数週間前、世界の人口は70億人に達したらしい。世界は混み合ってきたようだ。ただ、世界中の人とやり取りするのは以前よりも簡単になった。ブランド企業や広告主が、人とやり取りすることに関しても同じことがいえる。
いくつかソーシャルメディアに関する数字がある。世界の人口の11%以上にあたる8億ユーザーがFacebookのアクティブユーザーである。平均的なFacebookユーザーは130人の友達がいて、80ページ以上でつながっている。Nielsenによると、平均的なFacebookユーザーは月に7時間45分をソーシャルネットワーキングサイトで費やすそうだ。これは、おおよそ毎週2時間をFacebookで費やすことになり、毎週大河ドラマに1時間費やすよりも多い。ブランド企業が、どちらが高いROIかを考えた場合、30秒のTVコマーシャルか、顧客ベースとやり取りしてエンゲージできるFacebookのようなサイトとどちらになるだろう?
ユーザーは、現在多くの時間をFacebookにかけている。それは楽しくて簡単だからだ。3億5000万人のFacebookユーザーはモバイル機器からのアクセスだ。数分暇な時間があればすぐにアクセスできる。Facebookは写真をアップロードし、友達やブランド企業とコミュニケートし、マイクロブログを書き、コンテンツを消費し、アプリケーションを楽しむための中心的な場所なのである。
Facebookの新しいタイムラインフォーマットは、ユーザーの人生をデジタルでスクラップブックにできる。仕事が変わったこと、家を買ったことから体重が減ったことまで、ライフイベントの変化などを足していける。友人だけに公開してもいいし、パブリックに全公開もできるし、プライバシーの設定をカスタマイズすることもできる。
最近、Googleはソーシャル上でのコメントやリツイートが、自然検索のSEOに考慮されることを発表した。ソーシャルのデジタルマーケットプレイスへの影響を表しているといえるだろう。私の予想では、Google +1はこの先数カ月のうちにより大きな重要度を持ち、ウェブサイトが+1リンクをより採用するようになるだろう。
この情報シェアのオープンさはマーケターの夢でもある。友達の多くが自分のプロフィールを目にすることから、自分をよりよく見せたいと思い編集するだろう。リアルな人、その人の実際のデータ、そして「いいね!」や興味に対してターゲティングできるという点がデジタル広告の新しい流れなのだ。
日本ではmixiがトップのソーシャルサイトである。ご存知の通り、mixiとFacebookでは大きな違いがある。SocialBakers.comによると、Facebookユーザーは520万いる。mixiユーザーベースは2000万以上いて、日本で最も人気のあるソーシャルサイトといわれるゆえんである。mixiでは実名ではなくユーザーネームなどを使ってよいことになっており、mixi上でマーケティングする上では異なるダイナミクスになってくる。Facebookでは実名をベースにした登録情報を活用し、マイクロターゲットできる広告ユニットが増えている。こういったグローバルなソーシャルサイトの脅威が、mixiに同様の動きをもたらすことになるかもしれない。
Facebookは日本における将来についても考えている。Facebookにとって日本は最も浸透率が低い国の一つだ。日本のグローバルな経済状況やインターネット人口は、Facebookのアジア太平洋地域の成長にとって重要だ。日本のFacebookのプロフィールが米国のそれと若干異なっていることからも、その重要性が伺える。Facebookは、楽しく役に立つプロダクトであることを示し、実データをシェアすることは怖くないことを、日本のユーザーベースにアピールしたいと考えている。
Facebookの日本のプロフィールは、血液型をシェアしたり、特別な機能で前職の同僚やボスとつながったり、QRコードで新しい友達を加えたり、友達のプロフィールページにアクセスしたりするなど、日本のフィーチャーフォンのニーズに合うよう、特定の変更が施されている。これらの日本特有の機能から、Facebookの活用は時間と共に増え、他の市場と同じ浸透率になり、日本のマーケターにも機会が訪れる時がくると予想する。
Facebookがマーケターにとって、興味深い分野が3つある。エンゲージメント、インサイト、広告だ。それぞれを見ていこう。
ブランド企業はFacebookページを通じてユーザーとやり取りできる。ブランドについてのニュースを発信したり、キャンペーンを告知したり、問い合わせやインタラクティブカタログでユーザーとエンゲージしたりすることなどである。ファンは、ブランド企業の投稿をニュースフィードに受信でき、友達に見せられる。これによってプロモーションや投稿が、バイラル効果を生む可能性が出てくる。1つの「いいね!」が、同様の興味を持つ可能性のある平均130人の友達へのアクセスを生み出すのだ。
Facebookページをモデレートするのが、ユーザーベースとのインタラクションやエンゲージメントを活性化する、もう一つの方法である。連動したマーケティング投稿戦略、カスタマーサービスリクエストへの対応、ブランドイメージのモニタリングなどは、ソーシャルメディア戦略の成功にすべて欠かせない要素だ。過去数年間でプラットフォームやテクノロジーは進化し、これらの活動をエンタープライズレベルのスケールに引き上げるようになった。機能としては、投稿予約、投稿解析、ウォールに出現するキーワードやフレーズをベースにした自動モデレーション、返信に使える投稿のキューイングなどが含まれる。
日本のブランド企業は、組織に適したソーシャル戦略を模索しているステージである。日本のトップブランドをFacebook上で検索しても、ブランドページに対する努力はまだほとんど見られない。ブランドページがあっても「いいね!」の数も少ない。他の市場で見られるように、Facebookの浸透は早く、成長をベースにしたソーシャル戦略の重要性は、ブランド企業が躍起になってソリューション探すのを後押しすることになるだろう。
アプリケーションはエンゲージメントのもう一つの形であり、ユーザーとブランドとの体験をカスタマイズすることを可能にする。最近のF8ディベロッパーカンファレンスでは、ソーシャルグラフデータを利用したソーシャルアプリケーションをFacebookが推進する光景が見られた。アプリケーション上でのソーシャルなインタラクションは、今後もよりユーザーのニュースフィードで見られるだろう。これにより、ブランド企業はより多くのユーザーに接触し、多くのデータにアクセスできるようになる。「いいね!」以外のボタンの導入で、Listen(聞く)、Buy(買う)、Read(読む)などのアクションが可能になり、データの種類も増える。
Facebookはブランド企業にファンのデータへのアクセスを可能にし、ユーザーベースの「いいね!」や興味について理解できる。多くの価値のあるデータが存在し、市場調査データをクロスで参照し、カスタマーベースについての情報を拡張できる。カスタマーベースについての深い知識は、製品開発、カスタマー維持、マーケティングその他で大いに活用できる。
Facebookのソーシャルグラフを通じて、Facebook広告プラットフォーム上でのマーケティングキャンペーンで、「いいね!」や興味がどのように役立つかを知ることができる。
Facebookの広告プラットフォームは広告主が活用して、「いいね!」を獲得したり、エンゲージメントにつなげたり、Facebook外でのコンバージョン獲得などを促進したりするための豊富な種類のプロダクトを持っている。プレミアム枠はFacebookの広告担当者から購入することができる。Facebookはまた、オークションベースのマーケットプレイス広告を持っている。
マーケットプレイス広告は、オークションベースの入札であることからSEMと似ている一面もあれば、イメージ広告とターゲティングの観点ではディスプレイ広告にも似ている。これら2つのコンビネーションは、広告主にとっては非常に効果的なオプションであると言えるだろう。イメージはインタレストや「いいね!」と合わせることもでき、細かいセグメントへの入札を可能にしている。
こういったターゲティングの方法は、広告主にとって何がうまくいき、何がうまくいっていないかを、1万種類のターゲットの中で理解するのは非常に難しいなどといった、スケールの課題を突き付けている。コンバージョンのモデルを作るのが上乗せされるとさらに複雑になる。エンゲージメントやビヘイビアのデータをアプリケーションやウェブサイトから活用すれば、広告主はコンバートするトラフィックをモデリングして購入できる。正しく行えば、広告主はソーシャルアプリケーションやエンゲージメントのバイラル効果を実際モデルできてしまう。
オンライン旅行会社のExpediaはさらなるユーザーにエンゲージし、ファンベースを構築したいと考えていた。ソーシャルメディアのエキスパート集団である「Context Optional」と組むことで、Expediaは魅力的な旅行の賞があたる懸賞キャンペーン「FriendTrips」を実施した。アプリケーションのバイラル効果をモデリングすることで、正しいソーシャルエンゲージメントを生み出すビヘイビアとコンバージョンにつながる広告に最適化された。Expediaは8.5倍のファンの成長を記録し、6週間で100万人のファンを超えるに至った。また、以前のファンベースよりも30倍もポストアクションが増加した。結果、Expediaはウォールへの投稿におけるブランド擁護・支援が向上した。
ソーシャルエンドースメントはコンバージョン率の向上に役立つことが証明され、友達がブランドを「いいね!」することが、よりクリックにつながりやすいことが分かった。Facebookの「あなたが気に入るかもしれない広告」では友達が「いいね!」をしているブランドが並び、スポンサー記事は広告主がそのようなトラフィックを手に入れる手段である。両方ともFacebook上でページを持っていないことには実施できない。
世界の人口は70億人いて、インターネット人口の多くはソーシャルネットワークでつながっている。「ツイート」、「いいね!」、「+1」などのソーシャルフォーマットがブランド企業とファンやカスタマーをつなぐ。ソーシャルの対話は、実際にブランド企業とファンの間では始まっている。ブランド企業として、このソーシャルな対話を何らかの形で実施していなければ、競合はもうやっていると考えた方がいい。
◇特集:デジタルマーケティングテクノロジーの歴史と近未来
世界のリスティング広告自動化の歴史と現状:第1回
異なるアプローチのリスティング広告自動化:第2回
ディスプレイ広告の進化とクロスチャネルの重要性:第3回
複雑になるデジタルマーケティングにおけるテクノロジーの役割:第5回
【著者】ビル・ラン
エフィシェント・フロンティア(Efficient Frontier)
事業部長兼アジア・パシフィック担当ジェネラルマネージャー
マーケティング業界において15年間、小売りなどの業種のクライアントにおける、データベースマーケティング、オンラインマーケティング・プログラムを企画/実施した豊富な経験を持つ。エフィシェント・フロンティアでは6年在籍。旅行、自動車、金融、テクノロジー、保険などの業界の主要クライアントのデジタルマーケティング戦略・キャンペーン実施をリード。また、エフィシェント・フロンティアのアジア太平洋地域の市場の成長戦略を担当。シカゴ大学(経済学専攻)卒業。問い合わせはsalesinfo@efrontier.comまで。
【翻訳】杉原剛
代表取締役CEO
オーバーチュア、グーグルでの両検索エンジンの広告事業に携わる。現在はアタラ合同会社 代表取締役CEO。Web APIを活用したリスティング広告の自動化/効率化システム開発、リスティング広告体制構築のコンサルティングを行う。また、アトリビューションマネジメント手法によるマーケティング全体最適を提唱しており、欧米の事情にも詳しい。
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