シャープは6月8日、社長奥田隆司氏出席の下、2012年度の経営方針説明会を開催した。経営体質改善に向け、不採算事業である大型液晶事業をシャープ本体から切り離すほか、携帯電話事業においても台湾の鴻海(ホンハイ)グループと提携するなど、新たな施策を話した。
奥田氏は「液晶テレビや携帯電話などコモディティ化したデジタル商品分野は、生産規模で勝負が決まるパワーゲームになった。勝ち組になるのは圧倒的規模が必要。技術だけでは勝てない」と家電業界の現状を話す。
こうした中シャープでは「デジタル商品分野で戦うビジネスモデル」「新オンリーワン商品を創造するビジネスモデル」により、グローバルで戦える「世界企業」を目指すとしている。
デジタル商品分野で戦うビジネスモデル戦略では、現在液晶パネル事業で業務提携を結んでいるホンハイグループと、携帯電話事業においても提携することを発表。中国市場向けスマートフォンで協業するという。
奥田氏は「中国では携帯電話市場の半分以上をスマートフォンが占め、成長している。この市場に対し、共通のプラットフォーム、工場、調達力をいかし競争力ある商品を2013年度から導入する」とした。
一方液晶テレビでは、大型液晶事業をシャープ本体から、シャープディスプレイプロダクト(SDP)に移動することを明らかにした。これによりシャープから大型液晶事業本部はなくなり、約1300人がSDPへと異動する。「大型液晶事業はホンハイとの協業という新たな枠組みでコストダウンし、競争力を高めていく。ただしR&D、生産技術、要素技術などはシャープ本体に残し、4Kテレビや次世代大画面技術の開発は引き続き手がける」(奥田氏)と言う。
SDPでは、第3四半期から開始する予定だったホンハイグループのパネル引き取りを、第2四半期へと前倒しする計画を予定。堺工場の安定操業に向け「90%の稼働を狙っている」(奥田氏)とした。
新オンリーワン商品を創造するビジネスモデルでは「カテゴリーシフトによる『新必需品』の創出」を掲げ取り組む。先日発表したロボット家電「ココロボ」を、コモディティ化された商品が健康・環境商品へとカテゴリーシフトし、さらに進化させることによって新必需品へと変化した例として紹介。「カテゴリーシフトにシャープのオンリーワン技術をいかし、新必需品をスピードを上げて出していく」(奥田氏)と意欲を見せる。
このほか、独自技術「新しい市場を創造」する展開や、酸化物半導体IGZOを採用した液晶パネルを、医療機器や業務機器へと応用させる「IGZO技術の用途の広がり」などを発表した。
奥田氏は「弊社は今年創業100周年を迎える。国産初ラジオやテレビ、電卓などユニークな商品を作る会社として評価されてきた。ユーザー目線の商品を他社に先駆けて出す。これがシャープのDNA。新オンリーワン商品を創出するビジネスモデル、デジタル商品分野で戦うビジネスモデルにより、グローバルで戦える世界企業を目指す」とまとめた。
同社では、健康環境、モバイル液晶、ソーラーなどの重点事業分野の売り上げ構成比を、2011年度の40%から中期的に60%まで高めること、また海外の売り上げ構成比を現在の50%から中期的に70%まで引き上げることを目標に据えている。
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