2010秋に全米発売された「GoogleTV」(Sony Internet TV)以降、端末レベルで放送、通信を高度に連携させたスマートテレビ化への流れは一気に加速した。
10月4~8日に開催された「CEATEC JAPAN 2011」では、その端緒となったGoogleTVこそ影も形も見えなかったものの、各テレビメーカーオリジナルの放送、通信融合型サービスの方向性が色濃く映し出され、近い将来におけるテレビ視聴スタイルを大きく変化させそうな提案も数多く見られた。
中でも強いインパクトを放っていたのは、地上波6チャンネルを15日間分、丸々HD録画ができるBlu-ray Discレコーダー「REGZAサーバー」を中心とした東芝の提案。実に5テラバイトものHDD容量を誇る録画機「DBR-M190」は、単体としての機能もさることながら、タブレット端末「AT700」と組み合わせたテレビ視聴スタイルを提案し、会場内で抜きん出た印象を持った。
REGZAサーバーで日々大量に録画されたテレビ番組を、DLNA経由でタブレット端末側にムーブし、外出先でも視聴できるようにする。シンプルではあるが、放送受信端末とモバイル通信系端末の組み合わせとしてはベストな使い方だ。もちろん、宅内であればオンエア中の番組をタブレット端末で視聴することも可能。AT700自体の画質、音質性能も高く、小型モニタとして利用する上でも力を発揮できそうだ。
GoogleTVの全米発売元でもあるソニーは、その優れた通信活用性のみを反映させたモデルを自社ブランド「BRAVIA」として2011年3月に発売。賛否両論のあったキーボード型リモコンを廃し、地上、BS、110度CSデジタルすべての放送番組と、「キュリオシティ」などのIPTV系コンテンツ、YouTubeなどの無料動画を検索できる機能は、むしろ「Sony Internet TV」以上の使いやすさと完成度を実現している。
今回は、新たに「ニッセンスマートカタログ」「ポンパレ割引チケット購入サイト」(ポンパレ)、「おでかけガイド」(おでかけ)を公式アプリとして追加。ポンパレ、おでかけはいずれもテレビ画面でチェックした情報をおサイフケータイに転送できるサービスで、周辺モバイル端末とテレビを連携させたサービスも徐々に充実してきているようだ。
タブレット端末やスマートフォンをテレビリモコンとして活用させる提案は各所に見られたが、中でも機能的に優れていたのはシャープ「AQUOS Remote」の音声認識検索。スポーツ、映画などのジャンル検索はもちろん、個別の番組名や出演者名による検索にも対応。実際、展示ブースでは「阪神タイガース」「ゲームセンターCX」などの固有名詞で試してもらったが、それぞれ中継試合予定や関連番組をしっかりひろい出していた。
なお、最新のAQUOSではYouTubeを含むウェブサイトをテレビ画面上に表示できる機能を備えているが、それらを検索するためのツールとしても音声認識の活用が可能。また、録画したコンテンツの検索にも利用できる。
東芝のREGZAサーバでは、コンテンツを検索する際、約2週間分のEPGから目指す番組を探し出さなければならないため、そちらに転用したくなるが、残念ながら「シャープ製品同士での利用しか推奨はできない」(説明員)とのことだった。
クラウド型のテレビ向けインターネットサービス「ビエラ・コネクト」の日本向けサービスを10月4日に開始したのがパナソニックだ。購入するアプリによってテレビをユーザー好みにカスタマイズできるようにしたのは、ある意味最も正統派のスマートテレビ志向といえる。アプリの品揃えも米MLBの生中継・オンデマンドやテレビゲームなど計28種をラインアップ、本格普及に全力を注ぐ構えだ。
ところが、スマートテレビを中心としたホームネットワーク系サービスのポイントの一つであるスマートフォンやタブレット端末との連携になると一気にトーンダウン。自社ブランドのデジタルレコーダー「DIGA」に搭載された「お部屋ジャンプリンク」によってお風呂テレビやキッチンテレビで録画コンテンツを再生できる機能は紹介されていたが、3G回線搭載端末は対象外となっていた。
一見するとスマートフォン風のデジタルメディアプレイヤー「SV-MV100」によるお部屋ジャンプリンク例を展示するなど、モバイル端末にDLNA対応の放送コンテンツ再生機能を搭載する方向性はあるようだが「自社のスマートフォン、タブレットへの対応は未定」(説明員)としていた。通信キャリアを間に挟んだ上での自社ブランド囲い込み戦略にはやや消極的な様子だ。
Google TV登場から1年あまり。YouTubeをはじめとするネット系動画の閲覧機能はほぼ当たり前になり、スマーフォンやタブレットといった周辺モバイル機器との連携も機能が高まってきた。果たして、ユーザーの心を捉えるのはどのメーカーの提案になるのか。そして、テレビを中心とした各社の囲い込み戦略は功を奏すのか。今後の動向が注目される。
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