Facebookは音楽サービスを開始しようとしている。ただしこれは、米国時間9月22日に開催される同社のデベロッパーカンファレンス「F8」でテクノロジ系メディアが期待する発表内容を、極めて単純化した説明だ。このイベントで発表される可能性が非常に高いのは、Om Malik氏のレポートにあるように、Facebookが音楽配信企業、具体的にはSpotifyを支援して、自社のソーシャルネットワーク内で徐々に展開させるという新たな取り組みだ。
なぜなら、それが現在のFacebookのやり方だからだ。Facebookは人々が向かう目的地ではない。消費者にとっては目的地であろうが、テクノロジの世界にいる人々すべてにとってはプラットフォームなのである。2007年に開催された初のF8において同社はそう言い始め、それ以来、この姿勢を強めている。同社のプラットフォーム化の動きは、テクノロジ業界における最も抜け目ない事業転換の1つだ。Facebookはまずユーザーを誘い込み、そのページビューに対して広告料を徴収した。そしてのちに、広告インプレッションの販売ではなく、ユーザーのネットワーク自体を他社に販売することが可能であると考え出した。
これこそFacebookが決して独自のゲームサービスを推進せず、Zyngaが大きく成長した理由だ。FacebookはZyngaがゲーム作りのノウハウを持っていることを理解していたのだ。そして、ソーシャルゲームの世界で脚光を浴びたのがZyngaでなかったとしても、また別の企業がその座についていたことだろう。その一方でFacebookは、Zyngaが活用可能なネットワーク作りを行った。Facebookが潤えば、Zyngaも潤う。そしてZyngaが潤えば、Facebookはその貸しを回収するのだ。
これは見事な戦略であり、Facebookがプラットフォーム企業でなければ、きっと自社ブランドのサービスを投入していたことだろうほかの分野でも展開されている。
一例を挙げよう。Facebookは求人ネットワークとして「LinkedIn」と対抗することも可能であるのに、なぜそうしないのか。それは、Facebookは新たな専門的サービスを生みだす企業ではなく、そうした役割を他社に任せる企業だからだ。プロフェッショナルネットワーキングを例に取ると、Facebookをベースとした急成長中のサービス「BranchOut」がある。このサービスでは履歴書や推薦文の作成、そして求人検索が可能で、最高経営責任者(CEO)であるRick Marini氏によれば、「ウォールストリート(金融業界)ではなく、メインストリート(実体経済)を対象としたもの」だという。
ソーシャルネットワークサービスを手掛けるFacebookは、プロフェッショナルネットワーキングに最適と思われる。BranchOutのサービス領域やユーザー、売り上げ計画に対するFacebookの干渉について心配しているか、著者はMarini氏に尋ねてみた。すると同氏は、それらの点を懸念するどころか、BranchOutはFacebookと「特別な関係にある」と語った。Facebookをベンチャーキャピタル企業のAccelに紹介したKevin Efrusy氏は、BranchOutの取締役でもある。Facebookは自社のプラットフォーム利用を他社に推奨しつつ、特別なパートナーの育成も行っているのだ。
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