デジカメ「EXILIM」10周年の軌跡--それは“カメラ付きテレビ”から始まった(後編) - (page 3)

--その後、画素数競争から一歩引いて、御社では“スピード”を改めて訴求していくことになります。その中で登場した「EX-F1」は、ボディも大きく、画素数も600万画素と抑えられたモデルになっています。どのような市場変化を受けて、販売されたのでしょうか。

  • 初のハイスピードエンジン搭載モデル「EX-F1」

 EX-F1というモデルに関しては、市場の変化というよりも、技術的なシーズ(種)からきたもので、弊社デジタルカメラのロードマップでは、まだまだ技術は進化して、本当のデジタルカメラというのはまだ先にあるだろうと想定しています。その時のベースの技術は“ハイスピード”になる。ここでいう“ハイスピード”とは、超スローモーションだとか、高速連写といった簡単な言葉ではなく、“ハイスピード技術”を使ったデジタルカメラならではの機能。例えば、高速連写で撮影した写真データを合成して新しい写真を生み出すなどです。これは今販売中のモデルで利用している機能ですが、そういったもののベースとなる機種を作りたかったということです。

 私のデジタルカメラの理想は、“フルデジタル”なんです。構えて、ズームして、画角を決めてシャッターを切る。これは昔から変わらない“カメラの撮り方”ですが、それって多くの人にとってのベストではない。つまり、撮ることが楽しいという人もいるでしょうが、多くの人にとっては“撮ること”よりも“撮ったものを楽しみたい、残したい”はずなんです。

 だから、撮る時というのは、何も考えずに撮れているのがいい。失敗しないのがいいわけです。だから理想は、超広角レンズで単焦点、超高速連写(秒60コマ)でフル画素(1000万画素以上)、それで、ずーっと撮り続ける。動画と静止画の区別がなくなるくらい。それで、あとから必要なシーン、一番よい瞬間だけを自動で切り出す。また、シャッターを押さなくても全部撮られているのが理想なんです。そのベースとなるのが、フル画素を撮り続けられる超高速連写でしょう。

 それでまず、エンジン開発、センサ開発でやりましょうとなったわけです。エンジン開発をはじめたんですが、タイミング良く、ソニーさんが「超高速CMOS」を開発していて、その使い道がないというのを耳にして、丁度いいなということもあって、商品を作りました。ただ、いきなりコンパクト形状にするのは難しい。エンジンのレスポンスを出すための形状感や熱やバッテリの問題など、さまざまな問題がありました。だったら、アマチュアよりもひとつ上のハイアマチュアやプロカメラマンが臨むような仕様に仕上げようとなり、「EX-F1」が誕生しました。

--初のハイスピードモデルEX-F1の発売から約3年で、2世代目のハイスピードモデルが登場しました。新型エンジンの採用が大きなポイントでしたね。

 EX-F1の画像処理エンジンは、実は自社のものではなく汎用的なものを採用していました。そこで、いろいろなものを犠牲にしていた経緯もあって、「EXILIM エンジンHS」を開発しました。ハイスピードエンジンにより、弊社ラインナップが大きく2つに別れていきます。それが、ハイスピードエンジンを搭載した「ZRシリーズ」とスタンダードな「ZSシリーズ」です。ZRシリーズは、ハイスピードエンジンを搭載したことによる“付加価値”の追求。ZSシリーズはお求めになりやすい価格を目指しています。

 ただ、ZRシリーズの付加価値をどうわかりやすくお客様に説明するのかが課題になっていました。ただ店頭に並べただけでは、見た目ではどこが凄いのかわかりにくい。そんな折り、テレビ番組からのオファーがあり、“ハイスピード”を評価していただきました。

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