UPDATE 米国で人気のあるラジオ番組「This American Life」の制作チームは、Appleと中国における同社の製品生産を題材とする独白劇を放送した2012年1月の番組について、その内容を撤回した。
この独白劇は、俳優のMike Daisey氏が演じたものだ。同氏は、中国の深センにある数カ所の工場を訪れ、その体験を基に自らが主演する一人芝居「The Agony and the Ecstasy of Steve Jobs」の脚本を書いた。訪問した工場の中には、Appleのハードウェアの大半を製造しているFoxconnも含まれていた。
同番組のホスト兼制作責任者のIra Glass氏は、米国時間3月16日付けのブログ記事で、「Daisey氏は、私とThis American LifeのプロデューサーであるBrian Reed氏に対し、放送前の事実確認作業中に虚偽の説明をしていた。もちろん、この番組を放送すべきでなかったという事実について弁解の余地はない。つまり、われわれがミスを犯したということだ」と述べている。
最終的に、制作チームは放送内容を撤回するとともに、16日の夜に新たな番組を放送し、Daisey氏が最初に語った内容と矛盾することが判明した事実について詳しく説明すると約束した。
同番組を制作したChicago Public Mediaの声明によると、「Marketplace」の中国特派員Rob Schmitz氏は番組を聞いて疑問を抱いたという。Schmitz氏は、Daisey氏が芝居のための調査を行っていたときに雇っていた通訳にコンタクトを取り、事実確認作業に乗り出した。
「(Schmitz氏は)Daisey氏が雇った中国人通訳者Li Guifen氏(西洋人と仕事をする際にはCathy Leeと名乗っている)を探し出して話を聞いた。Guifen氏は、Daisey氏が2010年以来芝居の観客に語ってきた内容、およびラジオ番組で語った内容の大半について、事実とは異なると述べた」と制作チームは述べている。
Guifen氏が事実ではないと指摘した中には、化学物質ノルマルヘキサンによる健康被害に苦しんでいる数人の労働者をDaisey氏が取材したとする話がある。この化学物質はディスプレイを磨くために使用されていたが、毒性があることが分かっている。Schmitz氏によれば、その化学物質による健康被害は、実際には中国国内のまったく異なる場所で起こったものであり、さらに重要なのは、Daisey氏が訪れていない場所で起こったことだという。
この番組を配信しているPublic Radio Internationalによると、そのほかにも事実と異なる点として、就業年齢に達していない労働者らに会った話や、Foxconnで「iPad」を製造しているときに負傷したある労働者に取材した話などがあるという。
一方、Daisey氏は自身のブログでこの放送内容について次のように擁護している。
私の作品は間違ってなどいない。私の芝居は演劇的な演出のある作品であり、その目的は、私たちが持っている洗練されたデバイスとそのデバイスが作り出される悲惨な環境との間に、人間的なつながりを生み出すことだ。物語を形作るために、事実、回想、演劇的な創作を組み合わせているが、その取り組みは誠実に行われていると思う。The New York Timesや多くの労働者権利擁護団体による広範な調査によって電子製品を製造している現場の状況が明らかにされれば、間違いなくこのことが証明されるだろう。
ただし、Daisey氏は、自分のやっていることは「ジャーナリズムではない」とし、This American Lifeは「ルールも望まれる成果も異なる」中で作られているのだと付け加えている。
この件に関してAppleにコメントを求めたが、現時点で回答は得られていない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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