Microsoftと米司法省の2002年の合意は米国時間5月12日に終了したが、あれからテクノロジ業界がどれだけ変わったかを振り返るのは簡単だ。ウェブ検索は非常に採算性の高いビジネスになっている。スマートフォンとタブレットの市場は急成長し、これからのコンピューティングの方法についての考えを大きく変えた。そしてソーシャルネットワークが登場し、コンピュータユーザーの関心の対象を変えた。
しかし1つ変わらないのは、パーソナルコンピュータ市場におけるMicrosoftの支配力だ。市場調査会社IDCによれば、MicrosoftのOS「Windows」は2002年に、デスクトップPCおよびノートPC向けのOS市場の93.9%を占めていたという。現在ではどうだろうか。Microsoftのシェアは91.1%だ。
この同意判決の終了は極めて重要だ。よく覚えていない人もいるかもしれないが、同意判決が署名された当時、業界に対するMicrosoftの支配は揺るぎないものに思えた。そして同意判決が、多少の規制監督を行うものの、Microsoftのビジネスの構造改革は求めないという腰の引けたものだったことに、競合企業の間で大きな驚きが広がった。
その原因は主に、新興のデジタル市場に独占禁止法を適用したいと考えたClinton政権が起こした訴訟が、Bush政権まで長引いたことだ。Bush政権は政府介入を強めることへの関心が薄かった。
「Bush氏が大統領選挙に勝った時点で、この訴訟の流れは変わった」と言うのは、アイオワ大学法学部の教授で、独占禁止法を専門とするHerbert Hovenkamp氏だ。
競合企業は当時、この訴訟には、Windowsの優位を利用して新規市場へ参入しようとするMicrosoftを止める効果がほとんどないことに不満を抱いていた。その同意判決は軽い処罰にすぎないと見られており、コンピュータメーカーに対して、Microsoftの競合企業のソフトウェアをPCに搭載するという新たな自由を与えるとともに、メーカーがMicrosoft以外のテクノロジを選んだ際に、Microsoftが報復することを禁じた。また、競合企業がWindowsでスムーズに動くプログラムを開発できるよう、Microsoftに対してWindowsに関するさらなる情報公開を求めた。
Microsoftは、もはや10年前のような支配者的存在ではないものの、それがこの同意判決の功績だとするのは間違いだろう。「最終的にたどり着いたこの合意が、大きな変化をもたらしたとは思わない」(Hovenkamp氏)
その変化を起こしたのは市場の力であって、規制の力ではない。テクノロジの潮流は変化しており、GoogleやApple、Facebookなどの企業が監視期間中にマインドシェアと市場シェアを獲得した。
ブラウザの例を見てみよう。Microsoftが反競争的行為によってNetscapeの「Netscape Navigator」を排除しようとしたのが、訴訟の原因である。同意判決に署名した当時、Microsoftはブラウザ市場を完全に支配していたため、「Internet Explorer」以外のブラウザでウェブサーフィンをすることなど想像できなかった。Internet Explorerは市場の95%を占めていた。
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