デジカメ「EXILIM」10周年の軌跡--それは“カメラ付きテレビ”から始まった(後編)

 昨今、さまざまなデジタルカメラが発売されているが、その歴史を紐解くと1台のカメラへと辿り着く。業務用ではなく、一般向けのデジタルカメラとして1995年3月に発売されたカシオ計算機のQV-10である。

 フィルムカメラ全盛の時代、純粋なカメラメーカーではないカシオ計算機が、如何にして“デジタルカメラ”を生み出したのか。QV-10からヒットシリーズの“EXILIM”へと続くその歴史について、カシオ計算機 執行役員 QV事業部長の中山仁氏に話を聞いた。

 QV-10の開発秘話などを掲載した前編はこちらから

--2002年6月に発売された初のEXILIM「EX-S1」は“カードサイズ”を特徴とするかなりコンパクトなモデルです。「QV」と比べるとその差は歴然ですが、メカニカルな部分での工夫などはあったのでしょうか。特に気になるのが、小型・薄型化されたことでのバッテリの保ちについてです。その点についてお聞かせください。

  • EXILIMの初代機「EX-S1」

 そうですね、ボディを薄くするには、当然バッテリを薄くしなくてはなりません。しかし、普通のカメラと比べれば、ズーム機構がなかったり、ストロボのガイドナンバーが低かったりと、消費電力が抑えられています。また、使い方として、すぐ撮ってすぐ消すというのがこのカメラの特徴でしたので、電源をオンにし続けて使うという時間が、普通のカメラに比べると短かったと思います。レスポンスも早かった(公称値ながら起動時間は約1秒)ので、電池寿命を苦にしない使い方ができたのもポイントです。また、持ち歩くこと、“ウェアラブル”というのがコンセプトでしたので、そのコンセプトに裏打ちされた、“撮りたい時にすぐ撮れる”というのをかなり意識しています。

 弊社社員が試作機をポケットに入れた状態でクルマの助手席にいた時、たまたま興味の惹かれるものがあったそうなんですが、クルマがカーブしていたのにも関わらず、すぐに取り出して撮影できたと。“シャッターチャンスを逃さない”つまりはそういうことなんです。これはレスポンスの遅いカメラでは絶対に撮れない。まさにウェアラブルカメラならではの写真ですということです。

--そのレスポンスの良さを引き出した要因というのはどのようなところにあるのでしょうか。

  • 124万画素、厚さは11.3mm、重さは約85gだった

 ひとつは、LSI(集積回路)の開発です。カスタムLSIを独自の設計で開発していますが、スピードというものをかなり意識しています。それが後の「EXILIMエンジン」へとつながっていくのですが、それがEXILIMの速さの秘訣だと思います。それと、ズームがないといった光学系の割り切りが高速レスポンスを引き出しています。EXILIMのコンセプトを実現するためには、どうしてもレスポンス性能が重要になります。その取捨が重要なのです。

--ここまで話を聞いていると、レスポンスに対する情熱を感じますが、EXILIM「EX-S1」は外部メモリを採用しています。フラッシュメモリに対して外部メモリというのは、記録スピードのボトルネックとなり得ます。それでもあえて大型のフラッシュメモリを採用しなかった理由はあるのでしょうか。

  • 1.6型TFTカラー液晶画素(354×240)を搭載

 EXILIMが発売された時代は、そのほとんどが外部メモリを採用していました。ですから、EXILIMだけが外部メモリを利用できないというのはデメリットでしかない。もちろん、内部メモリを搭載していたので、カードがなくても利用できる、カードを挿すともっと保存できるという状態にしていました。

--EXILIMでは、初代からずっと「SDカード」を採用していますが、何か理由があったのでしょうか。

  • SDカードを採用したEX-S1

 その当時の外部メモリといえば、「コンパクトフラッシュ」や「スマートメディア」などいろいろなものがあり、選択肢は多かったです。EXILIMは、最終的にはSDカードの採用に落ち着きましたが、コンパクトフラッシュ採用カメラを作っていた関係で、EXILIMにもコンパクトフラッシュをという社内的な声もありました。特に、大容量のマイクロドライブを付属して販売した結果、売れたという実績もあり、営業からの反対の声は大きかったですね。そのほかにもSDカードの出始めということで懐疑的な意見もありましたが、EXILIMの薄さにはどうしてもSDカードが必要だということで採用しました。それからずっとSDカードを採用しています。

--記録メディアの形状的な意味を踏まえても、実績のあったコンパクトフラッシュをあえて外す。大きな決断だったと思いますが、SDカードでいけると思った根拠はあるのでしょうか。

 当時、SDカードのシェアはとても低いものでした。そこで、先行して製造・販売していたパナソニックさんに将来の展望などを聞かせていただき、これならばやれると、そう確信しました。消費電力の問題も大きなポイントでしたね。

--2003年3月、薄型を特徴とする“EXILIM”に待望のズームモデル「EX-Z3」が加わりました。全世界での累計出荷台数が約50万台。国内でもロングセラーとなる製品ですが、単焦点からズームモデルへというシフトチェンジにはどのような意図があったのでしょうか。

  • 3倍ズームレンズを搭載した「EX-Z3」

 EXILIMの初代「EX-S1」は、大ヒットとまではいきませんでしたが、ブランドを確立する上ではとても重要な機種でした。ですから、EXILIMというシリーズを作り続けていくうえで、“薄型コンパクト”という形状感を重視していくという案もありました。しかし、EXILIMというブランドをメインストリームで展開・育てていきたいという希望もありました。“メジャーブランドを作りたい”そうなると、当時基本となっていた3倍ズーム、そして当時で一般的だった300万画素という“3倍ズーム・300万画素”を実現しつつ、EXILIMらしさ(薄さ)を兼ね備えた「EXILIM ZOOM」の方がインパクトがある。それで、とにかく3倍ズームで一番薄いレンズを作ろうということで、ペンタックスさんと開発段階から意見交換を行ない、お互いそのレンズを使って製品を開発していました。

 その時開発されたのが“スライディングレンズ”と呼ばれる沈胴式ズームレンズ機構でした。技術的な考え方は以前からあったようですが、それを実現化したわけです。ちなみに、同じレンズを採用したペンタックスさんのモデルは、より小型化を優先し、弊社モデルは多少厚くなっても、あえて液晶サイズの大きいもの(1.6型が主流の市場において2.0型を採用)を優先したという違いがあります。

  • 2.0型TFTモニタを搭載し、当時としては大画面だった

 3倍ズームレンズを搭載したEX-Z3は、発売から9カ月ぐらい、ずっとナンバーワンモデルとして店頭に並んでいました。この機種こそが、EXILIMブランドを多くの人に広めたモデルであり、いまもEXILIMシリーズが続いている一番のポイントなのです。おそらく、“カード型”にだけこだわっていたらEXILIMというのは、本当にニッチなカメラブランドに落ち着いていたことでしょう。EX-Z3の成功でEXILIMの新しい方向性が見えてきた。つまり、ズームレンズと大型液晶が“デジタル”カメラの基本であるということです。

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