長く待たれていたAmazonのタブレットがついにやって来た。少なくとも、11月初旬に消費者に向けて出荷され、ついに登場となる予定だ。
すでに発売されているほかの数多くのタブレットと同様、米国時間9月28日朝のイベントで発表された7インチの「Kindle Fire」がAppleの「iPad」を視野に入れているのは間違いない。Kindle Fireによって、ユーザーはタッチベースのアプリケーションをブラウズしたり、購入したりできる。Kindle Fireはまた、Amazonのウェブストアを含む、あらゆるAmazonのサービスを活用している。Amazonはさらに、ほとんどのタブレットよりも安い199ドルという価格で購入者を集めようとしている。
しかしAmazonは、自社の差別化や、潜在的にAppleに先んじることを目指している分野では、Appleと同じ戦略を1つ2つ取っている。つまりAmazonは、Appleを打ち負かすためにAppleになろうとしている。
この新しいタブレットは、仮にほかのプラットフォームにAmazonのアプリケーションをすべて追加すれば、それで手に入るようなものをすべてパッケージしたものだ。例えば「Android」では、Amazonストアのアプリケーションや同社の音楽プレーヤー、ほかのAmazonサービスを利用したアプリケーションなどをダウンロードできる。Kindle Fireには、初めて電源を入れた時点ですでにそういったものがすべて用意されている。
しかし、Amazonは独自のアプリケーションストアや「Amazon Silk」と呼ばれるウェブブラウザを追加することで、特別なユーザー体験を作り出すことにも取り組んでいる。このウェブブラウザは、AmazonがAppleなどのライバルとの差別化を図ることができる重要な分野の1つだ。Amazon Silkは「Amazon Elastic Compute Cloud」(EC2)テクノロジを使い、ユーザーがページを訪問する前にコンテンツの一部をあらかじめロードすることで、タブレットユーザーによるブラウジングを高速化する。これに対して、Appleの「Safari」は、インターネット上のサイトにブラウザ自体が直接接続する従来型のブラウザデザインを採用している。
だが、Amazon SilkはAmazonが取り組むより大きなウェブ戦略の一部にすぎない。購入者がデジタル製品の購入に慣れていけるように、Amazonは同社のクラウドサービスを活用し、タブレットユーザーが自分のコンテンツをAmazonのサーバ上に無料で保存できるようにしている。
この数カ月間、Appleは「iCloud」サービスの一環として、ある種同一のサービスの提供を開始しており、ユーザーがAppleから購入したデジタルコンテンツを再ダウンロードしたり、デバイス間でコンテンツを同期したりできるようにしている。一方、Amazonは「Whispersync」テクノロジを使って、その戦略に対抗しようとしている。Whispersyncでは、ダウンロードしたコンテンツやブックマーク、ハイライト部分、そして書籍やビデオのどの場所まで見たかといった情報を同期できる。
AmazonがAppleの戦略を見習ってきたもう1つの分野がメディアであり、Amazonはさまざまなストア経由でメディアをユーザーに提供するために、メディア企業との交渉を行ってきた。例えば先々週、Amazonは20th Century Foxとの間で、同社のプログラムをAmazonのストリーミング動画サービスに取り入れるための契約を締結したところだ。Kindle Fireのユーザーは、買ったその日にこのサービスを使うことができる。利用できるメディアを合計すると、1700万曲の音楽、100万冊の書籍、10万本の映画とテレビ番組になる。Kindle Fireは、Amazon自身が雑誌をフルカラーで提供する最初のデバイスでもある。
しかし、Amazonが引き続き違っている点は、Amazonがほかのプラットフォームにおける自社の存在をどう取り扱うかということだ。Appleのソフトウェアを手に入れるには、Apple製品を買う必要があるが(AppleのウェブブラウザであるSafariは除く)、Amazonは引き続き、そのソフトウェアと体験を、Kindle Fire以外のAndroid搭載タブレットを含むほかのプラットフォーム上で提供していく。Kindle Fireは、そうした体験をAmazon自体のものとして提供する、同社初の取り組みだ。Kindle Fireのリリース後に見守るべきことは、AmazonがAppleの戦略をさらに見習って、ほかの企業にはできない体験の構築を始めるかどうかだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」