「Amazon Silk」はモバイルウェブを劇的に向上させる可能性を秘めているが、その「スプリットブラウザ」設計は2つの厄介な問題を引き起こしもする。
現在のところ、Silkは1つのデバイスを念頭に置いて設計されたブラウザである。そのデバイスとは、まもなく発売されるAmazonのタブレット「Kindle Fire」だ。Silkの存在理由は、その7インチの「Android」ベースタブレット上でブラウジングを高速化することだ。
それを可能にするために、Silkは「Amazon Elastic Compute Cloud(EC2)」サービスを構成するサーバ群を利用する。ユーザーがリンクをクリックすると、Silkはその要求をEC2に送る。するとEC2は、タブレットの限定的なハードウェアおよびネットワーク性能に負担をかけないように、すべてのページ要素を取得して処理した後で、そのデータをタブレット自体に転送する。
モバイルブラウジングには、高速化が強く望まれている。そして、Amazonはそれを改善しようとしているという点で、称賛に値する。しかし、残念ながら、筆者はAmazonをウェブブラウジング体験の仲介者にすることに懸念を抱いている。
まず、Silkの設計はウェブアプリケーションの爆発的な成長とうまく調和しないのではないかと筆者は考える。次に、Silkによって、膨大な数のユーザーのウェブ上での行動という貴重な情報をAmazonが手に入れてしまうのではないか、という懸念がある。
ブラウジングは1990年代から基本的に変わっていないというAmazonの主張は、少し的外れだ。ただし、Amazonの「スプリットブラウザ」のように従来型の設計から離れたブラウザは過去にもあった。
Operaは何年も前から「Opera Mini」でそうしたことを行っており、フルブラウザを動かす処理能力を備えていない多くのローエンド携帯電話にブラウジング機能をもたらしてきた。「Opera Mobile」とデスクトップ版Operaでは、「Opera Turbo」機能の使用時にはプロクシ経由のブラウジングも可能だ。この機能では、高負荷な作業の大半を依然としてブラウザに処理させているが、それでも画像の解像度を下げることで負荷軽減に貢献している。
ただ、Amazonはそれをさらに推し進めている。第1に、収集されたSilkユーザーたちの行動に基づいて次に読み込むページを予測できる場合、Silkはウェブページを前もって取得する。第2に、Amazonは必要とされるであろうことが分かっている多くのウェブページのデータを保存している。Amazon Silkのソフトウェア開発担当ディレクターであるJohn Jenkins氏はSilkに関するYouTube動画で、それは「ユーザーが毎日閲覧するウェブページの表示に使用される画像やJavaScript、CSSなどといった一般的なファイルを保存できる、事実上無限のキャッシュ」である、と述べている。
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