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ブラウザベンダーが勢ぞろいでHTML5について本音をぶつけ合った日

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 ウェブ標準化という大きな流れの中で、「HTML5」というキーワードはバズワード化するほどに浸透してきた。しかし、その仕様自体はまだ策定中であるため、ブラウザベンダーの思惑でHTML5の実装が進んでいるのが現状だ。各ブラウザベンダーが今後どう足並みをそろえていくつもりなのかが気になるところだ。

 11月2日にヤフーと技術評論社が開催した「ブラウザカンファレンス2010」では、Mozilla Japan、Opera Software、マイクロソフト、グーグルの各担当者たちが語る「ブラウザベンダーーに聞くHTML5対応の本音と未来」と題したパネルディスカッションが開かれた。参加者はピクセルグリッドの外村和仁氏、Mozilla Japanの加藤誠氏、Opera SoftwareのDaniel Davis氏、マイクロソフトの春日井良隆氏、グーグルの北村英志氏、ヤフーの継岩直充氏。モデレーターは「WEB+DB PRESS」編集長の稲尾尚徳氏。

  • 左から稲尾氏、外村氏、加藤氏、Davis氏、春日井氏、北村氏、継岩氏

各ブラウザベンダーの実装のスタンスの違いと特色

 ブラウザの実装をどう進めているかについて聞かれると、Mozillaの加藤氏は「ユーザーの声が優先」とし、WiiやTVなどを含めたさまざまなハードウェア企業がクライアントとなっているOperaのDavis氏は「コンシューマーユーザーと企業クライアントのバランスを見ながらだが、どちらかというと企業クライアントの声が強い」と述べた。

 マイクロソフトの春日井氏は「W3Cの定める仕様に従う。例えば、WebSocketはW3Cから外れているのでIE9では実装しない」、グーグルの北村氏は「デベロッパーのニーズ、パフォーマンスや機能がどれだけよくなるのか、HTML5策定のコミュニティでコンセンサスが得られているかどうか、という3つの基準で考えている」と、各社それぞれのスタンスや特色を見せた。

 HTML5のどこに注力しているかについては、グーグルは「APIを優先している。ウェブアプリとして変わっていく中で、可能性をどう引き出せるか」。Operaは「実装に掛る時間を優先している。機能によって実装時間は相当変わる。対応デバイスが多いのでそこも考慮される」。Mozillaは「自分たちが提案したものが優先。CSSやCalc、CssFontなど、ベンダーとして仕様をリードしているものがはじめに入る」。

 これら3者に対してマイクロソフトは「IEはインフラになってしまっている現状があり、どうしても保守的にならざるを得ない。変えると困るユーザーも出てくる」と、若干引き気味の発言にとどまった。IE6については「発言しにくい。速やかにIE9に移行していただきたい」と述べた。

拡張機能の標準化について

 「ブラウザの拡張機能を、ブラウザ間で統一する方向性はあるのか」という質問に対して、Operaは「W3C Widgetsに基づいた拡張を仕様としたい。統一するのは開発者にとって良いと思う。重要な仕様は、1つのベンダーが独占しないといった姿勢が大切ではないか」と乗り気の様子。Mozillaは「仕様ついては必要だが、それ以上はベンダーに任されるべきではないか。拡張のライブラリ化が進んでいくと考えられるので、仕様を決めるというよりも、次第に統一されていくのではないか」と慎重な姿勢だ。

 マイクロソフトは「最初からデフォルトで付いていたほうが良い拡張もあると思う」と語った後に、「IE8以降はF12キーでFireBugに似た操作が可能だ。IE9では開発ツールがさらに強化されているので、ぜひ試して欲しい」と開発者ツールをここで強くアピールした。

 グーグルは「確かに他社の拡張と似ているところもあって、拡張を作る手順などは統一されていたほうが良いと思うが、実際にそうなっていないのは何か事情があるからではないか。検討していきたい」としており、各社それぞれ拡張機能の標準化に関してはこれからの検討というところだ。

  • エンジニアの立場で質問を投げかけた外村氏が用意した各ブラウザのHTML5対応状況を示す表(Web SQL DatabaseはHTML5に入るか未定)

コーデックに対する姿勢

 ビデオやオーディオコーデックに関しては、Mozillaは「W3Cの規格に入るためには、ロイヤリティフリーであることが重要である。そこが少し難しい。個人的にはWebMでも良い」とした。Operaも「ロイヤリティフリーの重要性については同様に考える。WebMは良いが、今後のウェブのトラフィック全体を考えるとビデオコーデックほど重要なものはない。オープンにする必要がある」と語った。

 マイクロソフトは汎用性が最も高いという理由で「H.264」を採用している。「WebMに関してOSを含めてユーザーが望むならサポートする」という。グーグルは「WebMを推進していく。単純にロイヤルティフリーとして提供していくというだけではなく、ハードウェアやソフトウェア関連にアプローチして積極的に最適化するように対応をお願いしている」とした。今後、コーデックへの足並みがどうそろっていくのだろうか。

「みんなが協力してどうするのか考えること」が重要

 最後のテーマである、HTML5の仕様への関わり方について、各ブラウザベンダーが現状を説明した。「新しい提案をする際にも、いきなりChromeに実装するのではなく、まずは標準化団体に提案するといった手順を踏んでいる。W3Cの標準化にグーグルのメンバーもかなりいるので協力している」(グーグル)、「W3Cのワーキンググループに40人、参加社員400人、専門家として280人など積極的に参加している」(マイクロソフト)、「HTML5やAPIに関して、ブラウザベンダーだけではなく、ハードウェアベンダーとの協力が重要だと考えている」(Opera)。

 一通り模範解答が出そろった後にMozillaの加藤氏が本音をぶつけた。「毒を吐かせてもらうと、グーグルさんは、“これが早いかどうか”とスピードの話ばかりする。マイクロソフトさんは人数が多いので、手動で確認するといった提案もできるが、少人数でやっている私たちでは無理。Mozillaがどう関わってきたか、真面目な話しをすると、仕様を書いた本人がコードを書いている」。

 会社の規模や内情、それぞれのブラウザが持つ機能や特徴、シェア、そして開発者の思いやユーザーの特色など、さまざまな事情が交差したパネルディスカッションだったが、途中、Mozillaの加藤氏が「過去のブラウザ戦争では、ほかのブラウザを落とすようなことをしていたが、現在はそれぞれのブラウザベンダーが協力して、何ができるかを考えるようになってきている。大事なのは、自分たちが何をするかだと思っている。そしてこれから、みんなが協力してどうするのか考えることだと思う」という言葉が印象的だった。

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