「NOVO 7 Paladin」は中国のIngenic Semiconductorが開発し、Ainolが販売する7インチタブレットだ。いわゆる“中華パッド”と言われる製品だが、これが今までのものとはインパクトが違う。なんと世界初のAndroid 4.0 Ice Cream Sandwich(ICS)搭載タブレットにして、ほぼすべてのAndroid端末が採用するARMプロセッサではなく、MIPSプロセッサ搭載機なのである。
では実際はどれほどの完成度なのだろうか?早速、Novo 7 Paladinの実機レビューをしていくが、Novo 7 Paladinは国内販売が前提ではないため、技適の認証を取得していない。Wi-Fi機能は当然あるものの、使用すれば電波法違反になる。残念ながら完全オフラインでのレビューとなることを前提に読んでいただきたい。
まず、外箱からして少し前の中華パッドとは格が違う。丁寧な印刷の外箱を開けると、高級感のある飾り箱が出てくる。そして中国語ではあるものの、きちんと印刷されたマニュアルと、プラスチック製の検品証のようなものまで入っている(何を検証したのかは不明だが)。ここからもAinolの本気度合いが知れるというものだろう。
また、同梱の付属品はUSBケーブルとイヤホンだけなのだが、同機はUSBバスパワーによる充電にしか対応していないため十分だ。また、過去の中華パッドのように、適当にまとめてぐちゃっと押し込んであるようなことはなく、きれいに収納されている点も好感が持てる。
筐体はプラスチック製で、タッチパネルはアクリル板のようだ。もちろん感圧式タッチパネルではなく静電式である。ボタンや物理インターフェースは上面と左側面にしかない。上面には左から電源ボタン、戻るボタン、メニューボタンが配置されている。「ICS機でありながらハードウェアボタン?」と思われるかもしれないが、これがとても役に立つ。画面サイズが小さいため、アプリケーションによっては全画面表示となり、ソフトウェアボタンが隠れる場合がある。当然ソフトウェアボタンは下からスワイプで表示できるのだが、ハードウェアキーで一発アクセスできるのは非常に使い勝手が良い。
そして左側面には、上から音量ボタン、リセットボタン、mini USBポート、マイク、microSDスロット、イヤホンジャックとなっている。他所のレビューを見ると、筐体を持った時に組み付けが甘くギシギシと鳴るという報告もあるが、筆者が手に入れた個体はそのようなことはなく、とてもしっかりとしている。
さて、ついに電源を入れてみよう。Ainolのブートロゴが表示された後、ICSのロック画面が表示される。ロックを解除してICS純正のホーム画面に触れると、予想に反してタッチパネルの感度もよく、最新のAndroidスマートフォンほどではないにしろ、非常に軽快に動く。ICS独特のアプリドロワー(一覧)でのページ切り替えも非常にスムーズだ。
そしてプリインストールアプリだが、Gameloftから正規のライセンスを受けたスパイダーマンのゲームが入っていた。GameloftとAinolの間でどのようなやり取りがあったのかは不明だが、きちんとライセンスを受け、MIPSに対応したバージョンをプリインストールとは恐れ入る。
次に動画再生を試してみた。手持ちの1080p、30fpsのMP4動画を最高とし、レビュー用に画質やサイズを落としたファイルをいくつか用意したのだが、再生したところ拍子抜けしてしまった。いや、悪い意味ではない。最高画質の1080p、30FPSのMP4メインプロファイルの動画があっさりと再生できてしまい、コマ落ちも皆無だったのだ。著者愛用の「Motorola Xoom」ではコマ落ちどころか再生すらできない動画にもかかわらずだ。さらに驚いたのが、動画形式の対応の素晴らしさだ。MP4はもちろんのこと、AVI、MOV、さらにはMKVにまで対応していた。それぞれのフォーマットで1080pの動画が快適に閲覧できた。
今度はバッテリの持ちを検証してみた。USBバスパワーで充電するため、充電にはそれなりに時間がかかる。寝る前に充電しておき、朝100%になっていることを確認して丸一日業務に使ってみた。
朝の9時に通勤電車に乗り、20分間SDカードに保存した動画を再生し、ミーティング時にはメモを取り、休憩時間にはプリインストールのAngry Birdで遊び、帰宅途中は一時間ほど音楽を再生してみた。帰宅したのは21時過ぎだった。結果は、電池残量45%。当然途中で電源オフなどはしていない。これはなかなかのものではないだろうか。しかし通信を常にオフで使用したため、通信を多用した場合には当然のことながら結果は大きく違ってくることが予想されるのをご了承いただきたい。
最後にアプリの互換性を試してみた。Androidマーケットを使用せず、サイト上にて有志が一般公開しているApkファイルをいくつかSDカードよりインストールしてみた。こればかりは流石に残念な結果と言わざるを得ない。基本的にAndroidアプリはDalvikというバーチャルマシン上で動作するため、CPUのことなどは考えなくてもいいようになっているのだが、少し手の込んだアプリはJNI(Java Native Interface)というプラットフォーム依存のライブラリを使用することが多い。これがMIPSに対応していないのだ。おそらく、Androidマーケットで公開されているアプリの半数近くが利用できないのではないかと思われる。これは今後のMIPS TechnologiesとGoogleの対応に期待するほかない。
総括として、自宅で録画したテレビ番組や動画ファイルを出先で楽しむ用途や、電子書籍の閲覧などの用途をメインと考えて購入するならば、とてもいい買い物になるだろう。さらに言うと、デジタルガジェット愛好家なら、ICS初搭載のタブレットにしてAndroidのMIPS対応を見守ることができ、1万円でお釣りがきてしまうこの端末を買わない理由はないのではないだろうか。
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