ヤフーが事務局を務めるプロジェクト「復興デパートメント」は7月12日、東北の食材を使った「復興弁当」の販売を開始した。第一弾として「石巻爆速復興弁当 金華ぎん」を販売する。
復興弁当には、東北地方のさまざまな食材が使われており、1個の販売につき50円が寄付金として復興支援に使われる。第一弾の「石巻爆速復興弁当 金華ぎん」は、石巻のブランド魚「金華ぎん」の塩焼きやコナゴを使ったピリカラ煮、わかめの佃煮などを盛り込んだ、石巻尽くしの弁当となっている。
弁当は完全予約制となっており、スターフェスティバルが運営する「ごちクル」を通じて販売する。価格は1箱950円で、発送は1万円からとなる。ヤフーでは、仕出し弁当や会議用にまとめて注文されることを想定している。
同日にはヤフー社内でも社員向けに復興弁当が販売され、用意された50個の弁当がわずか10分で完売するなど盛況だった。今後も毎週木曜日に復興弁当を販売するとしている。
ヤフーでは4月に復興支援を推進するための専門部署「復興支援室」を立ちあげており、5月には現地の課題を知ることを目的に、石巻市の住民との座談会なども実施している。さらに、7月下旬には宮城県石巻市に事務所を設置して、ヤフーの社員が5名ほど常駐するという。
復興デパートメントは、東日本大震災の被災地の農産物や海産物、伝統工芸品などの販売を通じて復興を目指すプロジェクトで、2011年12月にサービスを開始した。販売も順調で3月と5月にはサイト全体の月間取引高が1000万円を超えているという。
ヤフー副社長 最高執行責任者(COO)兼 メディアサービスカンパニー長の川邊健太郎氏は、ヤフーとして東日本大震災直後から放射線情報などさまざな情報を提供してきたとする一方で、現地には電気が通っていなかった地域もあることから「東北の人たちに本当の意味でお役に立てたかというと、なかなか胸をはって言えない」と振り返る。
その後、川邊氏は石巻事務所の開設にあたり5月に現地を視察し、実際に住民と対話する中で、復興弁当を作るヒントを得たそうだ。「(現地の)需要を作り出すことが今すぐ役に立てることだと対話をしてわかった。すぐに需要に結びつくものは何かと考えたら、それは日々起きていることだった。ヤフーでは4000人の社員が毎日のようにお弁当を食べている。(ヤフー社員が)石巻で採れたものを使った弁当を少なくとも1日1回消費していけば、それだけでもすぐにお役に立てると思った」(川邊氏)
ヤフーでは復興支援による事業化を目指しており、ボランティアでこれらの取り組みを行っている訳ではないと説明する。大手ネット事業者であるヤフーが率先して東北の課題解決に取り組み、ビジネスを成功させることで、他の企業が東北でビジネス展開するためのきっかけを作りたいという。
ヤフー代表取締役社長 最高経営責任者の宮坂学氏は、「いますぐ事業にならないかもしれないが、年に1個か2個のテーマを決めて、大きな社会の課題に対して、ITで何ができるかをチャレンジしていこうと思っている」とコメント。復興弁当については「出来るだけ早いタイミングで持続的にできるように事業として成立させたい」と意気込みを語った。
同社では今後も、復興デパートメントのインフラとITを活用した新たな流通モデルや、被災地の経済効果につながる情報発信の仕組みを構築することで、復興を支援していく。また、7月末にも短期間でサービスを開発するイベント「ハッカソン」などを現地で開催することで、東北のIT起業家の創出なども積極的に行っていきたいとした。
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