12月8日、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「モバゲータウン」を運営するディー・エヌ・エー(DeNA)本社に対して公正取引委員会が立ち入り検査をしました。DeNAがSNS向けアプリケーション開発会社に対して、グリーが運営するSNS「GREE」へのアプリ提供をやめるようにとの圧力をかけた疑いがあるためです。
具体的には、モバゲータウン事業に関してDeNAと契約したり、契約を検討している複数のSNS向けアプリ開発会社に対し、グリーとの契約を結ばないよう働きかけたり、自社と契約するよう強要した模様。
DeNAとグリーはともに携帯電話向けSNSを運営しており、ライバル関係にあります。そのため、DeNAはグリーに対して優位性を保つために、SNS向けアプリ開発会社に対して圧力をかけることにより、開発会社の囲い込みとそれによる自社コンテンツの充実を図ったとみられています。
では、具体的には独占禁止法のどのような点と問題になっているのでしょうか。
DeNAが取引先業者の販売先を制限した行為は、独占禁止法で禁止されている「拘束条件付き取引」にあたる可能性があるとされています。そもそも拘束条件付き取引とは、相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもって取引すること、をいうとされています(独占禁止法2条9項6号、一般指定13項)。拘束条件付き取引として公取委が介入した事例として、SCE(ソニー・コンピューター・エンターテインメント)が小売店から小売店へゲームソフトを販売する横流し禁止などを取引契約の条件とした事例があります。この事例では、公取委よりSCEに対して排除措置命令が下されました。
拘束条件付取引の内容としては今回のような取引の相手方の拘束があります。このような行為が禁止されているのは、取引の相手方を拘束することが、公正かつ自由な競争を促進して国民経済を発展させる、という資本主義の本質に反しているからです。
DeNAは立ち入り検査があったことを認めたうえで、「現在、調査中で詳細を把握できていないため、コメントは差し控える」としています。今後の対応についても「特に決まっていることはない」と述べるにとどめています。
矢野経済研究所によると、2009年度の国内SNS向けアプリ市場規模は前年度比7.5倍の338億円に拡大。2010年度は747億円程度で、2011年度には1000億円を突破する見通しとなっています。独占禁止法が適用されれば公取委からDeNAに対して警告・注意などが行われたり、場合によっては排除措置命令が下される可能性があることから、SNS業界に少なからず影響を及ぼすとみられています(同法20条1項)。今後の動向が注目されます。
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