アクセンチュアが会津にかける復興のビジョンと真意--グリッドが鍵 - (page 2)

別井貴志 (編集部)2011年08月18日 18時59分
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--もう少し、現在3者で進めている具体的な取り組みを教えてください。

 お話ししたいことはたくさんあるのですが、正直言ってまだ話せないことの方が多いです。まず会津大と組んだのは、ITの専門大学だということがあります。あとシリコンバレーをずっと目指してきているので、そういう意味では一緒に研究できる課題がたくさんあります。教授たちが研究している課題と、我々がこれまで世界で実績をあげてきたソリューションとを組み合わせていけるでしょう。

 基礎自治体といわれる市町村が、いま各地で復興プランを作成中です。3者で協定を結んだのでこの策定を進めています。スケジュールとしては、8月末ぐらいまでにプランをまとめ上げて、9月に県に提出し、県がいろいろな地域の特性などを調整した後、国に提出するのが9月末ぐらいだと思います。そして、これがすべて第3次補正予算につながっていくでしょう。

--復興プラン策定のポイントは?

 まず地元の人の話をすっごく大切にすることは全員で共有しています。そのうえで現状把握も重要視していますが、逆に地元の人が気付かないこともたくさんあるので、我々の考えを押しつけるつもりはまったくありませんが、「こういう方向に向かった方がいいでしょう」という会話はすごく時間をかけて丁寧にしています。一気に提案書を作って「これでどうですか?」というやり方は、今回のケースではまったく向かないことを相当意識しています。

 標準プランはもうあるんですが、それがお仕着せにならないように心がけているのです。現地の言葉に書き換えたり、地域によって事情が違いますから、その地域に馴染んだプランの修正と、その理解を求めるという段階です。そのため、現実にいまやるべき話と、未来的な話の両面に取り組んでいます。やるんだったら、成長戦略にまでつなげて、これが実現すれば東京よりもはるかに進みますという話もあったほうが希望が広がります。

--プランや取り組みの中で、ITをどのように活用するのでしょう。

アクセンチュアというよりも、すでに政府の政策などにも入りましたが、311以降は「スマートグリッド」が一番必要な国になったことは誰もが認識していると思います。この分野は経験があるので、かなりお手伝いできるでしょう。それと、我々は「東京への一極集中を分散しなければいけない」と、以前から提唱してきたのですが、まったく進みませんでした。

 たとえば、データセンターの72%が首都圏にあること自体がかなり異常な国になっていると思います。いま与党や野党に提案しているのは、プレート別にデータセンターを分散して配置させることや、会津若松市はまさしくそうなんですが、自然エネルギーだけを使ったデータセンターを設立することなどです。会津若松市には火力はありませんが、水力、風力、地熱、バイオマス(2012年4月に稼働予定)と、自然エネルギーがそろっています。つまり、東京一極集中の分散とエネルギーマネジメント、クラウドの組み合わせでしょうね。今後「グリッド」は、キーワードになると思います。

--処理やリスクを分散するという意味のグリッドですね。

 そうです。インターネットというのはもともとグリッドの構造でしょう。だからどこかのネットワークが切れても、バイパスがあってつながります。震災でもインターネットはつながっていたという実証もあるし。しかし、基幹線はすべて使えなくなりました。通信の基幹線といったIT関連だけではなく、電線や道路、線路なども含めてです。いわゆるスター型になっているものはだめでした。社会インフラはグリッド化するべきだということです。

 例を挙げれば、磐越道は震災の時に一番活躍した高速道路だったのです。ガソリンが不足する問題などがありましたが、東北道が使えなかったので、物資を運ぶ際に日本海側の高速道路できて、そこから磐越道に入って来たんです。日本海側と太平洋側に一気に津波は来ません。津波が来た場合にどちらか片側が被災するので、たとえばサプライチェーンを構築するならば、日本の中心にある山間部や盆地といったところに整備すれば東西にも動けるので、リスクを分散できるのではないか、といったイメージ、考え方です。

--3者の取り組みの中に、産業振興と雇用の創出も掲げられていましたが。

 これまで申し上げたように、いろいろな誘致とそれに伴う雇用が考えられるでしょう。雇用という意味では、2種類の人材育成を考えています。会津大学と一緒にできるのはITの専門家を育てるということです。もう1つは、避難されている方々に向けてです。いきなりITといってもなかなかうまくいきませんので、展開は今後詰めていきます。アクセンチュアのビジネスの柱の1つであるアウトソーシングビジネスをどう展開すればいいかということもあるでしょうし、パートナー企業の誘致もあるでしょう。3者の取り組みを発表して以来、いろいろな企業から相当な数の相談を受けてまして、みなさん東北に何か貢献したいという気持ちを持っています。

 それから、コンピュータシステムが流されてしまったということは、紙もしくは口頭でデータを入力し直さなければなりません。こうした入力業務や、スキャニング業務なども想定できますよね。これ以外にも、震災以前から話題のある医療分野のIT化も注目できます。電子カルテへの入力業務など、震災には直接関係ない分野でもたくさん業務が生まれる可能性があるということです。我々が政府に提言しているのは、こうした業務をトレーニングを含めて震災で職を失ってしまった方々に紹介したらどうかということです。こうした取り組みでも、会津若松がひとつの拠点になれればいいと思います。

 我々は5年間の投資の中で「やれることをやります」と決めています。国の予算が付くかどうかということを、いまは考えてません。もちろん予算を獲得して、この地域のために使うというのは絶対必要なことですが、基本的には予算をあてにしてプランを作っているわけではないのです。

--今回の取り組みを進める上で、何か問題はありますか。

 困っていることは何もないんです。地域の方々には本当によくしていただいています。イノベーションセンターと名づけましたが、会津若松に仕事を生み出さなければ絶対に復興なんてあり得ないでしょう。会社から見れば、ここは支社となるのでしょうが、東京が中心としてあって、その対として福島イノベーションセンターがある、といった意識はまったくないのです。東京の仕事をこちらでシェアするのでは、何の意味もありません。東京の景気が悪くなれば一気に地方も悪くなる、常に対の関係にあるのでは、地域分散や地方分権、自律など、まったく考えられません。とにかく、東京を頂点としたピラミッド的な関係を改善したいんです。

 もう1つ付け加えると、もちろん東北や福島の復興が最優先課題ではありますが、我々はグローバルカンパニーであるという視点から、アジアの中で日本がハブとしての役割を続けられるかどうか、ということをすごく重要なテーマにしています。今回の震災では、グローバルケーブル(海底通信ケーブル)の一部に損傷が見られたようですね。何本か残ってやっと通話ができた状態。これも一極集中の問題で、千葉県に陸揚げされているケーブルの分散は必要ではないでしょうか。基幹系が切れてしまえば、グリッドも何も意味がなくなってしまうので、基幹が複数ないとだめなんです。アジアの中で、こうした次世代ネットワークの部分で取り残されるわけにはいきません。

 復興に伴う活動で社会インフラのグリッド化をきちんと完成させて、それをモデルにして世界に出るなど、とにかく復興を日本の成長戦略やアジアにおける成長展開などに、かならずつなげるという思いを強く持っています。

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