Y Combinatorは、シリコンバレーで最も大きな影響力を持つ組織の1つだ。そして、Y Combinatorが先日開催したDemo Dayによって、同社は投資家にとってのディズニーランドのような存在となった。そこでは、新興企業がアトラクションであり、ベンチャーキャピタルとエンジェル投資家は喜んで搭乗料金を支払う。
Y Combinatorは米国時間3月28日、新興企業65社を同社のプログラムから卒業させた。これは、過去最大の規模だ。会場では、Sonalightや99dresses、Ark、Socialcamといった企業の売り込みの文句が飛び交った。急増するユーザー数と売上高を示す数多くのグラフが提示され、投資家は(Y CombinatorのDemo Dayでよくある光景だが)それに夢中で飛びついた。
ただし、今回のDemo Dayは以前のものとは異なる。ここ数年、3つのグループに分けられた投資家は3回に分けてY Combinatorの狭いオフィスに詰め込まれ、企業の売り込みに耳を傾けていた。2012年、Y Combinatorはマウンテンビューにあるコンピュータ歴史博物館で大規模なDemo Dayを開催し、1つの会場に投資家を招待することに決めた。その結果、起業家ならば無理を押してでも会いたいと考えるような、世界的に著名な投資家たちが集まった。
Demo Dayはえさの奪い合いのような状態になり、あちこちで新興企業が資金提供の確約を取り付けていた。筆者は1日を通して、さまざまな投資家が「上限なしの社債」や「割引なし」といったフレーズを口にするのを何度も耳にした。新興企業ならば聞きたいフレーズだ。投資家はY Combinatorを卒業した企業に対して、信じられないほど気前の良い(気前が良すぎるという主張もある)投資条件を喜んで提示している。
筆者は複数の投資家とY Combinatorの創設者に、Y Combinatorを卒業した企業に人気が集まっている理由について尋ねた。その回答の一部を次に紹介する。
2012年のDemo Dayに参加したBlueRun VenturesのJeff Tanenbaum氏は、「Y Combinatorはシリコンバレーで最高のテクノロジチームをいくつか輩出している。われわれは、成長過程の早い段階でこれらの起業家に投資する機会を切望している」と述べた。
「Paul Graham氏は、初期段階の優れたテクノロジ系新興企業および創設者に最も多くのリードジェネレーションをもたらす企業へとY Combinatorを育て上げた」と語るのは、Lil WayneやPitbullといった著名人の投資家の代理人を務めるMatt Schlicht氏だ。「Y Combinatorは膨大な数の企業を分析するので、われわれはY Combinatorが下す投資決定を非常に注意深く観察している」(Schlicht氏)
直近のY Combinatorクラスを卒業したThe Daily Museの共同創設者であるKathryn Minshew氏は、「Y Combinatorの卒業生は素晴らしいネットワークに組み込まれる。われわれがニューヨーク州で最初に資金調達を行っていたとき、The Daily MuseがY Combinatorに受け入れられたといううわさが広まった。すると突然、皆がわれわれのラウンドに参加したがるようになった。ほんの10日前に私に話しかけようともしなかった人々が、急に考えを変えた」と述べた。
Y Combinatorには、Airbnb(評価額10億ドル以上)やDropbox(評価額40億ドル以上)、OMGPOP(Zyngaが2週間前に推定1億8000万ドルで買収)といった企業を卒業させてきた大きな実績がある。その実績は強固になる一方だ。筆者はY CombinatorのDemo Dayに5回行ったことがある。私見では、直近のクラスは著者がこれまでに見てきた中で最も強力だった。
筆者がY Combinatorを投資家のディズニーランドと呼ぶ理由はここにある。ディズニーテーマパークを特徴づけるさまざまな要素について考えてみてほしい。ディズニーランドは、世界の人々が訪れたいと願う場所だ。そこでは、人々は長い列をつくって待ち、割に合わないような金額を支払う。そして何より、人々は待たされ、金を支払ったにも関わらず、最後にはほぼ確実に幸せな気分で去って行く。
同じことがY Combinatorにも当てはまる。投資家たちは衝撃的なほど高い費用を払って競争の激しい投資ラウンドに参加するが、とにかく参加できたことだけで喜ぶ。正気のさたではないようにとれるが、その行動にも合理性があると考える投資家たちは、Y Combinatorを卒業した企業に群がり続ける。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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