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複雑になるデジタルマーケティングにおけるテクノロジーの役割:第5回

ビル・ラン(エフィシェント・フロンティア)2011年12月01日 13時36分
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 デジタルマーケティングは常に変化している。ターゲティングの革新、新しいマーケットプレイスや広告ユニットに加え、インターネット自体の成長が、マーケターが顧客にリーチするための方法として、すべて加味される。

 それに加え、トラッキングやテクノロジーの変化もあり、デジタルマーケティングの将来に対して備えることは難しい業だ。今週で最終回になるが、いくつかのトレンドの中から今後のデジタルマーケティングの方向性に対する私自身の視点を述べ、最新の変化に対して読者の皆さんが備えられるよう、マーケティングに対するアプローチの要点を説明しようと思う。

  • ますます複雑化するデジタルマーケティングのイメージ

 話すべきポイントは多いが、すべてを語ると長くなってしまうので、この要約文が願わくは、日本のデジタルマーケティングにおいてより多くのディスカッションや議論につながることを期待している。

増すばかりの複雑さを認識

 VeriSignの最新の予測によると、2億1500万のウェブサイトがあるとのことだ。それに加えPC、モバイルフォン、タブレット、その他のデジタルデバイスが20億台あるとすると、広告インプレッションの在庫は今後も増え続けるしかないと理解できるだろう。これらのインプレッションの収益化が、多くのウェブコンテンツが無料であることを可能にしている。ウェブサイトの広告を広告主に魅力的なものにするかは、これらのインプレッションがいかに関連性高く、効果があるかによってくる。

 広告商品は、その相対的な価値を高めるために変化し続けている。マーケターは新しい広告商品を、ポテンシャルのある新規顧客および既存顧客にアクセスするための、異なる手段であると認識すべきだ。

 サーチエンジンマーケティング(SEM)におけるGoogleのコンテンツ連動型広告は、クライアントの戦略上、非常に効果的だ。しかし、コンテンツ連動型広告は当初から効果的だったわけではない。初期の頃のテストでは、ROI目標に対してSEM予算の2~5%を占めるだけだった。時間の経過と共に、コンテンツのページと広告の関連性は非常に精度が高まった。クライアントによっては、予算の70%を費やしているところもあるほどだ。

 この広告商品は初期の頃はボリュームを生んでいなかったため、配信を止めることも簡単だった。多くの企業のマーケティング部門では、メディアチャネルごとに担当がいる。SEMはディスプレイ広告と違う形で運用されている。チャネルをまたがってトラッキングし、効果を理解することは、新しい広告商品を試し、マーケティングミックスの中に組み込むことを可能にする。適切な予算配分とアトリビューションは、よりよいパフォーマンスや多くのボリューム増につながっていく。

 新しい広告商品やマーケットプレイスへ興味を持ちテストすることは、業界における変化の最先端で居続けるマーケティングの文化を作ることになる。これを実現するために自分の組織や広告代理店は、適切なテクノロジーの活用が必要となる。

 第1回で述べたように、広告環境の複雑さと成長し続けるネット広告在庫により、パブリッシャーは自身の広告在庫をオークションベースに移そうとしている。また、ブランド企業が一日中顧客とやりとりするソーシャルの対話についてもデジタルマーケティングに加わり、さらに複雑さは増している。市場に出ては無くなるデバイスの種類もこれに追い打ちをかける。数年前までは、ネットブックも人気があったが、今ではタブレットに取って代わっている。現在、凄まじい勢いでモバイルやタブレットが成長している。広告のコンバージョンに関しても、デバイスによってビヘイビアの差が出ていることを目の当たりにしているのだ。

  • タブレットとスマートフォンが台頭

 また、新しいデバイス(Appleから新しいTVが出ることが噂されている)や新しいウェブサイト(Facebookのような)が出てくれば、マーケティング業界全体が別の方向に向かう可能性もあるのだ。この複雑さによって、購入するトラフィックを理解し、評価し、最適化するため、ニーズを満たすためテクノロジーが注目される。

 「マッチタイプ」、「地域ターゲティング」、そして「イメージ広告」が最新のターゲティング手法と言われていたのは、さほど過去のことではない。次には何が出現するのだろう? FacebookのチェックインやFoursquareなどのサービスに見られる「ロケーションベース」の機能は、次なるターゲティングの機能として面白いかもしれない。また、「行動ターゲティング」がより精度を高め、mixiがFacebookに対抗する新しい広告商品を提供するかもしれない。

効果測定の変化と未知の領域

 15年前、私はダイレクトメールのキャンペーンを管理していた。金融機関やクレジット審査会社のデータを使ったものだった。これらのデータは広告主が直接入手した顧客のデータだったので、非常に精度の高いものもあれば、その他は統計をベースにした行動データ(スポーツを楽しむとかコンピュータが好きというレベル)で、推定値の域を越えていなかった。メールが配信されても、顧客が反応するまでコンバージョンがあるかはわからなかった。時によっては、1週間後にしかわからないなど、ほんの少し過去のことなのに、なんと世界は遅かったことだろう!

 デジタルの世界では、すべてがリアルタイムで計測可能だ。インターネットユーザーが特定されるのを防ぐために、プライバシー関連の法律やガイドラインが存在する。しかし、精緻で高度な戦略を立て、適切なマーケティング予算について理解するために、そのようなテクノロジーが存在する。トラッキング、測定、そしてアトリビューションなどが、業界の絶え間ない変化についていくために必要な要素の一部分なのだ。

 デジタルマーケティングにおけるソーシャル的な要素は、顧客のビヘイビアや思いをマーケティングミックスの中に上乗せしている。これは、かならずしもマーケティング予算には関係のない新しい要素だ。ユーザーがどのようにブランド企業とエンゲージし、そのブランドについて語るかは、すべてのマーケティング活動に影響をもたらす。クロスチャネルにおけるソーシャルROIのトラッキングは、マーケターが皆解明しようとしている未知の領域だ。

パフォーマンスに責任を持つ

 最終的には、すべてのデジタルマーケターはパフォーマンスに対する責任を持っている。インターネットで起きたすべてを測定できるが、効率的な活用ができない以上は大きな機会損失をしていることになる。以前のコラムでも説明したように、すべてのテクノロジーは同じではない。テクノロジーやアルゴリズムの潜在的な要素を理解し、どのプラットフォームが最適かを判断することが肝要だ。

 デジタルマーケティングにおいてテクノロジーが大きな役割を担う一方で、誰がそのテクノロジーを活用するかも重要だ。最高のテクノロジーでも、最適でない人と戦略が使えば最高ではない結果になってしまう。逆に、優れたマーケターが平均的なテクノロジーを使うことで、平均以上の結果を得ることもできる。そういう人がより優れたテクノロジーを使えば、驚くような結果を得ることができる。

デジタルマーケティングの今後

 広告商品の「複雑さ」や「測定」、「パフォーマンス」は、デジタルマーケティングにおいて、その解決のためにテクノロジーが組織をサポートできる分野だ。引き続き、デジタルマーケティングはエキサイティングな方向に進化し続けている。

 デジタルマーケティングには、より多くの変数が加味され、自動化やテクノロジーは今後も重要な位置を占めることになるだろう。未来はもうここまできている。デジタル広告はあなたの所在地、何が好きか、どこにいたかまでを考慮し、テクノロジーによってマーケターは次に何が起きるかを予測することもできる。

 今回、デジタルマーケティングについての意見を述べる機会を与えてくれたCNET Japanに感謝したいと思う。今回の連載の話題について対話を続けるため、ぜひFacebookの「いいね!」、「Google+1」またはTwitterで「リツイート」してほしい。この連載を読んでくれた読者、そして直接連絡をしてくれた方々にも感謝したい。ぜひ、今後の見通しなどもEfficient Frontier Japan Facebookページに「いいね!」をした上で書いてほしい。

◇特集:デジタルマーケティングテクノロジーの歴史と近未来
世界のリスティング広告自動化の歴史と現状:第1回
異なるアプローチのリスティング広告自動化:第2回
ディスプレイ広告の進化とクロスチャネルの重要性:第3回
Facebookの台頭と高精度化するデジタルマーケティング:第4回

【著者】ビル・ラン

エフィシェント・フロンティア(Efficient Frontier)

事業部長兼アジア・パシフィック担当ジェネラルマネージャー

マーケティング業界において15年間、小売りなどの業種のクライアントにおける、データベースマーケティング、オンラインマーケティング・プログラムを企画/実施した豊富な経験を持つ。エフィシェント・フロンティアでは6年在籍。旅行、自動車、金融、テクノロジー、保険などの業界の主要クライアントのデジタルマーケティング戦略・キャンペーン実施をリード。また、エフィシェント・フロンティアのアジア太平洋地域の市場の成長戦略を担当。シカゴ大学(経済学専攻)卒業。問い合わせはsalesinfo@efrontier.comまで。

【翻訳】杉原剛

アタラ合同会社

代表取締役CEO

オーバーチュア、グーグルでの両検索エンジンの広告事業に携わる。現在はアタラ合同会社 代表取締役CEO。Web APIを活用したリスティング広告の自動化/効率化システム開発、リスティング広告体制構築のコンサルティングを行う。また、アトリビューションマネジメント手法によるマーケティング全体最適を提唱しており、欧米の事情にも詳しい。

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