら進めていこうと思っています。もうひとつは復興デパートメントの派生のような形で、復興弁当の販売も始めましたので、まずは復興デパートメントを中核として、そこからスピンアウトして事業としてやっていくものもいくつか作っていければと思います。
――ヤフーではボランティアではなく復興支援による事業化を目指すとしています。
まずは単月黒字という目標があって、その次に単年度黒字ですね。継続していくためにも最低限、黒字にはならないといけないと思っています。もしそれが達成できればもっと拡大しようという話もできますし、ひょっとすると他の企業が被災地でビジネスをするきっかけにもなりますので。当然それに対する批判もあると思いますが、やはりあえて収益にこだわって事業としてやりたいと思います。
ただし、市場のメカニズムの中で、やれることを追求していくことが会社としては重要だと思います。支援などはNPOの方とも一緒に行なっていきますが、あまり同じことをやると邪魔をするだけになってしまうので、我々はあくまでもその人たちに従ってやることで、市場として成長することを証明したいですね。
――黒字化の次の目標についてはいかがでしょうか。
次のフェーズはやはり人材のところでして、先日(7月27日~29日)も石巻工業高校でハッカソンという開発イベントをやりました。ITのいいところは東京にいなくてもできることなので、地元の人たちがさらにITを活かせるようにしていきたいです。
育成というとおこがましいですが、我々はITについては多少の知識とノウハウがありますので、地元の若いやる気のある方に、プログラミングのことを教えたり、ECについてレクチャーしたりということができるような状況になれはいいと思います。
――最後に復興支援に向けた意気込みをお願いします。
やはりインターネットの可能性を追求してみたいですね。ネットでこんなことができるんだとか、そんなことが実は可能性としてあったんだねということを、規模が小さくても見つけられると、それはきっと周りの方の役にも立つのではないでしょうか。
ネットの可能性はこれまでにもいくつか発見されてきたと思うのです。事業的に言うと、たとえばECだったり金融だったり。これと同じようにネットで何か地域のことが出来るんだ、ということをひとつ見つけられたらいいと思っています。
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