KDDIと米Microfinance International(MFIC)は12月13日、グローバル送金・決済プラットフォーム事業を共同で進めていくことに合意したと発表した。KDDIは12月8日にMFICの第三者割当増資を引き受け、MFICの優先株22.9%相当(20%の議決権の特約付き)を2205万ドルで取得。KDDIはMFICの筆頭株主になる。
提携のサービス第1弾として、KDDIのグループ会社であり、仮想移動体通信事業者(MVNO)である米Locus Telecommunicationsが米国で移民向けプリペイド送金サービスを2011年1月から提供する。このサービスは、米国で初めてのものになるという。
Locusのプリペイド送金サービスの仕組みは以下の通りだ。ユーザーはMFICの直営店や提携事業者店舗などで登録し、Locusから送金用プリペイドカードを購入する。その後でユーザーはLocusのコールセンターに電話をかけて、個人認証を行い、オペレーターに送金先と送金額を指示する。Locusのコールセンターでは、登録済みのユーザーと送金先情報を照合、コンプライアンスチェックをした上で、送金手続きを行う。MFICの提携金融機関は、Locusからの送金手続きを受けて、ユーザーから指定された口座に送金する。この際の資金移動はほぼリアルタイムで、1分以内に送金されるという。
プリペイドカードは最大200ドルで手数料は4〜5ドルを想定。これは「競争力のある価格設定」とKDDIの石川雄三氏(取締役執行役員常務)は説明する。今後2年間「中南米で実績を積み、その後でアジアでの展開を想定している」(石川氏)という。MFICの提携先は世界90カ国、窓口と携帯電話で合計8万カ所に送金できるという。遠くの送金窓口まで出かけなくても、カード購入と電話だけで送金できることがメリットという。
提携の第1弾となるサービスは、主に米国内に住む中南米からの移民がターゲットだ。MFICの社長兼最高経営責任者(CEO)の枋迫篤昌(とちさこ・あつまさ)氏は、「米国内のヒスパニックの出稼ぎ移民は約4000万人、そのほかの移民が約3000万人」と説明。「米州開発銀行(IDB)の調査では、米国内からの出稼ぎ送金は2008年で430億ドル、2009年で530億ドルになる」(枋迫氏)という。2008年のリーマンショックで米景気が低迷する中でも、出稼ぎ送金は減っていないことになる。これは「出稼ぎ移民からの送金は本国に住む家族のためということもあり、送金が減るということはないため」(枋迫氏)としている。
Locusのサービスには、MFICが提供する資金決済ソリューション「ARIAS」をベースにしており、KDDIとMFICの提携は、KDDIの通信技術とMFICのARIASを組み合わせて、「日本発の“オープン・モバイルペイメント・プラットフォーム”を世界に展開する」(枋迫氏)ことが大きな目的だ。
現在の一般的な送金・決済の仕組みは大きく分けて2通りある。1つは銀行ネットワークを経由するものであり、もう1つはWestern UnionやMoneyGramなどの窓口送金事業者のネットワークを経由するものだ。
銀行の方は、国際的な資金決済用メッセージシステムである「SWIFT」を活用している。これは、銀行口座を持っている人から銀行口座を持っている人への決済だ。国際間で資金を移動させられるが、銀行のみのネットワークに限られる。もう一方の窓口送金事業者は、銀行口座を持たない人から銀行口座を持たない人への資金移動であり、送金事業者のネットワークの中でしか資金は移動できない。
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