会津若松市と会津大学、アクセンチュアは7月26日、会津若松市、ひいては福島県全体の復興に向けて産業振興と雇用創出の取り組みに共同で着手すると発表した。これに伴い、アクセンチュアは福島県会津若松市に「福島イノベーションセンター」を8月1日に開設し、ここを拠点に県、市、大学をはじめ、地元企業、有識者の意見も踏まえ産業振興や雇用創出策の検討を開始する。
アクセンチュアは、経営コンサルティングやテクノロジーサービス、アウトソーシングサービスを提供する企業で、全世界に200拠点、22万5000人の従業員を要するグローバル企業。日本においては1962年に業務を開始し、現在4500人以上の従業員がいる。会津若松市長の菅家一郎氏は「アクセンチュアには、復興ビジョンや具体的な施策を進める中でマネジメントや世界的なノウハウを活かして貢献してほしいと期待している」と述べた。
菅家市長は「東日本大震災や原子力発電所事故の影響によって、会津若松市には発電所の地元である大熊町をはじめ被災された多くの方々が避難(4000~5000人)している。一方、会津若松市においては放射線数値は低いものの風評被害によって深刻な経済損失を被っている。今後は、避難住民を含めて地域住民が将来に向けて安心して暮らしていくためには、何より地域産業を振興し、中長期的な雇用の確保、創出を図ることが重要な課題になっている」と説明。そのために、会津若松市の安全性をより多くの人に理解してもらい、第一次産業はもとより、IT、自然エネルギー、医療、観光など会津地域の情報を発信すると共に、会津の資源を産業として活用できる方々に集まってもらうことが不可欠だと考えている。
そして、菅家市長は会津大学に対しては「これまでも産学連携の取り組みとして地域の産業振興に尽力してもらっているが、今回の取り組みでは技術協力や人材の育成において支援、協力をしてもらう」とした。
その公立大学法人会津大学の理事長である角山茂章氏は「会津大学は教員の半数が外国人というグローバルな大学。会津から世界へというモットーで教育している」と説明した上で、「ITとこれからの社会のニーズを融合した研究、開発活動をアクセンチュアと一緒に進められるのは福島県にとって非常にいい機会を得た。昔から“会津IT城下町”というキーワードを使ってきたが、なんとか今回のチャンスを使って福島県の雇用を創出していきたい」と抱負を述べた。
角山氏によると、会津若松市は日本最大級の地熱発電所があり、水力発電は100年の歴史を有し、水力発電、風力発電、太陽光発電も設備があるので、スマートグリッドを現実的に考えるのに適切な場所だとしている。さらに、こうした自然エネルギーを考える場合、ローカルな気象も大切な要因だが、会津大はアジア太平洋経済協力会議(APEC)傘下の機関として設立されたAPEC気候センターとも連携して活動を進めているため、“ITとエネルギー”という点において最適なロケーションというわけだ。そして、ソフトウェアの開発や技術者などの人材育成の要望は強く、実際に力を入れており、会津大の周囲では25社のベンチャー企業が先端技術の開発に取り組んでいるそうだ。
こうした中、会津若松市に拠点を設けるアクセンチュアの代表取締役社長である程近智氏は、「東日本大震災以降、何ができるかと復興プロジェクトを立ち上げていろいろな検討をしてきたが、一番大事なのは現場、その地域と一緒になって何か作っていくことと考えた。またその中でも地域の雇用創出につながる産業振興が重要だと感じた。IT領域でのイノベーションセンターを日本のどこかに作ろうという議論は震災前からあったが、復興プロジェクトを検討していく議論や、個人的にもいろいろなご縁があって、この会津に拠点を設立することを決めた」と語った。
会津若松市に拠点を設立する他の理由としては、以下を挙げて、「アクセンチュアはITをいかに経営や世界をよくするために使うかという部分がコアビジネス。具体的な施策は今後検討していくが、自然エネルギーをうまく活用するエネルギーマネジメントの仕組みを作っていくことや、ITをいかに医療に使っていくかなどを考えている」(程氏)。
アクセンチュアの拠点「福島イノベーションセンター」は、当初5名の人員を配置する。取り組むこととしては、(1)会津若松市や会津大学が実現しようとしている復興ビジョンや計画にアドバイスする、(2)その計画の実現性を高くするために世界の知見を活用する、(3)世界的なアクセンチュアの拠点や数万社の顧客とも連携してネットワークを活用するの3つを挙げている。
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