Appleの開発者向けイベント「WWDC 2012」が開幕した。CEOがメインスピーカーを務める基調講演からスタートするのが慣例であり、他のリアルな定期開催イベントが廃止された現在では、同社の製品ロードマップを肉声で伝える唯一の場だ。
昨年逝去したSteve Jobs氏の跡を受けCEOに就任したTim Cook氏にとっては、初めて迎える「年に1度の晴れ舞台」になる。
昨年のWWDCでは「OS XとiOSの融合」というテーマが打ち出され、実際2011年7月にリリースされたOS Xの新バージョン(Lion)ではiOSと似たルック&フィールが採用された。1点指示のマウスから多点指示可能なトラックパッドへの本格移行という、スマートフォンと共通の操作性を持たせるための一大改革もMacにはあった。その方向性にブレが生じてないか、カリスマ船長の後任たるCook氏の舵捌きに注目が集まるのは当然だろう。
一方、急拡大したスマートフォン市場の牽引役といえるiPhone、およびコアシステムのiOSに耳目が集まるのも無理はない。特にiPhoneは、携帯電話会社の経営戦略においても重要であり、常に持ち歩くデバイスなだけに社会的影響すらある。Macコミュニティで盛り上がっていた牧歌的なWWDCは遠い過去のこと、いまやWWDCはアプリやアクセサリを含めると巨大な経済規模を持つ「お化けデバイス」のお披露目の場なのだ。
さて、上述した点を踏まえれば、おのずとWWDC 2012の注目点が見えてくる。大きくまとめれば2つ、リリース間隔から推定して新モデル投入の可能性が高かったMacプラットフォームにおける新材料と、ウラの取れないリーク情報が飛び交っていたiPhone/iOSプラットフォームの新材料がどのようなものであるかだ。
Macのハードウェアは、ノート型における旗艦機シリーズ「MacBook Pro」で大きく前進した。Coreプロセッサ第3世代のIvy BridgeとUSB 3.0に対応した点も見逃せないが、「iOSとの融合」という大テーマからすると、やはり白眉は高精細ディスプレイ搭載の「MacBook Pro Retinaディスプレイモデル(15インチ)」ということになるからだ。新MacBook Airでの採用を見送ったこと、液晶パネル単価が低いはずの13インチモデルを投入しなかったことへの疑問は残るが、このタイミングで発表したことの意味は大きい。
というのも、MacではTiger(OS X 10.4)の時期から、開発ツールでは1ピクセルを縦横2倍で描画する「HiDPIモード」がサポートされていたため、いずれOS Xで高精細表示が可能になると見込まれていた。2010年発売のiPhone 4で先を越される形にはなったが、次期OSであるMountain Lionのリリース前に対応デバイスが発売されたという事実からして、今後Macでも高精細/Retinaディスプレイが当たり前になると理解したい。
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