若い世代にもっとNHKの番組を楽しんでもらうために――。そんなコンセプトの下、NHK放送技術研究所が開発したのが「情報還流システム」だ。これは、一言でいえば「NHK公認実況掲示板サービス」のようなもの。視聴者が番組を見ながら感想をリアルタイムに書き込める場をネット上に用意することで、視聴者には「ツッコミ」を含めた番組へのコメントを通じて参加感と一体感を楽しんでもらう。同時に、リアルタイムに寄せられるコメントを解析して番組制作などにフィードバックさせていくという狙いがある。
開発者であるNHK放送技術研究所(次世代プラットフォーム)の有安香子氏は、特に「ネット世代の接触率向上と意向のフィードバック」を重視したと説明する。これまではNHKから視聴者に一方向に情報が流れるだけであったが、視聴者がリアルタイムに反応を返すことで、「送りっぱなしではない放送」が実現するという。「みんなで同じものを見る楽しさを伝えたい」(有安氏)
今回、技術的に注力したのは「番組への感想コメントの解析手法」「感想の動向を俯瞰する可視化手法」の2点だ。
解析においては、通常の辞書では同義語と扱われないような言葉や、辞書に載っていないような言葉も扱えるようにした。例えば、大河ドラマ「天地人」では歌手の吉川晃司さんが織田信長役として登場しているが、コメントで書き込まれた「吉川」「織田」「モニカ」(※吉川晃司さんのヒット曲)を同一人物として自動判定できる。
また、「キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!」などネット掲示板特有の表記も、盛り上がりの表現と判定する。こうして解析したコメントの感情表現と、NHKが持つ番組のメタデータを紐づけ「誰が出演しているどの場面で盛り上がっているのか」といった細かな番組評価を収集できる。
解析されたデータは時間軸、参加ユーザー数などをもとに、場面の静止画つきでグラフ化され、番組のどの部分でどのように視聴者が盛り上がったかを一覧できるようにした上で制作担当者らにフィードバックされる。このほか、各シーンの静止画とセリフ、ユーザーの反応などを組み合わせて、番組を漫画のように表現することもできる。
可視化されたグラフデータはユーザーにも公開し、放送終了後でも楽しめるようにするとともに、新たな視聴者獲得ツールとして役立てることも視野に入れているという。また、好みに合った番組を推薦することや、似た好みを持つほかの視聴者のブログを紹介してコミュニティ作りをすることも検討している。
「通常、番組に対して寄せられる感想には時間に関する情報がなく、番組全体について面白かった、面白くなかったといった形になることが多い。番組を見ながら感想をつけてもらうことで時間情報を確保しつつ、単に良い/悪いという二者択一におさまらない評価を集めることができるようになる」(有安氏)
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス