クリネックス「“Feel Good”キャンペーン」のストーリー

 企業が生活者とコミュニケーションしていくには、何よりもストーリーが必要です。この場合のストーリーとは、相手の感情を動かすエピソードや仕組みを指します。

 クリネックスによるイスラエルでの「“Feel Good”キャンペーン」は、生活者の心を動かすストーリーがありました。このキャンペーンは、Facebook上で風邪をひいたと語っている人たちを勝手に見つけ、特製の「風邪お見舞いグッズ(もちろん特製のクリネックスティッシュー入り)」の詰め合わせをリアルで送ってプレゼントするというもの。

 実際に送った相手は50人、50セット。50人という規模は、一般的に大企業がおこなうキャンペーンにしたら、圧倒的に少なく感じます。

 しかし、このキャンペーンは最終的には65万以上のインプレッションと1800のインタラクションを得ることができました(インプレッション=ファンになっているユーザーのWebブラウザでその投稿が表示された件数。インタラクション=いいね!やコメントの数)。

 ではなぜ、このキャンペーンは小規模にもかかわらず、このような大きな口コミに発展し、バスを引き起こすことができたのでしょう。それはこのキャンペーンが、人が話題にし、またそれを広げたくなるようなストーリーがあったからです。

 自分に置き換えてみれば、よくわかるでしょう。自分が風邪をひいて、フェイスブックにそれを書きこんだら、企業から「風邪お舞いグッズ」が送られてきたら、誰もがびっくりしますよね。フェイスブックをやっているような人であればほぼ間違いなく、ウォールに写真つきで書き込みたくなるでしょう。

 実際にこのキャンペーンでも、送られてきた50人はその突然のプレゼントにとても興奮して、すぐにフェイスブックの記事にあげました。

 50人中50人全員、つまり100%リアクションがあったのです。また、彼ら彼女らの記事を見た友だちは、いいね!を押し、シェアをして広がっていきました。

 このキャンペーンはとても示唆にとんでいます。バスを起こすには、何も大がかりな仕掛けをしなくても可能だということです。人が驚き、自然に人に伝えたくなるようなストーリーをつくれば、人は勝手に口コミで伝えてくれて、バスを起こすことができるということです。このように、優れたコミュニケーションには必ずストーリーがあります。

 あなたの会社のコミュニケーションには、インタラクティブなストーリーがありますか?

◇ライタープロフィール
川上徹也(かわかみ てつや)
広告代理店勤務を経て、コピーライターとして独立。最近は広告制作に留まらず、ストーリーブランディングの第一人者として、様々な企業のコミュニケーション戦略をサポートしている。新刊『星ヶ岡のチンパンジー~無名の小さなお店が有名な大きなお店に勝つたったひとつの戦略』(ディスカヴァー21)発売中!

この記事はビデオリサーチインタラクティブのコラムからの転載です。

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