2010年の新興株式市場は2009年と同様に、面白みのない1年になってしまった。10月12日にジャスダックとヘラクレスの市場統合という歴史的なイベントがあったが、ベンチャー企業の新規株式公開(IPO)は低迷。目立ったニュースと言えば6月にはマザーズ市場の中核銘柄だったグリーが東証1部市場へ昇格したことだろうか。
サイバーエージェントやミクシィなどインターネットサービス企業が多く上場するマザーズ市場のマザーズ指数は2010年前半に、2009年末から続く上昇相場に乗ったが、10月以降に暴落。2009年11月に付けた安値を更新してしまった。東京市場全般が為替市場の急激な円高を受けて下落しており、新興市場もリスク許容度低下の影響を受けた。ただ、その影響が一巡した11月中盤以降は反騰基調入り。先行して上昇基調入りした東証1部市場と比較した出遅れ是正から始まり、値動きの良さを好む資金が流入した。2011年に向けて期待が持てる終わり方となりそうだ。
ジャスダックでは10月から人気株を集めた新指数「JASDAQ-TOP20」の算出を開始した。その結果、算入銘柄に急騰が続出した。同指数にはオンラインショッピングモール運営の楽天やケーブルテレビ統括会社のジュピターテレコムなど新興市場の重鎮銘柄も算入されているが、12月には上場投信(ETF)なども組成され、比較的時価総額が小さく買い付けインパクトが大きいオンラインゲームのガンホー・オンライン・エンターテイメントや通信ソフト開発のユビキタス、データセンター運営のビットアイルなどの株価が急上昇。注目を集めた。
マザーズ市場では6月にグリーが卒業した後、主役不在の展開が懸念されたが、衣料品Eコマースサイト運営のスタートトゥデイが躍進。時価総額で「アメーバブログ」などのサイバーエージェントを上回り、新興市場を代表する銘柄に成長した。このほか、2010年の新興市場では米セールスフォースと提携して話題となったシナジーマーケティングを中核とするクラウドコンピューティング関連株、シャープやソニーから相次いで専用端末が発売されたことで注目が集まった電子書籍関連株などが人気を集めた。
スマートフォン関連は新興市場以外でも関連銘柄探しが活発化するなど、株式市場の物色テーマとして根付いた。また、グリーとディー・エヌ・エー(DeNA)の急拡大に連動する格好でソーシャルアプリ開発企業にも急騰株が相次いだ。ただ、公正取引委員会がDeNAへに立ち入り検査をするなど、企業体制への疑念も強まってしまっている。各社には業績成長率だけでなく、上場企業としての経営の在り方などでも株式市場を認めさせる必要が出ている。
IPOマーケットに目を移せば、第一生命保険と大塚ホールディングスという歴史的な超大型案件があった。銘柄数は2009年同様少なかったが、東京市場全般に与えた影響は非常に大きかった。ただ、ITベンチャー企業だけに限れば、6月にモバイルコンテンツのボルテージと電子書籍販売サイト運営のパピレス、12月にコミュニティサイト向け投稿監視サービスのイー・ガーディアンが上場した程度。クックパッドのIPOが株式市場全般の話題となった2009年に比べると小粒で、話題性も乏しかった。
2011年についても、IPOの案件数増加は期待できない状況にある。景気と株式市場全般の停滞、また会計制度変更の影響もあって未上場ベンチャー企業の上場意欲は後退気味という。新規上場銘柄数は2010年の22社に対して、小幅増にとどまる30〜40社程度と予測される。一方で2010年にグリーが東証1部市場に卒業したように、2011年はマザーズ市場時価総額トップのスタートトゥデイなどに上位市場への昇格が期待される。新規上場銘柄が増えない中で有力企業が卒業すれば、新興市場の空洞化がさらに進んでしまう。経営陣主導の株式公開買い付け(MBO)などによる株式未公開化も増えており、投資妙味のわくベンチャー企業が新興市場に少なくなっていることもある。
2011年に有望視される相場テーマは、グルーポンの大活躍でネット総合大手の参入が相次いでいるクーポン共同購入サービスや、いよいよサービスが始まるLTE関連などが期待されそう。国産メーカーによる新機種投入競争が激化してきたスマートフォンでは、特にAndroid関連のコンテンツプロバイダーなどの存在感がより強まっていきそうだ。
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