今回、米著作権局の決定によって、Appleの法的な武器は単銃身の散弾銃、つまり使用許諾契約だけになった。
しかしこれは、Appleがその気になれば、理論上そうした法的要求を主張できるということだ。現実には、Appleがジェイルブレイク行為やジェイルブレイク用ソフトウェアの配布を理由に誰かを訴えたことは一度もない。ジェイルブレイクが登場してから数年が経過したが、Appleは違反者を訴えると脅しをかけたことさえない。
言い換えるとこういうことだ。もしAppleが、自分のiPhoneを楽しそうにジェイルブレイクしている何十万人ものユーザーや、理論上違法な活動を煽っている活発な開発者コミュニティーを訴えるつもりがないのなら、同社の法的な武器が何なのかは重要な問題でない。
われわれは電子フロンティア財団(EFF)の弁護士であるJennifer Granick氏に話を聞いた。EFFはサンフランシスコに拠点を置く公民権擁護団体で、今回、米著作権局に働きかけて、ジェイルブレイクを著作権法の適用外にすることに成功した。
Granick氏は次のように話した。「Appleはジェイルブレイクをしたユーザーを訴えたことは一度もないものの、ジェイルブレイク行為はDMCA違反だと主張している。そのため、法的な懸念は存在する。仮にAppleの主張が正しいとすれば、同社はiPhoneのジェイルブレイクを止めさせる、言い換えると差し止め命令を勝ち取ることができた。しかし、今回の決定によってそれができなくなった。たとえジェイルブレイクが契約法に違反するとしても、Appleは訴訟を提起する必要があり、同社が得られる金額は非常に少額になるだろう。このことによって、Appleが訴訟を起こす動機、あるいは将来的に訴訟を起こそうという動機は著しく弱まる。そして、差し止め命令という手段は排除される。つまり、今後3年間(編集部注:米著作権局ではDMCAを3年ごとに見直している)、ユーザーが自分の携帯電話をジェイルブレイクするのを法律によって防ぐことはできなくなる」
さらに、懲罰的損害賠償金の可能性も排除された。
われわれの古くからの友人であるLeander Kahney氏は米国時間7月26日、Appleから以下の簡潔な発言を引き出した。「Appleは、顧客がiPhoneで素晴らしい体験を得られるようにすることを常に目指している。そして、ジェイルブレイクによって、その体験の質が著しく低下することを知っている。以前にも述べたように、大半のユーザーは自分のiPhoneをジェイルブレイクしない。なぜなら、ジェイルブレイクはiPhoneの保証契約に違反する可能性があるほか、iPhoneが不安定になり、安心して使えなくなる可能性もあるからだ」
Appleは以前、米著作権局に対し、同社がEFFの要請に反対であることを伝えていた。その理由の1つは、App Storeのプロセスは消費者を保護するためのものであり、iPhoneユーザーはソフトウェアの使用許諾を受けているだけで所有しているわけではないため、公正使用という根拠でジェイルブレイクが認められるべきではない、というものだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果