最先端の放送技術研究開発成果が楽しめるNHKの「技研公開2012」が5月24日、世田谷・砧のNHK放送技術研究所で開幕する。66回目を迎える今回のテーマは「わくわくが、あふれだす」。完全デジタル化後の放送サービス充実に向けた放送・通信連携サービスのほか、超高精細映像「スーパーハイビジョン」(SHV)上映や眼鏡なし立体、将来の放送サービスといった技術など36項目が展示される。
「スーパーハイビジョンシアター」は、従来の試写室から技研講堂に場所を移して実施。上映コンテンツは今回のために制作した短尺ドキュメント「スペースシャトル 最後の打ち上げ」を用意するなど、例年以上にゆったりとした環境で高臨場感映像を堪能できる。
同じくSHV関連では、パナソニックAVCネットワークスと共同開発した「145インチスーパーハイビジョンディスプレイ」(展示番号21)も注目できる。新たなパネル駆動技術開発によって実現した145インチ大画面プラズマディスプレイによるフル解像度映像は、ともすれば液晶に押されがちだったプラズマテレビの復権を予感させる。
元が超高精細映像であるSHVは、トリミングして切り出してもハイビジョン級の画質を得ることができる。そうした操作を直感的に行えるようになるタッチパネルインターフェース(展示番号15、アストロデザインと共同開発)なども開発されており、番組制作や放送サービスの可能性を広げるものとして期待も高い。
1階のエントランスで大々的に展示している放送・通信連携サービス「Hybridcast」のひとつとして紹介されている「マルチビュー」は、SHV切り出しを応用したサービス例。人気アイドルグループAKB48のステージ全景をSHVで撮影、視聴者が任意で選択したAKBメンバーに特化した映像を切り出して届けるという内容だ。
サービスのポイントは「放送本線とは異なる、視聴者個々が求める映像を通信経由で届ける」ことにある(技術的には受信機側で放送・通信番組を同期合成していることがポイント)が、このような要素技術として活用されるほどSHVの研究開発が成熟してきたということだ。
Hybiridcast自体は、テレビとタブレット端末を結びつけた、さまざまなアプリケーション紹介に重点を置いた印象がある。今回の展示においては各家電メーカーが対応試作機の開発に協力していたり、フジテレビやWOWOWなど民間放送事業者がアプリのアイディアを展示していたりと放送業界全体への広がりを感じさせる。特にWOWOWが提案していたタブレット端末をリモコン代わりにしてチャンネル選択などを行えるアプリは、チャンネル数が増えて操作を戸惑わせがちな現時点において即刻導入を考えてほしい仕組みだ。
その他、20年後の実践投入を目指して研究中の眼鏡なし3D(インテグラル立体テレビ、展示番号31)は、昨今の3D映像ブーム沈静化ムードに流されることなく前進を続けている。今年の開発ポイントは、被写体を多数のカメラで撮影することで3次元モデルを生成し、そのモデルから立体映像コンテンツを生成するという技術。画質面など過度の期待は禁物だが、視聴者が左右だけでなく前後、上下どの方向に動いても、その位置に応じた立体像を見ることができるというインテグラル立体完成系の一端を感じさせてくれる。
技研公開は10~17時、27日までの4日間開催される。入場料は無料だ。
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