KDDIは2月9日、100%子会社であるKDDI Americaが、米国で移民向けに携帯電話事業を展開しているLocus TelecommunicationsおよびTotal Call Internationalに出資すると発表した。それぞれに51%を出資し、経営権を握る。
LocusとTotal Callはいずれも、携帯電話事業者からネットワークを借りてサービスを提供しているMVNO。Locusは西海岸を中心に展開しており、グァテマラ人やフィリピン人などを顧客に持つ。2009年の売上規模は約1億2000万ドル(邦貨換算で約107億円)。Total Callは東海岸が中心で、メキシコ人や韓国人を顧客に持つ。2009年の売上規模は約2億1300万ドル(同約191億円)。
KDDI Americaはそれぞれの51%にあたる発行済み株式を、合わせて約4100万ドル (約37億円) で取得し、連結子会社化する。同社は2007年から現地の日本人向けに携帯電話サービスを提供しており、3社合わせた契約数は30万件。「移民向けに特化した事業者としては最大手」(KDDI執行役員 ソリューション事業本部長の石川雄三氏)になるという。2013年までには契約数を100万件まで伸ばし、米国の携帯電話市場でトップ10入りする方針だ。
米国ではKDDI Americaの子会社であるKDDI Globalが、米国の通信事業者と世界各国の通信事業者をつなぐ中継サービス(ホールセール)を展開している。KDDIによると世界の約8割の国に対して直接つながるネットワークを持っているといい、日本、米国、欧州をつなぐ上で最も安い経路を自動的に判別する技術も持っているとのこと。これらを生かして、高品質、低価格な携帯電話サービスを提供していくという。また、30万加入という規模を生かして通信事業者と交渉し、アクセスチャージを現状より下げることで、通話料金を抑える考えだ。
米国には移民とその家族が約4000万人居住しており、年間100万人以上が増え続ける成長市場とのこと。その多くは収入が少ないためプリペイド携帯電話を利用しているという。「インターネット電話のSkypeは双方がPCを持っていないと使えないため、移民の多くは携帯電話を使っている。米国の電話市場は移民が支えているといっても過言ではない状況だ」(石川氏)。今回資本参入するLocusとTotal Callもプリペイドサービスを提供している。KDDIではプリペイド携帯電話に、各国の言語や文化に合わせたコンテンツの配信やモバイル送金といったサービスを組み合わせるほか、独自端末を提供して差別化と収益拡大を図る。
KDDIは2009年11月、バングラデシュのNGO系ISPであるBRAC BC Mail Networks(bracNet)に約8億円出資し、50%の株式を取得するなど、BOP(ボトムオブピラミッド)と呼ばれる貧困層向けビジネスに乗り出している。今回の米国移民向け携帯電話サービスも、今後高い成長が見込こまれているBOPビジネスの一環となる。
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