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解説:NECとレノボのPC事業合弁が互いに「魅力的」な理由

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 1月21日、NECとレノボ・グループ(レノボ)がパソコン事業での合弁を進めていると、一部の報道機関が報じた。NECおよびレノボ・ジャパンともに「決定した事実はない」との公式コメントを発表しているが、関係者の間からは「完全に否定できるものではない」という声も聞かれており、この方向に向けた調整が進んでいるのは事実のようだ。

 報道では、NECの100%子会社でPC事業を担当するNECパーソナルプロダクツをベースに、レノボが50%以上を出資し、日本国内で事業を展開することになるとしている。合弁後も、NECブランドのPCは国内市場向けに継続的に販売されることになる。

 今回の件は、当のNECおよびNECパーソナルプロダクツの社員にとっても「寝耳に水」だったようだ。NECの拠点がある三田、大崎、武蔵小杉では、この記事を掲載した当日の日本経済新聞が駅売店やコンビニなどで一斉に売り切れたという話もある。NECの場合、社員に事情が説明されるのは、正式に公表されることが決定してからというのが慣例。そのため、報道された21日には、社員への事情説明は行われていない。

収益性で「限界」を迎えつつあるNECのPC事業

 NECのPC事業は、国内首位とはいうものの、2010年度の年間出荷規模は260万台。世界最大となるヒューレット・パッカード(HP)が、約6400万台であることと比較しても、20倍以上の差がある。

 PCのビジネスモデルは規模がものをいう。なかには、出荷台数が60万台規模に留まっていても、モバイルノートPCに特化することで黒字化を維持しているパナソニックの例もあるが、NECの場合は、国内トップシェアという位置づけから、幅広い製品ラインアップが求められており、パナソニックと同様の戦略はとりづらい。むしろ、20分の1の規模であっても、HPと同等の品ぞろえが必要になるともいえる。

 一方、同じフルラインアップを展開する富士通は、海外事業の拡大に強く踏み出しており、現在、2010年度計画では580万台の年間出荷規模を、海外における事業拡大をベースに、今後数年で年間1000万台に引き上げる中期計画を立案している。同様に東芝は2010年度計画で2000万台以上、ソニーは880万台の年間出荷を計画しており、ここ数年、積極的な拡大路線を継続しているところだ。

 それに対してNECは、長年にわたり、PC出荷が横ばいの状況が続いている。

 2003年度は270万台、2004年度は273万台、2005年度は290万台、2006年度は272万台、2007年度は267万台、2008年度250万台、2009年度273万台というのがここ7年の出荷実績。そして、2010年度は260万台と前年割れの見込みだ。

 2010年だけでも世界市場は前年比12%以上の成長が見込まれているのに対して、NECのマイナス成長は、フルラインアップ路線を維持する上で前提となる「規模の確保」で後れをとり、収益性では限界を迎えつつあることの証ともいえる。「赤字と黒字の間を行き来する状況が続き、年間でなんとか黒字を維持しているところ」(関係者)というのが実態だったようだ。

 レノボとの合弁は、NECにとって、フルラインアップ戦略を維持するとともに、タブレットPCなどの新たな領域に踏み出すための地盤づくりを可能にする一手となり得る。

日本でのシェア拡大が急務のレノボ

 一方、レノボにとっても、日本市場でのシェア拡大が急務となっているだけに、NECとの合弁にはメリットがある。

 現在、レノボ・ジャパンは、日本市場において、5四半期連続で最も大きな成長を遂げているPCメーカーとなっている。だが、その日本での実績も世界と比べてしまうと遅れが目立つ。全世界市場では、2010年4〜6月の実績で初めて10%のシェア獲得。年間を通じても、2けたのシェア獲得に王手をかけているところだ。それに対して、日本国内の市場シェアは5%程度に留まっており、これをいかに高めていくかが課題となっているのだ。

 NECとの合弁によって、2年前からレノボが打ち出したパートナーを通じた間接販売への一本化による体制が強化されるほか、これまで課題となっていた官公庁系ビジネスや、地方都市への販売拡大も、NECのリソースを活用することで解決できることになる。

 さらに、日本国内には、2005年のIBMからのPC事業買収により、ThinkPadの開発拠点となっている大和研究所を持ち、日本におけるモノづくりを生かす土壌がある。その大和研究所は、2010年12月に、横浜のみなとみらいへと移転して体制を強化したところだ。もし合弁が実現すれば、ThinkPadの開発ノウハウと、NECが持つ山形県米沢市の米沢事業場のLaVieの開発ノウハウとがどう融合されるかも気になるところだ。

 あくまでも思考実験だが、こうしてみるとNECとレノボの合弁には、両社それぞれにとって十分なメリットがあることが分かる。正式発表には至っていないものの、水面下ではさまざまな形で調整が進んでいると考えて間違いなさそうだ。

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